都内でも随一の緑の多さで、高齢者が住みやすい環境
東京23区の中でも高台に位置し、住宅地として古くから開発されてきたのが杉並区。
大きな公園や河川敷があるわけではありませんが、実に区内の2割以上が緑に覆われていると言われています。
一方、住宅地の面積は23区中一番大きく、アパートやマンションより一戸建ての方が多くなっていますが、宅戸数がそれほど多くないことから、大きな庭があるような一戸建てが立ち並ぶ、閑静な住宅街という言葉がよく似合う地域と言えます。
そんな杉並区の老人ホームは、入居一時金が900万円以上というのも一般的で、月額利用料に関しても江戸川区や江東区など、東京東部の区に比べると1万円以上は高くなるところが多いようです。
その一方で、杉並区には「みどりの里」という区営の高齢者住宅があります。
これは、高齢者が生活しやすいような設備が整い、入居者の相談を受けたり安否確認をしたりする生活協力員が配置されているなど、さまざまな配慮がなされた住宅。詳細を知りたい方は、ケアマネージャーや市町村窓口に問い合わせてみるいと良いでしょう。
また杉並区では、独自の高齢者向けサービスも充実しています。
区が実施する健康増進活動などに高齢者が参加するとポイントシールが配られ、区内の共通商品券と交換できる「長寿応援ポイント」は好評です。
また、急な病気やケガなどで家事のサポートが必要な高齢者にヘルパーを派遣する「高齢者いっときお助けサービス」なども重宝していると人気の様子。
このように、さまざまなサービスが展開されており、上手に利用して充実した老後を送っていくことができる杉並区は今、要注目です!
杉並区では高齢化がゆっくりと進行している
2010年以降、杉並区では高齢化がゆっくりと進んでいる状況です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
いわゆる団塊の世代に属する高齢者は杉並区にもたくさん居住しており、この世代が後期高齢者である75歳以上への到達は目前。区内の後期高齢者の割合は、さらに高くなっていくことは間違いなさそうです。
杉並区の高齢化は急激ではありませんが、要介護や要支援の認定を受けている高齢者は、2023年時点で2万5,952人を超えています。
単身で生活する高齢者の人数も1万9,000人以上、認知症と診断された高齢者の人数も1万1,000人を超え、手厚い支援を必要とする高齢者の人口は、決して少数とは言えません。
また、杉並区内では、39歳以下の世代が年々減少の一途をたどっており、生産年齢人口や年少者が減ることで、将来の介護政策にも少なからぬ影響が出ることは否定できません。
いずれにしても、区内の介護サービスを充実させるための多面的な対策は急務。もちろん区内では、その事実に気づいている有識者が多く、すでに活発な議論が行われています。
2023年に要介護・要支援認定を受けた高齢者は2万人を上回る
杉並区内では、2024年に要介護や要支援の認定を受けた高齢者の人数が2万人を上回り、その大部分が、居宅サービスを利用しています。
区内の居宅サービスを受けた高齢者の人数は、2013年から1万4,000人を超えていますが、一方で施設サービスの利用者は2,000~3,000人程度にとどまっています。
医療機関や民生委員から情報を受けて要介護者の様子を正確に把握
杉並区は、2015年に指定介護予防サービス事業者に対して、詳細な調査を実施しました。
その結果をもとに、2016年度から本格的な介護予防サービスに着手し、短期集中予防サービスに関しても取り組んでいます。
すでに数々の政策が実行に移されていますが、その中で特に地域包括支援センターの貢献度が高いのが、「介護予防ケアマネジメント」のサービス。
利用者は、地域包括支援センターの仲介の下で、自身の症状に合った介護予防計画を入手できます。
また杉並区は、各地域のリハビリ事業関係者が参加する「介護予防ケアマネジメント支援会議」を開催。会議で話し合われた内容は、すぐにその後の介護予防ケアマネジメントに反映されます。
また、介護を欲する在宅の高齢者の実態を確認するための「介護予防把握事業」は一般介護予防事業の主なもののひとつ。
この事業の特色は、医療機関や民生委員からも情報提供を受けて要介護者の様子を正確に探ることです。
まさに”区民全体”で取り組む必要がある介護予防を進めるため、杉並区では「介護予防普及啓発事業」が進行中。すでに高齢者対象の健康講座や認知症予防教室などが実行されています。
そして、介護予防に協力するボランティアを区内で増やすために行われているのは「地域介護予防活動支援事業」。高齢者との交流や、高齢者の地域社会への参加の促進もこの事業の目的です。
介護予防サービスの改善には常に活動内容の見直しが必要ですが、そのために設けられたのが「一般介護予防事業評価事業」では、サービスの実施内容や当初の目標の達成状況などを確認します。
高齢者が専門医に相談しやすい体制を構築中
杉並区の地域包括ケアシステムでは、高齢者の相談窓口となっている地域包括支援センターに地域包括ケア推進員を配置することで、地域のネットワークを活発にしています。
また、自宅に住み続けることを希望する要介護者のために、民間の介護事業者を積極的に援助することや、公有地の活用に尽力することも重要視されています。
認知症への対処も、杉並区の地域包括ケアシステムの大きな柱のひとつ。
認知症の専門医に相談しやすい体制をつくることや、認知症初期集中支援チーム・認知症地域支援推進員を設置することが現在の主な活動内容です。
自宅での生活を続けられなくなった要介護者に関しては、特別養護老人ホーム・グループホームなどに速やかに移転できるような体制を設けることで対処していきます。
杉並区の福祉サービス運営適正化委員会とは?
杉並区には現在、地域包括支援センターが20ヵ所以上設置されており、そのすべてで介護サービスに関する苦情を受け付けています。
本人が相談に行けない場合は家族が代わることもでき、区役所の介護保険課や民生委員への相談も可能です。そのほか、「まちかど介護相談薬局」に行って申し立てても構いません。
このように区内には、介護関係の苦情を聞き取る窓口がたくさんあります。
実際に相談を持ち込んだ区民は以前から多く、2015年度の報告によると、年間の相談件数は144件に到達。相談内容で目立つのは、受けている介護サービスの内容に関するものでした。
それぞれの窓口では、聞き取った相談内容を漏れなく介護保険課に報告します。
現在は、介護保険課の中に事業者係という部門が設けられ、この部門が、相談者に変わって介護事業者に報告を要求したり、必要に応じて改善の要請や助言を行ったりします。
相談内容によっては、杉並区内だけでは解決できないこともありますが、そのような場合は、東京都国民健康保険団体連合会と協力して解決を目指します。
そのほか介護保険課では、すべての苦情を苦情の内容を分析して問題の再発を防ぐために審議を行っている介護保険運営協議会に報告。協議会はときおり、介護事業者を対象とした集団指導などを実施してトラブルの防止を目指しています。