大病院が多く、高齢者にとっては大きな安心
1960年代までは一面が農村地帯だった板橋区ですが、高度成長期を機に大規模な工場開発が行われ、急激な発展を遂げました。
そうした工場に勤める人の住まいとして住宅地も整備されたことで、常盤台や成増をはじめとする住宅街は非常に閑静な趣となっています。
そんな板橋区の老人ホームは、費用面や設備・サービス面に関してさまざまなタイプが用意されています。
入居一時金が数十万~1,000万円超、月額利用料が11万円台~30万円台、利用料に応じて設備の豪華さや医療ケアなどのサービス面もさまざまで、ニーズに合わせて選ぶことができます。
板橋区内では、JR、都営地下鉄、東京メトロ、東武鉄道など多くの電車が通っている他、国際興業バスや東武・西武バスも乗り入れを行なっているなど、交通の便は非常に良好。
もちろん、列車やバスのバリアフリー化も進んでおり、高齢者にとって住みやすい環境が整いつつあります。
また、板橋区内には病院が非常に多いのも特徴。これは、日本大学と帝京大学という2つの大学の附属病院がある他、旧都立の豊島病院、東京都健康長寿医療センターなど大病院が多いためで、病床数は1万床にも上ると言われています。
板橋区は言わば、23区内一の医療先進地。医療施設と提携している老人ホームも数多くあるため、医療面に不安のある高齢者にとっては、安心して住める区ということになるでしょう。
板橋区の高齢化率は23.2%と低い傾向にある
板橋区の人口は2023年度において56万8,241人、そのうち高齢者(65歳以上)数は、13万1,702人。高齢化率は23.2%となっています。
同時期の全国の高齢化率は29.1%、東京都全体の高齢化率は22.7%ですから、全国平均よりはかなり低く、東京都のほぼ平均値と同じくらいという状況です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
区内の高齢者人口は年々増加しており、2010年からの13年間で2万人近く増加。
高齢者のうち、56.1%は後期高齢者(75歳以上)です。
後期高齢者は要介護状態になる人が一気に増加する世代であり、団塊世代全員が後期高齢者世代となる2025年が日本の高齢者福祉行政の山場になると言われています。
板橋区では、現状こそ前期高齢者の方が割合として多いですが、2025年になるとその割合が逆転。
全高齢者のうち、前期高齢者の割合が42.4%になるのに対して、後期高齢者の割合は57.6%になると見込まれています。
人口数で見ても、前期高齢者が約5万5,000人になるのに対して後期高齢者は約7万5,000人になると試算されており、後期高齢者世代が2万人ほど多いという状況になるようです。
全国平均に比べると板橋区の高齢化率は今後も低く推移すると見込まれているものの、介護が必要となる後期高齢者世代の割合がどんどん増加していくことを考えると、今後の高齢者福祉や介護サービスに期待を寄せていきたいところです。
在宅介護サービスの利用者は2万人にまで増えている
介護サービスの利用者数は2010年から続けて右肩上がりで、2024年時点では2万2,916人となっています。
なお、その内訳を確認すると、居宅サービスが1万7,106人で7割以上を占めており、次いで施設サービスが3,030人(13.2%)、地域密着型サービスが2,780人(12.1%)となっています。
「シニアの元気力向上作戦」として介護予防を展開
板橋区では介護保険法の改正(2015年)を受けて、2016年4月からそれまでの介護予防事業を再編した「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」が開始されています。
介護予防事業の目標である「健康長寿100歳」を達成するべく、区では「シニアの元気力向上作戦」と題して、さまざまな介護予防事業が展開されつつあります。
- 高齢者の介護予防を地域で支えるボランティアを育てる「介護予防サポーター講座の実施」
- 区内に5ヵ所ある「いこいの家」に介護予防スペースを設置し、介護予防や健康増進を目的とする高齢者の自主活動団体に無料での開放
- 「シニアの筋力アップコース」や「介護予防講座」、「元気なシニアの栄養講座」そして「口腔ケア講習会」など、健康づくりなどを応援する教室の開催
- 板橋区のオリジナル介護予防体操である「元気おとせん!体操」の普及(区のホームページで体操の方法を示したリーフレットをダウンロードできます)
- 板橋区が定めた「元気力チェック」の後、「元気力」の低下がみられた方を対象に行われる「元気力向上教室」
元気力のチェックは区のホームページで行うことが可能。
元気力向上教室への参加については最寄りの「おとしより相談センター(地域包括支援センター)にて受け付けています。
また、認知症予防事業としてウォーキングプログラムや料理プログラムが組まれた「能力アップ教室」も行われています。
「いたばし版地域包括ケアシステム」の構築を目指している
板橋区では現在、団塊世代が後期高齢者となる2025年までに「いたばし版地域包括ケアシステム」を構築することを目指しています。
地域 「いたばし版」ということで強調されているのは、まさに「地域力」の一点です。
すなわちNPOやボランティア、介護事業所や医師会・医療機関、そして町会・自治会から民生委員・児童委員まで多岐に渡るアクターと板橋区が連携。
そうすることで「住まい」「介護」「医療」「福祉・権利擁護」「介護予防・生活支援」という4つのサービス力を高めていこうというわけです。
また、区が2015年より取り組んでいる第6期介護保険事業計画では、地域包括支援センター(板橋区では「おとしより相談センター」という名称)の拡充・機能強化を図ることが定められています。
現状合計19カ所ある同センターでは、1カ所当たりの人員配置を5人以上、高齢者人口2,000人に対し職員1人以上配置するという新人員配置基準も設定されています。
さらに、各センターにおける福祉情報、及び在宅医療の情報の収集・活用能力を高めるために、ICT(情報通信技術)の導入を進めてもいます。
高齢者の相談窓口であるにとどまらず、地域の高齢者福祉情報を総合的に処理できる情報ネットワークの中核地としての役割も果たしつつあります。
板橋区保健福祉オンブズマンとは?
板橋区には国や区、東京都、民間事業者などが提供する保健福祉サービスに対して不満を持った場合、「保健福祉オンブズマン」に苦情の申し立てができるという制度があります。
例えば、もし訪問介護サービスを受けていてそのサービス内容に疑問を持った場合、板橋区ではこのオンブズマンに苦情を訴えるという選択肢があるわけです。
サービス事業者とは別の第三者機関が対応することで、保健福祉サービス利用者も苦情を言いやすくなりますし、より客観的な視点で状況に対処しやすくなります。
具体的に苦情解決の仕組みがどのようなシステムになっているのか見てみましょう。
まず保健福祉サービスの利用者が「板橋区保健福祉オンブズマン室」に苦情を申し立てると、オンブズマン室が独自にクレーム対象となったサービス事業者の調査を行い、必要に応じて「意思表明・是正の勧告」を行います。
それを受けたサービス事業者は、勧告に従ってサービス内容の改善等を行い「是正措置等結果報告」をオンブズマン室に提出。
その報告書を元に、同室が苦情を申し立てた保健福祉サービス利用者に最終的な結果報告を行うことになります。
なお、苦情申し立てから結果報告までを45日以内に行うというのが、板橋区で定められた期日です。
もし板橋区保健福祉オンブズマン室で対応しきれない事案が発生した場合、上位機関である東京都社会福祉協議会による「運営適正化委員会」がサポートを行うことになります。
運営適正化委員会は東京都の後ろ盾のもと本格的な情報の収集分析、サービス事業者の検査を実施します。