前橋市と並んで老人ホーム・介護施設の多い都市
群馬県の県庁所在地である前橋市と並び、県内の中核的な役割を果たしている高崎市。2023年時点での総人口は約37万人で、それまでずっと増加傾向にありました。しかし、今後は人口の減少が顕著になり、なおかつ高齢化もどんどん進んでいきます。
高崎市の高齢化率(総人口に対する65歳以上人口の割合)は、2010年には22.8%でしたが、2023年には28.6%、2030年には約30%まで上昇することが見込まれており、超高齢社会への備えは絶対条件となっています。
そのなかにあって高崎市は、前橋市と並んで老人ホームの数が多い都市となっており、施設の種類や費用面でも、さまざまな選択肢から選ぶことができます。
施設の種類は実に多様で、介護保険における施設サービスである特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設はもちろん、有料老人ホームに加えて、最近ではサービス付高齢者向け住宅も増えてきています。
費用面は、平均的に北関東に位置する茨城県や栃木県と同じくらいと考えて良く、入居一時金が10万円台、月額利用料が12万円前後で利用できるところも多数存在します。
稀に入居一時金が数百万~1,000万円ほどの老人ホームもありますが、そのような施設では月額利用料が安くなるように設定されており、入居時の経済状況を鑑みて検討すると良いでしょう。
群馬県南部に位置する高崎市は、群馬県の玄関口であると同時に、関東と甲信越地方を結ぶ経由地。東京や横浜など関東各所だけでなく、新潟や長野などへも短時間で行ける交通アクセスの良さから、ほかの地域から移住してくる人も多いようです。
都市としての魅力は大きく、子どもから高齢者までが交流を図れる複合施設が、市の中心部に作られます。これは多機能型住居整備事業と呼ばれるもので、施設の中には介護保険関連施設やサービス付高齢者向け住宅も作られる予定。
「寝たきりや要介護にまで至ることがないよう、社会とのつながりを保てる住まい方ができる場を作り出すこと」という明確な目的の下に、高齢者が豊かな生活を送れるような街づくりに取り組んでいるのです。
都市の近代化と高齢化の融合は、全国のどの都市でも課題といえ、その先端を行く高崎市は、今後の日本の在り方のモデルケースになるかもしれません。
高崎市の高齢化率は2023年には28.6%
2023年に実施された調査によると、高崎市内の高齢化率は28.6%でした。市全体の人口は、数十年前から増加していましたが、近年は緩やかな減少傾向にあります。
そのなかで、高齢者数は右肩上がりに伸び続け、2030年になると、市内の高齢者の人口は約11万人を上回り、高齢化率は約30%に達する見通しです。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
また、それに比例するように、高齢者が暮らす世帯も急速に増加しています。介護保険制度がはじまって間もない2000年頃は、高齢者のいる世帯は32.4%でしたが、2020年には40.7%まで増加しています。
その一方で、高齢者だけの世帯が増えている事実は見逃せません。単身で暮らす高齢者は、2000年に全世帯の17.1%を記録し、2020年には28.6%にまで増加しました。
高齢者夫婦だけの世帯については、2000年に20.5%、2015年に25.3%となり、2020年には27.6%まで増加しました。
高崎市では、高齢者だけの世帯が増えている一方で、家族と暮らす高齢者の世帯も目立ってきており、高齢者の生活様式に合わせた介護サービスを早急に増やすことが求められています。
市では、高齢者の需要や希望を集めようとする動きが活発化し、2017年からはそれまで65歳以上を対象としていた単身の高齢者向けの調査を、70歳以上に切り替えました。
半数以上の高齢者が居宅介護サービスを利用している
群馬県全体の調査によると、2024年に要支援または要介護の認定を受けた高齢者は約10万人に到達。高崎市でも約1万9,000人となっています。介護保険制度が開始された頃から一貫して、要介護1および2の認定者の多さが目立ちます。
またこの年は、高崎市の居宅介護サービスの受給者が1万1,796人、施設介護サービスの受給者が2,721人、地域密着型サービスの受給者は3,406人に達しています。
高崎市は群馬県内で最大の人口を抱える都市。介護保険サービスを利用する高齢者も多く介護保険給付費も増加しています。2005年には約157億円だったものが2023年には約361億円となっています。
市内における、2023年の在宅サービスの割合は53.1%となっており、2005年の48.6%から増加していることが分かります。
第1号被保険者1人当たりの給付費のデータを見ても、高崎市では居宅介護サービス・地域密着型介護サービスの需要がやや高めであることがわかります。
なお高崎市は、介護保険料に関して市町村特別給付を実施していますが、これは群馬県内ではほかに例がありません。
「元気づくりステーション」で高齢者の交流を促進
高崎市では、65歳以上の高齢者が気軽に申し込みできる、介護予防教室を開催し、身体機能の維持や社会活動への定期的な参加を促進しています。
このほか、介護予防に関して積極的な高齢者のために「元気づくりステーション」や「ふれあい・いきいきサロン」を開催。これらは、そのどちらもが市役所の長寿社会課で問い合わせを受け付けています。
「元気づくりステーション」については「長寿センター」に、「ふれあい・いきいきサロン」については社会福祉協議会に問い合わせても対応してもらうことが可能です。
「元気づくりステーション」は体操や体力測定、「ふれあい・いきいきサロン」は高齢者同士の交流を促進することが目的で開設。理学療法士を招いて、介護予防のためのアドバイスなども実施しています。
また、高齢者が地域活動との接点を持ち続るために実施されているのが「高齢者の居場所」。各地で住民同士の結びつきを密接にするための活動が行われています。
「高齢者の居場所」は、あくまでも各地の住民が主役を務める必要があるため、希望する市民は市から支援を受けられます。
この企画は毎週開催されているため、市内の高齢者は参加したいと思ったときにすぐにその機会を持つことができます。
このほか市は、まだ元気に行動できる高齢者が、介護予防のための活動を自ら指揮することを支援するため、「介護予防サポーター養成研修」という活動も行っています。
支援センターを中心に地域包括ケアシステムを展開
高崎市では、高齢者の権利擁護や介護予防ケアマネジメント支援などを推進するために、地域包括支援センターを主軸に据えた計画を作成。
地域包括支援センターの機能を強化するために、具体的に5種類の目標を決めています。
1番目の目標は、「地域に出向き高齢者に寄り添う地域包括支援センター」です。
地域包括支援センターの業務の基本単位を、これまでの15圏域から、およそ3倍に増やします。高齢者の現状を把握したり、相談に乗ったりする作業を引き受ける、地域型センターを26ヵ所設置することも決められました。
2番目の目標は、「地域包括支援センターの適正な運営の確保」です。
地域型センターが高齢者に寄り添った支援を目的とした各地での訪問活動を行う予定のほか、地域包括支援センター同士の連携を高めるために、情報共有システムの設置も決められました。
3番目の目標は、「地域ケア会議の推進」です。
「地域ケア個別会議」や「地域別課題検討会議」「地域ケア推進会議」など、数多くの会議を開くことで、地域の問題の解決や地域包括支援ネットワークの構築を目指します。
4番目の目標は、「課題把握機能の強化」です。
地域型センターの訪問活動や、地域包括支援センターの連絡体制の整理などを通して、高齢者が直面する苦難に対処する仕組みをつくります。
5番目の目標は、「地域包括支援センターの広報活動」です。
広報や回覧板などを活用して、地域包括支援センターからの情報周知を強化します。
高崎市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
現在の高崎市内で、高齢者の苦情や相談を受け付ける最大の窓口となっているのは、「高齢者あんしんセンター」です。これは高崎市から委託を受けた組織で、市内に28ヵ所設けられており、介護や認知症を筆頭にありとあらゆる相談に応じています。
「高齢者あんしんセンター」の活動内容の大きな柱となっているのが、高齢者の権利擁護です。高齢者がいつまでも安全に暮らし続けられるようにすることが、この活動の最大の目的です。
それを実現するために、成年後見制度の利用を促進する活動などをすでに実施しており、かなりの成果をあげています。これは判断力が低下している高齢者や、財産の管理などに不安がある高齢者を救う制度です。
虐待をはじめ、高齢者の生活・権利が侵害されている恐れがあるときや、利用中の介護サービスに何か問題が発生しているときは、早めに相談するようにしましょう。
もともと「高齢者あんしんセンター」は、どのようなささいなことでも相談できる機関です。秘密やプライバシーを厳守するため、相談内容が第三者に漏れてしまう危険はありません。
窓口や電話・FAXでの相談が可能なほか、希望を出せば各地に訪問して調査を行いますが、なかなか外出できない場合は、訪問してほしいと電話などで要望してみるとよいでしょう。