有料老人ホーム・グループホームが続々と増設
2010年、全国で19番目の政令指定都市となったのが相模原市。
市内の特別養護老人ホームは多くの高齢者が入居待ちをしている状態ですが、主に要介護度4・5に認定されている高齢者のために増床される計画です。
2012~2014年の間、それぞれの年に250床を増設。
徐々に入居待ちの列も解消していくものと思われます。
同時に、有料老人ホームやグループホームの整備が市の計画に盛り込まれており、在宅での介護生活に不安のある高齢者のために、新たな居住形態の選択肢が広がることが期待されています。
民間の施設の利用料は、県内の他の政令指定都市である横浜市や川崎市よりも地価が低いという理由からか、比較的低額です。
とはいっても、設備やサービスはほぼ同等のレベルで用意されているので安心してください。
相模原市はそもそも、戦時中に軍都として発展したという背景があります。
そのため道路環境が良く、特に国道16号線は、軍機の滑走路を想定して作られたほど。
その名残からか、小田急相模大野駅やJR相模原駅を中心とした地域でも広い道路が整備されており、その周囲には大規模な商業施設が軒を連ねています。
日常の買い物などで、不便を感じることはほぼないと言って良いでしょう。
一方で、市内には相模原公園や相模原北公園をはじめとした大きな公園もあるなど自然環境にも恵まれているため、のんびりと流れる時間の中での生活を送ることができます。
都市的な要素と自然環境が絶妙にミックスされた相模原市は、高齢者にとっても、またその家族にとっても住みやすい街であり、さらにその傾向は高まっていくことでしょう。
後期高齢者(75歳以上)が急速に増えている
相模原市の人口は2023年度において71万9,118人であり、2010年度からの1,574人の微増です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
また、2023年度の高齢者人口は18万9,146人で、2015年度よりも約1.8万人ほど増えているという状況。
高齢者人口が3万人以上増えているのに、総人口が1万人しか増えていないということは、若い世代の人口(15~64歳の生産年齢人口と0~14歳の年少人口)がそれだけ減っており、少子高齢化が進んでいることを表わしています。
総人口に対する高齢者人口の比率である高齢化率は、2009年度が18.0%でしたが、2015年度に24.0%、2025年度には27.8%と更に上昇していく見込みです。
5年間で4.1ポイントも増加しており、総人口の同期間における増加率(1.5ポイント)よりも高くなっています。
現在、同じ高齢者でも後期高齢者(75歳以上)人口の伸び率が非常に高くなっています。
後期高齢者人口は、2014年度において6万6,151人。
それが2024年度には10万7,257人と約4万1,106人の増加となっています。
一方、前期高齢者(65~74歳)の人口の推移を見ると、9万2,938人だった2014年度に比べ、2024年度は8万1,556人と微減。
後期高齢者人口の方が増加傾向にあります。
1947年~1949年の第一次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」が後期高齢者世代となる2025年には、この傾向がさらに強まると予想されています。
介護サービスでは在宅サービス利用者が最も多い
2024年度における相模原市の介護保険サービス利用者数は3万2,172人。
2010年度は1万5,194人だったので、約2倍に増加しているという状況です。
要介護・要支援の認定者は、2010年度においては1万7,848人だったのに対し、2023年度には3万7,082人となっています。
また、要介護認定の要支援1~2、要介護1~5のうち、最も認定者が多いのは「要介護2」の6,978人で、「要支援2」の6,360人と「要介護1」の6,269人がそれぞれ続きます。
介護保険サービスの利用状況内訳を見ると、最も利用者が多いのは居宅サービス利用者(訪問介護、訪問看護、通所介護など。
予防給付利用者と特定施設含む)。
相模原市では高齢者人口の増加、特に後期高齢者(75歳以上)が年々増えているという現状ですが、それに呼応する形で、要介護・要支援の認定者が増加し、介護保険サービスの利用者数も増えています。
既存の介護保険サービスよりも人員基準を緩和することで充実した介護予防を提供
相模原市の介護予防・日常生活支援事業(以下、総合事業)は、「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の2種類があります。
介護予防・生活支援サービス事業の利用対象は、介護保険の要介護認定で要支援1・2と認定された人及び、市内の高齢者支援センターが行う基本チェックリストで生活機能の低下がみられた人となります。
サービスの種類は大きく分けて以下の5つです。
- 現行相当サービス(既存の介護保険の介護予防サービスに準ずる訪問サービス、通所サービスを提供)
- 基準緩和サービス(既存の介護保険サービスよりも人員基準を緩和し、日常生活のサポートに特化した訪問サービス、通所サービスを提供)
- 住民主体サービス(身近な地域に通いの場を作ったり、ゴミ出しなどの生活支援をしたりする)
- 短期集中予防サービス(高齢者支援センターが行う基本チェックリストの判定の結果、短期間の集中的な支援によって生活の改善が見込まれる人を対象にしたサービス)
- その他の生活支援サービス(一人暮らしの高齢者向けの給食サービスなど)
また、一般介護予防事業は、65歳以上の全ての高齢者を対象とするサービス。
理学療法士や作業療法士、栄養管理士などが訪問する「訪問型の短期集中予防サービス」やスポーツクラブ・介護サービス事業者などが筋力向上トレーニングを行う「通所型の短期集中予防サービス」、そして「介護予防サポーター養成講座」や「元気倶楽部」など、介護予防に資する各種イベントや教室などが行われています。
高齢者に対する見守りを超えた直接的な支援を重視
相模原市では、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて、介護が必要な体になっても自宅で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるように、「地域包括ケアシステム」の整備を目指しています。
地域包括ケアシステムとは、住まい、医療、介護、予防、生活支援の各種サービスを一体的に提供するという目標達成のための仕組みで、特に認知症を患った高齢者の日常生活を支援する上でもその必要性が高まりつつあります。
相模原市役所には地域包括ケアを専門に取り組む「地域包括ケア推進課」が設けられ、市内在住の高齢者に向けたさまざまなサービスを提供しています。
その内容は介護予防・生活支援や一般介護予防の推進、高齢者支援センター(地域包括支援センター)やあじさい大学(シニア向けの大学)の運営に加え、老人クラブの指導及び育成、シルバー人材センターの運営補助など多岐に渡ります。
具体的な取り組み内容の一例として、中央区小山で行われた認知症予防を目的とした「わっ!わっ!わっ!倶楽部」があります。
これは地域型認知症予防プログラムをアレンジし、参加者が旅行とウォーキングを行いながら楽しく認知症予防に取り組むという活動です。
また緑区城山地区では、高齢者に対する見守りを超えた直接的な支援(関連機関への連絡を含めた)を伴う「声かけネットワーク」の構築を進めています。
地域包括支援センターが主体となって自治会や老人会、商工会に加え、警察や郵便局、消防、民生委員等がネットワークに参加。
開始から既に数年が経過していますが、大きな成果を挙げつつあるようです。
相模原市の高齢者あんしん相談ネットワークとは?
相模原市では、市内の介護保険事業所と協力し、高齢者とその家族が気軽に介護保険制度や介護の悩みについて相談できる「高齢者あんしん相談ネットワーク」の構築を進めています。
対象となる介護保険事業所は、介護保険3施設、グループホーム、小規模多機能居宅介護、介護付有料老人ホーム、ケアハウス、ショートステイの各事業所。
市内に立地するこれら事業所のうち、高齢者あんしん相談ネットワーク事業に協力を申し出ている場合はその旨を表示した看板が掲示されています。
2017年3月時点で市内の89施設が協力を申し出ており、市民からの相談に常時対応しています(相談対応時間は施設により異なります)。
市内には高齢者支援センター(地域包括支援センター)がありますが、より身近に、気軽に相談できる場所を確保するというのが、高齢者あんしん相談ネットワークの目的です。
具体的なサービス内容としては、介護保険の制度や介護の悩みの相談を受けることや市の高齢者福祉事業に関するパンフレットを配布すること、必要に応じて高齢者支援センターを紹介するなどといったことになります。
市内で在宅介護をしている世帯は、自宅近くにどんな介護保険事業所があるのか調べた上で、その事業所が高齢者あんしん相談ネットワーク事業に協力しているかどうか確認すると良いでしょう。
もし協力事業者であれば、介護に関するちょっとした相談をいつでも受け付けてくれます。