温暖な気候で、高齢者が余生を過ごすのに最適な土地柄
千葉県のほぼ中央に位置する千葉市は千葉県の県庁所在地であり、政令指定都市。都心から30kmほどでアクセス可能なことから東京のベッドタウンとして成長を遂げてきた歴史があります。
ここには団塊の世代が多く暮らしていますが、その層の高齢化が進むことで発生する、医療ケアや要介護度の上昇といった問題に対応することが急務です。
そこで市は、高齢者のための住まいを安定的に供給できるよう「千葉市高齢者居住安定確保計画」を策定。
そのなかで「認知症グループホーム等の地域密着型サービスの充実」「サービス付き高齢者向け住宅等、高齢者に配慮した住宅の供給促進」といった事業を進めています。
老人ホームの入居待ちは一定数いると言われていますが、費用面での選択肢は非常に幅広いものがあります。
介護付有料老人ホームでは入居一時金が数千万円、月額利用料が20万円以上といった高額施設もありますが、住宅型有料老人ホームやグループホームでは入居一時金が0~数百万円、月額利用料12~18万円といったところも多数存在します。
全国的に見ても巨大都市のひとつに数えられる千葉市ですが、高齢者が住みにくい街かと言えば、決してそうではありません。
市内には多くの国道や高速道路が走っていると同時に、鉄道網の要となっているため交通の便は良く、もちろん施設のバリアフリー化も進んでいます。
そうした都市機能があるのと同時に、例えば若葉区や緑区にはのどかな自然も多く、田畑の広がる牧歌的な農村地帯となっています。
気候も温暖で過ごしやすく、高齢者がのんびりと余生を過ごすのに最適の土地と言えるかもしれません。
千葉市は少子高齢化の進行が全国的にみて遅い
千葉市の総人口は2024年には97万7,016人となり、千葉県の中で人口が1番多い都市です。
人口の推移はほぼ横ばいになっており、市が想定したよりも少し早く上げ止まりの傾向があります。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
年齢別で人口を見てみると、15歳未満の人口は11万944人、65歳以上の人口は25万6,822人となっています。
2024年の高齢化率は26.3%と全国平均の29.0%を下回っています。
しかし年々高齢者人口は増え続けており、高齢化も進んでいます。2035年には高齢化率が30%を超える見込みです。
出生数は2024年には5,570人と前年より207人減少しており、全国的な傾向と同様に少子化対策は急務であると言えそうです。
一方、高齢者の割合を前期、後期で見てみると前期高齢者数11万2,012人、後期高齢者数14万4,733人となっており後期高齢者数が多くなっていることが分かります。
区別に高齢化率を見ると千葉市内では若葉区の30.8%という数字は特筆すべきもので、人口の自然減も若葉区が最も大きな値を示しています。
反対に中央区の22.8%、緑区の高齢者率23.8%は全国平均から見てもかなり低い値です。
2024年の要介護認定を受けている人数は総数で4万9,895人、特に要介護1の認定者数が多く1万3,223人となっています。
千葉市では在宅介護が進んでいる
千葉市の介護保険サービスは、施設に入居する形の「施設、居住系サービス」と在宅介護と呼ばれる「居宅サービス」に分かれています。
施設・居住系サービスには介護福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の公共サービスと、民間の有料老人ホーム、グループホームが含まれます。
利用状況の大まかな内訳は、居宅介護サービス利用者数1万7,443人、施設サービス利用者数5,470人、地域密着型サービス利用者数6,481人と居宅介護サービスの利用者数が最も多く千葉市では在宅介護が進んでいると言えるでしょう。
今後の計画を見ると段階的に公共施設の利用増を計画に盛り込んでいますが、要支援以上の認定を受けていない自立認定の方の介護保険サービスの利用も含め、居宅サービスの利用に特徴のある地域となっています。
居宅サービスは要支援の方が利用する「介護予防サービス」、要介護の方が利用する「居宅介護支援」に分かれますが、居宅介護支援は介護予防サービスに対して約3倍の数値。要介護の方が多くなっている現状が浮き彫りとなってきます。
2015年からは介護保険制度の改正に伴い通所型サービスの区分が変更され、定員18名以下のデイサービスが地域密着型サービスに移行されました。
千葉市でもそれに伴い予算の移行が行われていますが、従来のデイサービスよりも多くの利用者を見込んでいるので、小規模事業所の充実が見て取れます。
また、バリアフリー化など自宅改修費用の支援も介護サービスの一環ですが、千葉市でも年々増加傾向にあり、在宅介護への移行がさらに進むものとみられています。
千葉市は介護予防として独自に「シニアリーダー」制度を行っている
介護予防サービスのなかで、「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」は2017年に市の「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に移行されました。
従来の訪問介護や通所介護も当然ながら引き継がれましたが、より一層、自治体の色が洗われることになりました。
まず千葉市では、身体介護の必要のない方に対して掃除や洗濯などの家事を手伝うサービスや、これまではホームヘルパーが行っていた買い物やごみ出しなどの支援をNPOや地域の住民ボランティアが行う事業を始めています。
通所介護では一般的なデイサービスに加え、機能訓練を必要としない高齢者の方を対象にしたレクリエーションや介護体操を実施。同じくボランティア主導での体操教室やサロンなどを運営していくサービスもスタートしました。
また、理学療法士などの専門家のもと、短期間(原則3ヵ月)で機能回復訓練を行う通所型サービスも予定されており、とにかく地域ぐるみで要支援の方を支え、要介護に至らないように自立を支援していくという強い姿勢が見られます。
千葉市では従来通りの介護予防活動ももちろん進行中です。なかでも「シニアリーダー」制度は独自の特徴と言えます。
これは地域の介護予防活動を先頭に立って行うリーダーを養成するという試みですが、早くもシニアリーダーが企画した体操教室が開催されるなど着実に機能しています。
シニアリーダーになるためには、年12回の市が指定した講座を受ける必要があるので、興味のある方は地区のあんしんケアセンターに確認してみるのが良いでしょう。
千葉市では介護技術を教える「訪問レッスン」を推進
千葉市の地域包括ケアシステムの要となるのが、市内30ヵ所に設置されているあんしんケアセンターです。
まず、介護に携わる本人や家族の相談窓口としての意味合いが強く、専門の「主任ケアマネージャー」「社会福祉士」「保健師」等が常駐し、互いに連携を取りながらチームで相談者の介護プランの相談に当たります。
加えて要介護になる前の介護予防として要支援認定の方のケアプランを策定し、介護保険サービス利用のお手伝いを行うほか、自分では判断や理解の難しい、成年後見制度や虐待防止対策などの相談にも乗ってくれます。
千葉市は在宅介護、医療に力を入れており、特に介護に関しては、在宅介護する家族に対して訪問介護の業者が介護技術を教える「訪問レッスン」を実施しているのが特徴的です。
ところで、認知症の方を地域ぐるみでケアするためのサポートキャラバンは全国的に見ても珍しくはないですが、子どもたちへの認知症への理解を深めてもらう啓蒙活動「認知 症こども“力”プロジェクト」は千葉市独自の政策です。
介護予防事業にも力を入れ、介護予防教室や講演会、また地域で自発的に活動を行う組織の育成や支援にも取り組んでいます。
また、「チャレンジシニア教室」と銘打った介護予防の取り組みは一般の高齢者の方を対象とし、そば打ちやダーツなど遊びの要素も取り入れることで引きこもりの解消をも目的としたサービスです。
千葉市では、介護サービスを受けるには至らないが、一人暮らしには不安のある方を受け入れる「サービス付き高齢者住宅」の建設を推進してきました。
その成果と言えるのがこの通称「サ高住」の数。2017年9月現在は市内に40ヵ所以上あり、一つの自治体としてはかなりの充実ぶりです。
千葉市の「あんしんケアセンター」とは?
高齢者の方の相談に乗ってくれるのは、まず何といっても市内に30ヵ所ある地域の「あんしんケアセンター」です。
ケアマネージャー、社会福祉士、保健士が常駐しているので、介護や福祉に関する不安や不満、医療に関する事などが相談できます。
要支援の方には介護予防のケアプランの作成から実際の介護サービスの手続きまでを行ってもらえ、場合によっては成年後見制度の支援なども受けられます。ご本人はもとより家族の相談にも乗ってくれるのが大きな特徴ですので、積極的に活用したいところです。
市内の各区にある「保健福祉センター」も高齢者の総合的な相談窓口。初めての方の相談は、窓口での受け付け内容に応じて各課の支援が受けられるしくみで、高齢支援班では福祉に関する援助や指導のほか、民生委員や児童委員の紹介をしてくれます。
加えて、認知症の方やそのご家族向けの相談窓口も多数用意されており、「ちば認知症コールセンター」では介護の経験者が皆様からの相談に乗ります。
そして、「認知症疾患医療センター」では主に医療的な相談に応じ鑑別診断を行い、場合によっては地域の医療機関を紹介してくれる事もあります。
高齢者の方を在宅介護しているご家族向けには「家族介護者支援センター」があり、電話でも相談も可能なことに加え、専門のホームヘルパーなどが自宅に訪問して介護の実践技術指導なども行っています。