高額でサービスの充実した有料老人ホームが多数
千葉県第5の都市とされる柏市は、都心から約30kmの場所に位置しており、東武線やJR線などが通っていることから、東京のベッドタウンとして発展してきました。
高齢化は全国的な流れと同様の進行状況ですが、それを支えるための老人ホームは現在、急ピッチで増床が進められています。
2025年には新たに2,100人分の施設が必要になると見込まれていますが、一気に増設することは困難。そこで柏市は、東京大学やUR都市機構と共同して、地域包括ケアシステムの事業・研究に取り組んでいます。
その一方で、在宅医療の実現に向けても、地域全体で動き始めており、これには柏市医師会の協力もあり、着々と仕組みづくりが進められています。
このように、老人ホームと在宅医療という両輪によって、健康長寿を実現しようとしているのが柏市なのです。
老人ホームの詳細を見ると、その特徴として、介護付有料老人ホームや介護老人保健施設が多い点が確認できます。
これは医師会などの医療施設が積極的に対策に乗り出しているためで、対人口比で考えても他の地域よりも充実していることは明らか。看護や医療ケアが必要な高齢者にとっては安心できる点と言えるでしょう。
また費用面では、高額となるのは介護付有料老人ホームが多いようですが、医療機関と密接に連携していたり、24時間看護サービスの体制が整っていたりと、充実した医療ケアが受けられるようになっています。
もちろん、介護付有料老人ホームだからといってすべてが高額になるわけではなく、選択肢は幅広くあるので安心です。
2040年までには高齢化率は30%まで上昇
全国的に人口が減少している都市が多いなか、柏市の人口は増加傾向にあり、生産年齢人口の割合が比較的高い街。高齢化率も他市に比べると低めですが、やはり年々、高齢者が増え続けています。
実際の数値を見ると2015年には総人口41万3,954人に対し高齢化率は24.2%、2023年には総人口43万3,733人、高齢化率26.0%と人口も増加していますが、高齢者人口も年々増加しています。
現在のところ、全国平均の高齢化率である約29%は上回っていませんが、4人に1人以上は高齢者という状況です。
高齢者数の増加に反比例するように、総人口はあと数年のうちに減少し始め、子ども世代の人口割合や生産年齢人口割合も減少すると予測されています。
一方、高齢化率は上がり続け、2030年には27.3%、2040年には30.7%になると推測されているのです。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
一人暮らしの高齢者世帯数は、2020年には1万8,532世帯まで上昇しています。
一人暮らしの高齢者が急激に増えているのが特徴と言えるでしょう。
そのため、柏市では介護支援サービスの中でも、居宅サービス充実がさらに求められています。
柏市の認知症高齢者数については、2020年と比較して2040年には1.9倍となり、1万6,000人を上回る見込みです。柏市は具体的な高齢化対策・認知症対策に乗り出しています。
柏市の要介護認定者数は2万人を超える見込み
柏市の要支援・要介護認定者は増加中で2024年には1万9,945人となっており、近いうちに2万人を超える見込みです。
中でも、要介護1の認定者数が多く4,616人、次いで要介護2で3,107人でした。
さらに、現在柏市では75歳以上である後期高齢者よりも、65歳から74歳である前期高齢者の方が多いのですが、2020年を境に逆転し、後期高齢者の方が多くなっています。
超高齢社会の進展とともに、ますます増え続けると考えられている要支援・要介護認定者数に歯止めを掛けるため、柏市は健康体操などの介護予防対策にも力を入れています。
介護サービス利用者数は2010年には8,284人でしたが、2024年には1万6,835人まで増加。14年で8,551人の増加となっています。
介護支援サービスで受けられる内容としては、訪問系(居宅サービス)、その他居宅サービス(福祉用具・住宅改修サービスなど)、通所系(施設サービス)、特定入居者介護サービスなどがあり、そのなかでも訪問系サービス・その他居宅サービスを利用している人が多いようです。
一方、療養病床は数の少なさから、利用者もあまりいないのが現状。全国平均や千葉県の平均と比べても、大きく下回っており、柏市にとって療養病床の確保も重要な課題と言えるでしょう。
「セカンドライフ事業」で生涯学習を支援
「高齢者が気軽に楽しく参加できる介護予防事業」を目指し、柏市はさまざまな取り組みを行っています。
「ロコモフィットかしわ事業」では、ふるさと会館や近隣のセンターで健康体操を実施。歩行や日常生活が快適にできるよう、スクワット運動やゴムを使った柏市オリジナル体操などを行っています。
また、「いきいきプラザ」などの介護予防センターでは、音楽や運動、手芸などを通じて、機能訓練や健康増進を実施中。「まちの健康研究所あ・し・た」では、講演会や介護予防教室の開催、老人サロンや老人クラブといった介護予防グループの支援なども実施しています。
柏市では「セカンドライフ事業」として、高齢者がボランティア活動や生涯学習ができる場所を増やしており、「高齢者の生きがいづくり」にも積極的です。
商店街などの空き店舗を利用した「コミュニティカフェ」や「ふれあい喫茶」は、社会活動に参加することを通じて外に出て、心身の健康増進を図ることで介護を予防します。
さらに、病気で動けなくなると介護が必要になる高齢者が増えてしまうことを鑑み、高齢者の健康相談や健康診断もこまめに実施。なかには無料のものもあるので、気軽に利用することができます。
このように、柏市では色々な介護予防サービスを実施中で、「参加したいが窓口がわからない」という場合は、地域包括支援センターに聞くと良いでしょう。
高齢者が快適に生活できる見守りネットワークが充実
柏市は「すべての高齢者が、その人らしく、住み慣れた地域で安心していきいきと暮らせるまち」を基本理念として掲げ、医療・福祉・保険などを総合し、包括的なケアシステムを作ろうとしています。
高齢者とその介護者が快適に暮らせるよう、地域包括支援センターが中心となり、NPO団体や専門機関、ふるさと協議会などが、さまざまな介護支援を実施中です。
訪問介護などの介護サポートだけでなく、グループホームなどの高齢者向けの住まいの確保、配食や買物代行などの生活支援、介護予防支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護など、実に多彩なサービスを提供しています。
さらに、高齢者の高齢者就労支援などの社会参加促進サポートや居場所づくりのための「ふれあいサロン」や老人福祉センターの整備、認知症の人やその家族をサポートする認知症対策の推進など、サービス内容は実に多様化しています。
また、地域包括支援センターでは高齢者だけでなく、家族や周囲の住民の方も気軽に相談できるようになっていますし、防災時に自力で避難できない高齢者のための「柏市防災福祉K-Net」や、見守りネットワークなどの「地域全体で関わり、ケアしていく制度」が広がっています。
地域の住民ボランティアによるゴミ出し代行などもあり、想像以上に柏市の介護支援サービスは豊富。利用できるサービスや、自分もできるボランティアなどが知りたい人は地域包括支援センターに確認してみると良いですね。
柏市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
「訪問介護や施設サービスなどを利用し始めたのは良いけれど、ちょっと疑問がわいた」という場合もあるでしょう。
そういった福祉サービスに関する相談は、柏市社会福祉協議会が運営している相談支援課、「かしわ福祉権利擁護センター」が窓口となっています。
これは福祉サービス利用援助担当と呼ばれるスタッフが、自宅や介護施設等で生活する高齢者や障害者の相談にのってくれるシステム。「適切な福祉サービスが受けられていない」と感じる人は、相談してみると良いでしょう。
また、公共料金や税金、医療費等の支払い手続きや、年金などの手当受領の代行確認といった財産管理サービス、預貯金の通帳、不動産権利証、実印などの保管を代行する財産保全サービスなどを実施していますので、お金や医療、財産や不動産などに関する相談も可能です。
難しい内容の相談もあると思いますが、専門的な助言や援助が必要な人には弁護士や社会福祉士を紹介してくれます。
加えて、心の健康や家族のことなど、全般的な相談も可能。虐待や権利侵害にも対応してもらえるので、まずは相談内容にこだわらず、社会福祉協議会に相談してみて下さい。
相談後は審査会で協議し、具体的な支援計画を設定。相談した本人が社会福祉協議会と契約すれば、生活支援員が支援を開始する流れです。