認知症高齢者の住まい確保に注力
前橋市では2006年から2011年までの5年間で、介護保険における施設サービスである特別養護老人ホームと介護老人保健施設の整備が進められ、現在のような充実した環境が実現しました。
しかし、昨今では一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦だけの世帯、要介護度4~5といった重度の要介護者、認知症高齢者などの増加が問題視されており、市をあげてその対策に乗り出しています。
具体的には、高齢者が認知症になっても住み慣れた地域で生きていけるように、グループホームや小規模多機能型居宅介護をはじめとした、地域密着型サービスの充実をはかっていることです。
同時に、特別養護老人ホームに関しては、入居待ちをしている高齢者が多いという点から増設が予定され、高齢者福祉のさらなる充実が期待されています。
一方、介護付・住宅型それぞれの有料老人ホームでは、費用面の選択肢が幅広く、多くの高齢者の人気を集めています。月額利用料に関しては、入居一時金が高いほど低額に設定している老人ホームが多く、入居時の経済状況によって選択できるようになっています。
前橋市は関東平野の北端にあり、赤城山麓の麓に位置。市内には利根川が流れ、水道水はその地下水で補われるなど自然に恵まれているため、高齢者がのんびりと余生を過ごすにはうってつけの環境と言えます。
前橋市の高齢化は2023年には29.9%に
前橋市の人口は、20世紀が終わるまでは一貫して成長を続けていました。今世紀に入った頃にピークを迎え、2010年代に入るとはっきりとした減少傾向に突入しています。
2000年の調査では、市内の総人口は34万1,738人でしたが、それから15年経つと、33万6,154人に減少、2023年には33万1,771人と緩やかに減少しています。
同時に、市内の高齢化が確実に進行。15歳未満の年少者の割合や、15~64歳までの生産年齢人口の割合が下がり続けているのとは対照的です。
男女別のデータを調べると、高齢化率の背景にある事実が浮かび上がります。
年少者の人口と生産年齢人口はともに、男性のほうが割合が高い一方、高齢者だけは女性の割合が高くなっているのです。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2017年の時点で高齢化率は28.1%、2023年には29.9%でした。この年の人口を年代別に調べると、50~54歳までの年代が一番多いことがわかります。
その次に多いのは、70~74歳までの世代。70~74歳までの世代は、いわゆる団塊の世代に該当し、50~54歳まではちょうど団塊ジュニア世代にあたります。
ただし、団塊ジュニア世代が産んだ子供に関しては、市内に多いわけではありません。前橋市においても近年の少子化の影響は顕著にみられており、人口が減少している中で、前橋市の少子化対策・高齢化対策は早急に着手する必要性が高まっています。
介護サービスの利用者数は1万人を突破
前橋市では、要支援・要介護認定者が増加の一途をたどっています。そのため2024年には要支援者数4,795人、要介護者数1万3,431人となっています。。
施設サービスについては、定員などの制限があるため極端に増えることはありませんが、居宅サービスはかなりの勢いで増え続けています。
施設介護サービスの利用者数は、2012年に2,389人に達した後に微減しましたが、居宅介護サービス・地域密着型介護サービスの利用者数は増加の一途をたどっており、2009年時点では7,768人だったものが、その5年後には1万1,020人に達しました。2024年には施設介護サービス利用者数2,684人、居宅介護サービス利用者数8,279人、地域密着型サービス利用者数2,108人、合計1万3,071人と緩やかに増加しています。
居宅サービスの利用状況を調べると、訪問介護サービスと通所介護サービスの希望者が突出。特に要支援1・2、要介護1・2の認定者の高い利用率が目立ちます。
短期入所生活介護サービスや福祉用具貸与サービスの利用については比較的少なめですが、それでも要介護2までの利用率が高いことに変わりなく、施設サービスに関しては、介護老人福祉施設の利用者数が常に多いですが、要介護度による違いは特に見当たりません。
介護老人保健施設の利用数は依然として多いものの、減少傾向にあり、特定施設入居者生活介護と認知症対応型共同生活介護は、年々微増しています。
「活動ポイント制度」を導入し介護予防を促進
前橋市でも、介護予防サービスを受けたい場合は気軽に申し込みができるようになっています。
65歳以上では基本チェックリストを確認し、自分自身の心身の機能について確認をすることがまず大切で、その結果をもとに、最適な介護予防サービスの紹介を受けることができます。
基本チェックリストについては、市内各地の地域包括支援センターや、市役所の介護高齢課で問い合わせ可能です。
前橋市でさかんに行われている、介護予防サービスの一部をご紹介しましょう。運動機能を落としたくない高齢者におすすめなのが、「ピンシャン!元気体操」です。
これは、前橋市オリジナルの体操を用いたもので、ささいな動作で構成されているため、高齢者でも実践しやすくなっており、自宅での再現も簡単です。
介護予防では、高齢者を孤独にしないことが大事ですが、前橋市では、「前橋はつらつカフェ」という交流の場を市内各地に設置。このカフェに参加することで、閉じこもりの予防や認知症対策などのサービスを受けることが可能になります。
前橋市では、2016年の秋から「介護予防活動ポイント制度」が開始されました。これは介護予防活動に関わることで、商品券などと交換できるポイントを付与するサービスです。
介護保険施設の入居者を援助したり、介護予防サポーターとして活動したりするたびに、ポイントが与えられ、まだ要介護認定を受けていない60歳以上の市民であれば、誰でも申し込めます。
「生涯活躍のまち」を目指して地域包括ケアシステムを構築
前橋市では現在、「未婚率の上昇」「夫婦間の出生数の減少」「若者の総数の減少」「要介護等認定者率の上昇」の4つの課題の解決に取り組むため、「生涯活躍のまち(CCRC)」構想を進めています。
高齢者介護と切っても切れない関係にある、地域包括ケアシステムづくりについても、その枠内で改善していく予定です。
現在の前橋市は、地区によって独特の環境を持っています。地形などの条件に合わせて、市内ではすでに10を超える地区に分けて都市計画が実行されてきましたが、現状の体制をより優れたものにすることが現在の目標となっています。
地域によって、その持ち味は少しずつ異なりますが、特性にぴったり合致する生きがいが育まれれば、自然と移住者は増えるもの。その根底には、付加価値を増やすことで各地域の魅力をいっそう引き出すという価値観が根付いています。
また、さまざまな行政サービスの拡充や連携も計画に盛り込まれており、高齢者にとって必要な介護や医療についても、各施設が密接に協力して取り組んでいくことが謳われています。
この「生涯活躍のまち(CCRC)」計画が実行に移されれば、既存のデイサービスや訪問診療サービスなどがいっそう利用しやすいものになるでしょう。
前橋市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
前橋市社協はこれまでさまざまな福祉サービスを展開してきましたが、介護を中心とした高齢者問題にも熱心に取り組んできた実績があり、介護サービスの苦情や陳情も、素早く受け入れる体制を取っています。
前橋市社協は現在、「高齢者電話訪問・相談センター」というサービスを実施しています。これは名前の通り、「電話を通して社協のスタッフに相談事を持ち込む」というものです。
介護サービスが必要な高齢者にとって非常に便利なこのサービスは、単身の高齢者が孤立したり、苦難に巻き込まれたりすることを防ぐ目的で、経験を積んだ相談員が定期的に電話で訪問をするのです。
スタッフが週に1~2回電話をかけることで、孤独な高齢者の安全確認が可能となりますが、介護サービスに何か不満を感じているなら、そのついでに話してしまうことが一番。簡単な登録手続きを踏むだけで、定期的なサービスが受けられます。
「電話訪問」サービスは、単身者またはそれに準ずる高齢者だけが対象ですが、それ以外の高齢者でも利用できるのが「電話相談」サービス。これは、高齢者の家族が利用することも認められています。
「電話訪問」サービスでは、専門知識を備えた相談員から詳細な助言が受けられ、必要があれば、外部の機関の紹介してもらうことも可能です。