特養の入居待ちが2000人近く!?民間の介護施設も視野に入れて
東京湾の入口に位置しており、江戸時代から国防の拠点となる軍港都市として栄えた横須賀市。
神奈川県下では横浜市に次いで市制化されるなど、その歴史は深いものがあります。
由緒ある市ですが、近年では県内のほかの市の方が都心部へのアクセスが良いこと、そして市内の多くが山がちで可住区域が狭いという理由から、人口はゆるやかな減少傾向を見せています。
その半面、高齢者の数は増加の一途をたどっています。
2010年時点の総人口は約41万8,000人で、そのうち65歳以上人口は約10万6,000人、高齢化率は25.2%となっており、それまでの5年間で高齢化率が4.2ポイントも上昇するという、急激な高齢化が起こっています。
2011年4月の時点で、特別養護老人ホームの入居待機者は2,000人近くいます。
しかし、2012~2014年度の間で増設されるのは300床程度。
あまりに少ないように感じますが、入居にあたっての緊急度が低い高齢者(要介護度1~3など)や、「いずれは入居したいと思っているので、とりあえず申し込みだけしておく」といった人も大勢います。
早くから入居したい施設が見つかっている場合、とりあえず申し込んでおくというのも一案です。
入居待機の段階で、有料老人ホームなど民間の施設への入居を考える人も多いと思いますが、横須賀市では数がそれほど多くはありません。
なかでも介護付有料老人ホームは比較的多いのですが、選択肢が少ない割にはサービスの質や設備の充実度合いが良いところが多く、医療・看護ケアが必要な高齢者も安心して入居できます。
また利用料の面でも、隣接する横浜市をはじめ、神奈川県内のほかの大都市よりは低額のところが多く、利用しやすい環境は整っているといえるでしょう。
横須賀市が位置するのは三浦半島。
市の東側の東京湾岸は大工場がひしめく工業地帯ですが、西側の相模湾岸には農地が広がるなど、今なお豊かな自然が残されています。
その風景は、とても横浜から30分、東京都心から1時間ほどの距離とは思えないほどのどかで、高齢者がのんびりと過ごすには最適です。
また、横浜横須賀道路など道路網も整備されているため、羽田空港からも車で1時間ほどと交通アクセスは抜群。
東京や横浜などの関東圏だけでなく、隣県の静岡県にお住まいの方でも、横須賀市の老人ホームへ入居を考えるメリットは多くあります。
横須賀市の高齢化率は32.3%まで上昇している
横須賀市は、三浦半島の中心をなす都市の一つで、東京エリアにも比較的近いこともあり、新市街地の形成や宅地造成などが盛んに行われた場所です。
しかし近年は人口が減少し、少子高齢化が進んでいます。
2000年の総人口は42万8,645人。
高齢者数は7万4,760人で、高齢化率は13.3%でした。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
その10年後の2010年には、総人口が41万8,325人に減少。
それに対し、高齢者数は3万人以上増加して10万5,576人となり、高齢化率は25.2%まで上昇。
市民の4人に1人以上は高齢者という状況となりました。
2015年には、総人口は40万6,586人、年少人口は4万6,530人で、割合は11.5%。
高齢者数は12万465人で、高齢化率は29.7%となっています。
2023年には、総人口は38万8,197人、高齢者数は12万5,476人で、高齢化率は32.3%となっています。
今後も高齢者は増え続け、もうすぐ3人に1人は高齢者という超高齢社会が到来すると推測されています。
高齢者のみの世帯も増えており、2020年時点で全世帯16万5,473世帯のうち4万9,825世帯(30.1%)は高齢者のみの世帯となっています。
そのうち、高齢夫婦世帯は2万4,816世帯、一人暮らし世帯は2万5,009世帯です。
一人暮らしの高齢者や夫婦だけで暮らす高齢者も多く、アンケートによると「自分の健康状態や介護が心配」という人が多いのが現状です。
横須賀市では高齢者の不安を減らすべく、さまざまなサポートを実施しています。
利用者の増加で新たな介護施設も整備予定
横須賀市では、高齢者数同様に要支援・要介護認定者も増えています。
要支援・要介護認定者数は2010年時点で1万5,300人でしたが、2015年は2万129人、2020年は2万3,043人、2024年には2万4,405と急増しています。
特に要介護1認定者が多く、介護保険サービス利用者も増え続けています。
有料老人ホームなどの施設サービスを利用する人も多く、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型保険施設、そしてグループホームの整備を実施。
特に85歳以上の利用者が多いのが特徴です。
在宅介護も増えており、高齢者の自立した生活をサポートするべく、横須賀市はさまざまな支援サービスを提供しています。
一番利用が多いサービスは訪問介護で、ついで通所介護、ショートステイ、訪問看護、通所リハビリテーションなどです。
その他にも、福祉用具貸与や訪問入浴介護、居宅栄養管理指導などのサービスがあり、地域包括支援センターに相談すれば必要なサービスを紹介してくれるシステムです。
特に定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用は今後も大きく増えると推測されており、スタッフの確保なども横須賀市の課題です。
横須賀市では、高齢者の介護予防や重度化防止事業も推進。
高齢者が1日でも長く自立した生活を送れるようフォローしています。
シニアのための介護予防講座が多数開講されている
横須賀市では、健康部保健所健康づくり課や福祉部高齢福祉課などが中心となり、介護予防を積極的に推進しています。
運動関連の教室などが数多く開催されており、転倒防止にも繋がる「高齢者体力づくり教室」や、骨粗しょう症について勉強し予防運動を実施する「骨密度アップ教室」を開催。
シニア女性のための尿もれ予防教室「キュキュっと教室」では、尿もれの予防・改善だけでなく、引きこもり防止や身体機能の低下防止対策も実施しています。
関節や腰に痛みがある人を対象とした「関節らくらく教室」では、関節の痛みを軽減する体操を紹介しています。
高齢者の栄養失調などの予防を目的とした「シニアのための栄養講座」を開催し、食事の大切さやバランスのよい食生活を勉強できるようにしています。
「男性料理教室」では、正しい食習慣や必要な栄養について理解し、実際に調理する実習を行っています。
「のみこみらくらく教室」では、噛んだり飲み込んだりが苦手な人とその家族を対象に、口腔・嚥下機能の低下に合わせた調理法を紹介。
高齢者が食べやすい料理を覚えられます。
また、「小食の方の栄養教室」では、食の細い高齢者向けの栄養指導と、口腔ケアについて学べます。
認知症予防教室である「スカッと脳力アップ教室」では、認知症予防につながる早歩きの練習や、認知症に効果的なレシピを考えるグループワークなどを実施。
うつ予防教室「ハッピー教室」では、こころの健康を維持し、沈んだ気持ちを改善する方法を紹介しています。
「はつらつシニアパス」交付で高齢者の外出を支援
横須賀市では、高齢者が生涯現役でいられるよう介護予防・生活支援サービスや認知症対策などを中心に、医療、健康、介護などさまざまな角度から高齢者の生活をサポートする、地域包括ケアシステムを構築しています。
介護予防としては「介護予防教室」や地域リハビリテーション支援事業などを行っていますし、認知症対策としては地域包括支援センターによる相談会や、認知症サポーターの育成、認知症になった際に受けられる医療・介護サービスが分かる「認知症ケアパス」の作成などを実施しています。
また、引きこもり防止や高齢者の社会参加のため、「はつらつシニアパス」を交付し、高齢者の外出支援も実施。
シルバー人材センターや地域交流を行う老人クラブへの支援、コミュニティセンターでの高齢者学級や生涯現役講座の開催など、さまざまな取り組みを行っています。
高齢者虐待防止ネットワーク事業では、早期発見・早期対応のための電話相談などを実施し、高齢者の虐待防止に努めています。
老人福祉センターや老人憩いの家では、健康づくり教室や生きがい講座を行い、高齢者の生きがいづくりにも貢献。
公益活動に参加するとポイントがもらえる「市民公益活動ポイント制度」も導入し、活動のやりがいを高めています。
その他にも、健康診査や健康相談などの「高齢者の健康づくり」、紙おむつ支給や寝具丸洗いサービスといった「ねたきり高齢者支援」、老人ホームの整備など地域包括ケアシステムに基づくサービスは実に多彩です。
横須賀市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
横須賀市では、高齢者が気軽に相談できる窓口を増やしています。
要支援・要介護認定者は、地域包括支援センターや、デイサービスなどで利用している老人ホームのケアマネージャーに相談している人が多いようです。
主に地域包括支援センターが中心となり、高齢者や介護する家族、地域住民の悩みにも対応しています。
悪質詐欺や金銭問題、心の悩みなど、介護だけでなく全般的な相談ができるのが特徴です。
地域包括支援センターは各エリアに設置されており、寝たきりなどで支援センターに足が運べない人には電話相談や訪問相談を行っています。
横須賀市社会福祉協議会「よこすか安心センター」では、福祉サービス利用援助・日常的金銭管理サービスを実施。
「訪問介護を利用したいけれど、どうしたら良いのか分からない」といった福祉サービスへの疑問や悩み、「印鑑が頻繁に無くなる」などの金銭管理に関する悩みを専門員に相談できます。
その後、必要であれば生活相談員が問題の解決をサポートしてくれるシステムです。
横須賀市は住まいに関する相談ができる「住まい探し相談会」や、権利擁護のための「高齢者虐待相談」、心の病などを打ち明けられる「高齢者・介護者のためのこころの相談会」なども開催。
その他にも、消費生活相談や法律相談、交通事故相談、行政相談、死んだ小動物の収集と持ち込み相談、福祉電話の貸与と相談、よこすか就労援助センターなどによる高齢者就労支援相談、ひきこもり相談・家庭訪問、健康アップ相談など、実に多彩な相談窓口があります。
相談窓口が分からない人は区役所などに聞いてみると良いでしょう。