低額で利用できる介護施設が多いのが嬉しい
栃木県の県庁所在地である宇都宮市は、全国的に見ても老人ホームの少なさが目立つ都市でした。
その状況を改善するため「にっこりあんしんプラン」という高齢者福祉計画を進め、2009年~2011年の間で特別養護老人ホームの収容人数は1.5割、介護老人保健施設は1割、それぞれ増設されました。この計画は今後も進められる予定で、さらなる増設が期待されています。
宇都宮市内で圧倒的に多いのは特別養護老人ホームですが、全国的な例に漏れず空き部屋は少なく、入居待ちをしている高齢者はかなりの数にのぼります。
有料老人ホームの費用については、住宅型・介護付有料老人ホームともに、県内の他地域と大きな差はありません。栃木県自体が関東圏のほかの都県よりも低相場であることから、宇都宮市でも比較的低額で利用できる老人ホームは多いといえるでしょう。
宇都宮市といえば有名なのは餃子ですが、宇都宮市の魅力はそれだけではありません。2008年から、リハリのあるネットワーク型コンパクトシティ(連携集約型都市)を目指す「第5次宇都宮市総合計画」が策定されており、市内の都市化が進んでいます。
もちろん、ユニバーサルデザインが考慮されており、バリアフリー化も推進。都市の近代化に拍車がかかっている一方で、来るべき超高齢社会に向けて、高齢者が住みやすい街へと整備が進められています。
宇都宮市の高齢化率は2023年は26.0%に
宇都宮市は餃子での町おこしに成功し、全国から観光客が訪れるようになりました。
現在もカクテルやジャズ、自転車などのスポーツを積極的にアピールし、観光資源をますます充実させています。
そんな宇都宮市は比較的若い人が多く、高齢化率は全国平均と比べると低めです。
全国の高齢化率を見てみると、2015年は26.6%、2016年は27.3%、2023年には29.0%となっており、すでに4人に1人以上が高齢者。一方の宇都宮市を見てみると、2015年は23.0%、2016年は23.6%、2023年には26.0%となっており、全国平均よりも低くなっています。
しかし、2035年までには宇都宮市の高齢化率も30%を超える推定です。3人に1人以上が高齢者という超高齢社会の到来に向け、宇都宮市はさまざまな高齢化対策や、高齢者福祉サービスの充実などに目を向けています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
また近年、65歳以上の高齢者のいる世帯も増加。高齢者のみの世帯数も増加しており、2020年には4万6,282世帯との調査結果がでました。
そして宇都宮市には、ひとり暮らしの高齢者が増えているという特徴が。2020年には2万2,945世帯となっています。
こういった状況から、宇都宮市は高齢者の安否確認サービスなどを実施し、高齢者の孤立化や孤独死などを防いでいます。
介護サービスの利用促進に取り組んでいる
全国的に要介護認定者数は増加しており、2024年時点で要支援者数200万9,508人、要介護者数505万7,167人となっています。
宇都宮市の要介護認定者数も全国同様に増加しており、要支援者数7,945人、要介護者数1万5,952人となっています。
宇都宮市の65歳以上の第一被保険者数も、2015年は11万9,198人、2016年は12万2,645人、2017年は12万5,345人と増加。2025年には13万7,395人まで増えると推測されており、宇都宮市では、必要とする人に介護保険サービスが必ず届くようケアシステムを構築中です。
市内在住の高齢者へのアンケートによると、「介護や看護を受けながらでも、自宅で生活していきたい」と希望している人の割合は、回答者の60.5%と過半数を超え。実際、介護保険サービスなどを利用しながら自宅で暮らす高齢者は多く、宇都宮市は居宅サービスなどの充実と普及に努めています。
介護予防のための「健康ポイント事業」を導入
宇都宮市では介護予防のために体力向上や健康維持を重視。定期的な予防接種、がん検診などの健康診査の受診、生活習慣病チェックなどを推進。かかりつけ医制度の普及に努め、いつでも体の相談ができる環境を整備しています。
また、散歩や健康診査の受診など、健康につながる行動をすることでポイントがもらえる「健康ポイント事業」を導入。貯まったポイントは特典にかえられるため、楽しく継続できると好評のようです。
さらの健康づくり推進員・食生活改善推進員を養成し、地域ぐるみでの健康づくりを推進。老人クラブなどへ健康体操出前講座を行い、高齢者が気軽に体操ができるようにしています。
食事や口腔ケアについても重要視しており、歯科健康相談や歯科検診、歯周病検診を行い、未病のうちに治せるようにサポート。食育出前講座、歯と口腔の健康講座を開催し、食事への知識などを深めています。
引きこもりから運動機能が低下するケースも多いことを鑑みた高齢者の外出支援事業も実施。70歳以上の人を対象に、バス乗車券の交付などを行い、外出を促進しているほか、「みやシニアセンター」ではシニア講演会を開催し、シニアが自分自身を発信できる場所を設けています。
グループホームの増設を進め地域包括ケアを展開
宇都宮市の認知症高齢者数は2010年時点で8,297人でしたが、2015年には1万222人まで増加。今後も増え続けると予測されており、グループホームの増設などを通し、介護する家族へのサポートも重要視されています。
また一人暮らしの高齢者や、夫婦どちらも65歳以上という高齢夫婦だけの世帯が増えるなか、生活支援のニーズもますます大きくなっています。
宇都宮市はそういったニーズに応えるべく、安否確認につながる見守りや声かけ、ゴミ出しや買物の代行などを実施。主にボランティアグループが中心となって行っており、宇都宮市はその活動を支援しています。
また、持ち家(一戸建て)に住んでいる高齢者が多く、家の中の段差解消や手すり設置などの住宅改修を行い、自宅のバリアフリー化をサポート。介護予防や生きがいづくりのために、運動教室や教養講座を定期的に開催し、開催場所となる老人福祉センターの整備にも目を向けています。
これらの取り組みに加え、医療や介護、趣味活動、生活支援など、さまざまな角度から高齢者を包括的にサポートするため、人材育成や相互連携システムの構築にも力を入れています。
宇都宮市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
生活や身体の悩みに関するアンケートでは、高齢者の相談先は「医師や看護師」という人が最も多く、次いで地域包括支援センターや区役所となっていました。
生活やこころの悩み、金銭の悩みなど、高齢者が抱える問題はさまざま。そのため地域包括支援センターでは、介護に限らず、幅広く悩みを解決する総合相談を行っています。
宇都宮市は、高齢者の居場所や生きがいづくりのためにも、サロンや交流会、高齢者向け講座などの活動を支援していますが、アンケートでは活動自体に悩みを感じている人も多く、「活動に関する相談窓口の充実」を希望する高齢者が多いのが現状。
そのため宇都宮市は、サロンや交流会、高齢者向け講座の活動内容や人間関係について相談できる窓口も設置しています。
また、宇都宮市総合福祉センター内の日常生活自立支援事業「あすてらす・うつのみや」では、高齢者や障がいのある人を対象に、生活相談や支援を実施。金銭管理代行や福祉サービスの利用支援を行っています。
相談は無料ですが支援は有料で、公共料金や病院代の支払い代行、書類・印鑑などの管理に関する相談が可能です。
そして、宇都宮市から委託された宇都宮市社会福祉協議会が、経済的に困窮している人をサポートするために「生活困窮者自立相談支援事業」を実施。
「年金だけでは借金も返せない」「生活できない」「このままでは家賃も払えない」といった深刻な悩みを支援員が聞き、生活確保のためのアドバイスや支援を行っています。
このように、宇都宮市は高齢者が健康や生活について気軽に相談できる環境づくりに励んでいます。