高齢化対策とともに子育て支援にも力を入れるエリア

横浜市戸塚区では、横浜中心部などに通勤する住民も多かったため、交通インフラも問題なく発達しています。
東海道線や横須賀線、市営地下鉄といった鉄道はもちろんですが、横浜環状南線をはじめ幹線道路を利用しやすい位置にあります。
バスの本数も多く、年をとっても移動には不自由せずに暮らせる地域です。
横浜市の人口は何十年も前から変わらず増え続けていますが、戸塚区の場合は人口のピークを1980年代に迎えています。
1986年に戸塚区から泉区と栄区が分離して以後は、人口の増加はゆるやかに続いたものの、2012年に初めて減少に転じました。
かつて数多く建てられた宅地の住民も高齢化しています。
2010年の高齢化率は20.1%でしたが、2015年には24.1%、2023年には25.8%と急激に上昇しており、かなりの速さで高齢化が進行しています。
戸塚区では2023年の時点で、要介護認定者の数が1万人を超えています。
これは、横浜市の中でも特に多く、介護サービスの需要の高さを示しています。
同区には、介護サービス事業者がいくつか進出しており、専門性の高いサービスを受けられる有料老人ホームや高齢者向け住宅は苦労せずに見つけられます。
月額使用料の予算を20万円前後にすれば、選択肢は多くなると思われます。
戸塚区は、静けさと移動のしやすさを両立できるエリアです。
その点を活かしながら安心して老後を暮らせるように、計画を立てることが大事でしょう。
高齢化率は2023年に25.8%まで上昇
戸塚区は横浜市を構成する18行政区の1つで、横浜市の南西部に位置しており、横浜市の中で最も広い面積を誇ります。
川が多く農業も盛んで、オフィスや病院、福祉施設などが多いのが特徴です。
交通アクセスとしては、JR東海道本線と横須賀線が運行しています。
東海道本線は湘南新宿ラインや上野東京ラインに直通しています。
横須賀線も湘南新宿ライン経由で宇都宮線に直通です。
さらに、横浜市営地下鉄ブルーラインや、横浜環状道路の横浜環状南線も区内で運行しています。
横浜市営バスや神奈川中央交通バスなどの路線バスや、羽田空港・成田空港リムジンバスなどの高速バスも走行しており、交通アクセスが発達した地域です。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
しかし、0歳から14歳以下の年少人口や、15歳以上64歳以下の生産年齢人口は徐々に減少しています。
それに対し、65歳以上の高齢者人口は毎年増加中で、高齢化率も2023年には25.8%まで上昇しました。
同年の高齢化率の全国平均は29%を超えているので、戸塚区の高齢化率は低い方と言えますが、横浜市の平均が24.9%ですから、戸塚区は横浜市全体よりも高齢化率が高い地域といえます。
2025年に向けて64歳以下は緩やかに減る一方、高齢者は増加し、2025年には高齢化率が28.1%まで上昇する見込みです。
その後も高齢化率が上昇していくという予測が出ています。
戸塚区では「戸塚ハートプラン」を策定
戸塚区の2017年のデータをみると、介護保険の要支援・要介護認定者は1万4,138人です。
今後も要支援・要介護認定者は増え続けると予測されています。
増え続ける要支援・要介護認定者のために、戸塚区は介護保険サービスの充実に急いでいますし、認知症高齢者とその家族のためには、認知症サポーターの育成や、認知症カフェを開催中です。

サポートが必要な高齢者の増加にともない、一人暮らしの高齢者の孤立や高齢世帯の老老介護による疲弊が問題として浮き彫りになっています。
戸塚区では、「戸塚ハートプラン(戸塚区地域福祉保健計画)」を策定しており、さまざまな問題を地域全体で解決していくシステムを構築中です。
戸塚区は住民と区役所だけでなく、福祉団体、戸塚区社会福祉協議会、地域ケアプラザ(地域包括支援センターを含む)などの連携強化を推進しています。
「誰もが安心して心豊かに暮らすことのできる地域社会の実現」を作ろうとしています。
戸塚ハートプランと同時に、横浜市の横浜市地域福祉保健計画「横浜笑顔プラン」も推進するべく、福祉拠点「地域ケアプラザ」を各地域に設置しています。
現在約9ヵ所にある地域ケアプラザでは、ウォーキングや地域福祉マップづくり、活動紹介ガイドブックの作成など、さまざまな福祉活動を行っています。
少子高齢化は進んでいますが、戸塚区は小中学校も多く、子どもも比較的多い区ですので、子供から高齢者まで世代を超えた交流も推進中です。
年齢を超えて助け合える「心のバリアフリー」を目指しています。
介護予防のための「はまちゃん体操」普及を促進
戸塚区の要介護認定率は、2023年の段階で19.2%でした。同年の横浜市の平均は19.7%なので、比較的要介護認定率の低い区といえます。
しかし、高齢者の増加にともない、要支援・要介護認定者も増え続けると予測されており、一層の介護予防活動や健康づくりが必要となっています。

区内の「元気づくりステーション」では、体操やウォーキングなどさまざまな健康づくり活動を実施しています。
また高齢者に介護予防の重要性を理解してもらうため、区内各地で介護予防に関する講演会やイベントなどを開催しています。
また、戸塚区は各地域の介護予防活動を担う介護予防ボランティアを増やすべく、介護人材の育成も推進しています。
「はまちゃん体操ひろめたい」「ハマトレリーダー」「コグニサイズサポーター」を養成中です。
「はまちゃん体操」は、高齢者も気軽に体が動かせる介護予防のための体操です。
「ハマトレ」は横浜市が開発したトレーニングで、筋力低下の予防ができます。
「コグニサイズ」は国立長寿医療研究センターが開発した認知症の予防・改善につながる運動です。
戸塚区ではこの3つの体操を各地域で推進しています。
さらに、高齢者の外出や居場所作りをサポートするため、戸塚区内の空き店舗や地域ケアプラザなどの地域施設を活用し、子供から高齢者まで気軽に集まれるサロンを増やしています。
サロンでのコミュニケーションが認知症予防にもつながっているようです。
近年、戸塚区は高齢者を介護される側と決めつけず、むしろ社会の中で生き生きと活躍してもらうため、「シニアボランティアポイント」を導入しました。
ボランティア活動に応じてポイントがもらえる制度で、高齢者のボランティア意欲や社会参加意欲を増進しています。
横浜市戸塚区の高齢者相談
戸塚区では、高齢者の暮らしを守るため、権利擁護活動を実施しています。
戸塚区社会福祉協議会の中にある「あんしんセンター」は、高齢者が安心して日常生活が送れるように支援する機関で、虐待防止などの権利擁護事業や成年後見事業を実施中です。

金銭管理やサービスの手続きが厳しくなった人を対象に、サービスの利用援助や金銭管理の代行を行います。
また、地域包括支援センターでも、成年後見制度などの権利擁護活動を実施しています。
高齢者やその家族、親族、地域住民の相談に対応しています。
高齢者の虐待も全国的に増えているため、戸塚区でも高齢者虐待が起きない地域づくりを実施しています。
くわえて、高齢者がすぐに相談できる窓口を地域包括支援センターに設置しています。
相談窓口では、いつでも高齢者虐待に関する相談や通報を受け付けており、「近所のおじいちゃんの様子が明らかにおかしい」といった匿名通報も可能です。
高齢者やその家族の、多様化する相談に対応し、的確に問題を解決していくために、弁護士や司法書士、社会福祉士が「成年後見サポートネット」を定期的に開催しています。
区役所や地域包括支援センター(福祉プラザ)、戸塚区社会福祉協議会のスタッフを対象とした勉強会で、相談に対応するための技術向上につながっています。
ほかにも、戸塚区では戸塚区役所や地域包括支援センターを中心に、健康相談や介護予防相談など、いろいろな相談を実施中です。