街のいたるところで高齢者が自己実現を目指す杜の都、仙台
政令指定都市でもある仙台市は、東北地方最大の都市として有名ですが、宮城県内の約半数の人口を抱えているわりには、老人ホームが十分な数が用意されていません。
特に特別養護老人ホームなど人気の高い施設では、入居待ちとなっている高齢者が非常に多く、数年も待っている人も珍しくありません。
絶対数自体は多いため、充実した医療サービスなどのために高額な入居一時金や月額利用料が必要な有料老人ホーム、認知症の人でも安心して入居できるグループホームなど、種類自体はたくさんあります。
一方でコストパフォーマンスの高い施設は総じて高い人気。そのため、仙台市内の老人ホームへの入居を考えている人は、早めに資料請求などの行動に起こしたり、なるべく多くの施設の情報を入手したりといったことに気をつけると良いでしょう。
また、仙台市には高齢者が中心となって活躍している地域活動が多いという特徴もあります。
町内会をはじめ、民生委員や老人クラブ、ボランティア、NPOなどさまざまな場面・分野で活躍しており、高齢者自身が住みやすく、そして元気な街づくりに参加しているのです。
確かに、仙台市の老人ホームに入居しようと思ったら、ハードルが少し高めなのが現実ですが、上記のように高齢者が元気に生活している街であり、「杜の都」とも呼ばれる街、待ってでも住みたいと思わせてくれる魅力があるのも確かでしょう。
何と言っても、都心部周辺に広瀬川や青葉山といった自然があふれているだけでなく、中心部にも街路樹などの緑がたくさん。
それに加え、地下鉄やバスなど交通網も整備されているため、自然と都市機能とか上手く融合した優しさがあります。
東北地方にしては冬の寒さは厳しくなく、また夏は海風の影響で猛暑日になることがほとんどありません。
高齢者が生活するにあたって好条件は整っており、入居待ちもある程度考慮したうえで、仙台市の老人ホームへの入居を検討してみてはいかがでしょうか。
独居高齢者と高齢世帯が大幅に増加している
仙台市の高齢者(65歳以上)人口は毎年5,000人~1万人ほど増加しています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
仙台市の高齢化率は2000年時点で14.6%でしたが、2015年には22.6%まで上昇。2023年時点で24.8%を記録しています。
世帯状況を見てみると、2023年時には高齢単独世帯が4万7,615世帯、高齢夫婦世帯が4万8,502世帯となっており、高齢者以外の方と同居している世帯に比べて、高齢者の一人暮らしの世帯および高齢世帯の増加幅が非常に大きいことがわかります。
施設サービスの利用者数は緩やかに増えている
仙台市の介護サービスの利用者数は、居宅サービスや施設サービス、そして地域密着型サービスそれぞれが増加傾向にあります。
その特徴は、施設サービスの利用者数が緩やかな増加を示しているのに対して、居宅サービスと地域密着型サービスの利用者数が高い増加傾向にあること。
2010年度は居宅サービスの利用者数が2万2,151人、施設サービスの利用者数が5,012人、地域密着型サービスが1,875人でしたが、2015年度においては、居宅サービスの利用者数が2万8,825人、施設サービスの利用者数が5,570人、地域密着型サービスの利用者数が3,063人にまで増加。
地域密着型サービスについては、2016年度の介護保険制度改正によって、利用定員が18人以下の小規模通所介護事業所が地域密着型サービスに移行されました。
その影響もあり、2024年度においては地域密着型サービス利用者数が急増。居宅サービス利用者数が2万2,151人、地域密着型サービスの利用者数が7,072人、施設サービス利用者数が6,855人となりました。
地域の介護予防に専門職を派遣
仙台市が主催・支援する介護予防サービスは非常に充実。
介護保険の「要支援」の認定を受けている人は、介護保険の介護予防サービス、「総合事業」における訪問型サービス、通所型サービスを受けることができます。
また、要支援の認定を受けていない人は、65歳以上であれば誰でも参加できる「一般介護予防事業」のサービスを利用することが可能。
一般介護予防事業のサービスの利用に当たっては、仙台市では体の健康状態を測定する「豊齢力チェックリスト」を70歳、75歳、80歳の方に郵送し、介護予防の取り組みが必要な方にサービス利用を勧める、という形をとっています。
栄養講座、地域包括支援センターが主催する介護予防教室の開催をはじめ、地域内で活動する自主的な運動グループの立ち上げの支援、介護予防サポーターの養成とそのスキルアップ研修など、さまざまな取り組みが市によって実施されています。
また、地域で活動する高齢者同士の集まり・サロンで介護予防に取り組んでもらうべく、専門職を派遣して運動の相談や指導をする、ということも行われています。
市で行われている介護予防事業について詳しく知りたい場合は、各区内にある最寄りの地域包括支援センター、もしくは各区役所の保健福祉センター障害高齢課高齢者支援係(各区共通)で相談できます。
仙台市は地域包括支援センターの質量が充実している
仙台市では、高齢者が住み慣れた土地・在宅で生活し続けることができるように、医療、介護、住まい、生活支援・介護予防の包括的な提供を行う「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
市の健康福祉局には「地域包括ケア推進課」が設けられ、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年に向けて、市を挙げて企画、調整に注力。市内の中学校区を日常生活圏域と定め、地域ごとに地域包括ケアシステムの実現を目指しています。
各分野の取り組み内容としては、「医療」ではかかりつけ医を確保しやすい環境、及び日常の医療を受診しやすい環境の整備、「介護」では訪問介護、通所介護、小規模多機能型居宅介護などの在宅系サービス、及び特養や老健、グループホームなどの施設・居住系サービスの充実化を図っています。
また、「住まい」ではサービス付き高齢者向け住宅など高齢者の住み替え先となる施設の拡充、「生活支援・介護予防」では民生委員や児童委員が待機。
各地区の社会福祉協議会や町内会、老人クラブやボランティア、NPOなどの社会資源の活用・ネットワーク化などが行われています。
そしてこの地域包括ケアシステムの要となるのが地域包括支援センター。仙台市はその質量ともに非常に充実していて、例えば青葉区だと区内だけで14ヵ所、宮城野区では8ヵ所も設置されています。
高齢者福祉のよろず相談所とも言える施設で、市で行われている介護予防教室に参加したい場合、あるいは在宅介護生活の中で生じた場合など、高齢者福祉にまつわるあらゆる相談に応じてくれます。
仙台市運営適正化委員会とは?
宮城県では社会福祉法83条に基づき、「運営適正化委員会」が設置されています。
福祉サービス利用援助事業の運営適正化、そして福祉サービスに対する利用者からの苦情を適切に解決するのが組織としての目的です。
仙台市内で福祉サービスを利用して、そのサービス内容等に対して苦情を申し出る場合、まずサービスを提供する事業者と話し合いの場を設けて解決を目指すことになります。
しかし実際には、必ずしもそれで円満解決するとは限りません。事業者との話し合いでの解決が難しい場合、運営適正化委員会の方に苦情の申し立てをすると、第三者の専門家の助力のもと、適正な解決への道を探ることができます。
運営適正化委員会は、社会福祉に関する学識・経験を有する人、法律・財務に関する学識を有する人、医療に関する学識を有する人を中心に16名から構成されます。
内訳は福祉サービス利用援助事業の運営適正化のための助言、調整を行う委員が9名(運営監視合議体)、福祉サービスに対する利用者からの苦情の解決のための相談、助言、調査、あっせんを行うための委員が7名です。
都道府県の社会福祉協議会内に事務局が置かれていますが、公正、中立を保つために、運営適正化委員会事務局は社会福祉協議会事務局とは別の組織として独立して運営されています。
苦情の相談は、福祉サービスを利用している本人もしくは家族、あるいは代理人が行うことができます。また本人のことをよく知っている第三者(近所の人、友人・知人など)による相談も可能です。