まずは胃ろうとはなにかを理解しましょう
誰しも高齢になると、噛む力や飲み込む力が低下し、口から食事が摂れなくなることがあります。
特に、飲み込む力の低下は誤嚥性肺炎を引き起こすことが懸念されます。
そのような事態を避けるために、口からの食事が難しい人に対して行うのが「胃ろう」です。
胃ろうとは腹部に小さな穴を開け、胃まで通したチューブから栄養を取り入れる栄養摂取方法です。
胃ろうの造設手術のことをPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼び、15分~30分もあれば終了するため、身体への負担は大きくないと言われています。
胃ろうのメリット・デメリットを把握しましょう
胃ろうのメリット
チューブやカテーテルなどを使って胃や腸に栄養を直接注入する経管栄養には、胃ろうのほかに鼻からチューブを入れる「経鼻経管」がありますが、胃ろうは経鼻経管よりも身体への負担や痛みが少ないメリットがあります。
誤嚥性肺炎は命にかかわりますが、胃ろうにすることで、そのリスクを最低限まで抑えたうえで栄養摂取できることは大きなメリットに挙げられます。
さらに、腹部にチューブを通しているので、再び自らの口で食事を摂れるように訓練を継続することが可能です。
外出においても、服を着ればチューブなどが見えなくなるので、特に問題なく外出できます。
胃ろうのデメリット
胃ろうの周りの皮膚がただれたり、注入した栄養剤が逆流してしまったり、栄養剤の購入やカテーテルの取り換えなどで出費がかさみ負担になってしまうことなどがデメリットとして挙げられます。
老人ホームへに入居にあたっては、胃ろうになると、入居したい施設に対応できるスタッフがいなければ施設側は受け入れができません。
胃ろうでも老人ホームに入居できる
一昔前まで、胃ろうケアは看護師だけに限られた医療行為でした。
そのため、胃ろうの方は看護師常駐の老人ホームでなければ入居できない、というのが常識でしたが今はそうではありません。
背景としては看護師常駐の老人ホームが増加したこと、2012年の介護保険法の改正によって研修を受ければ介護職員でも胃ろうの方への対応が一部許可されたことが挙げられます。
ただ、胃ろうを理由に入所を断られるケースはかなり少なくなりましが、当然のことながらすべての老人ホームで受け入れられるというわけではありません。
介護職員への胃ろうケア研修が行われていない施設もまだまだあり、看護師が常駐していても24時間体制でない場合は入居を断られる可能性があります。
胃ろうの方の老人ホーム探しは住み心地や立地の良さだけではなく、事前にしっかりと受け入れ態勢を確認することが大切です。
介護職員でも経管栄養(胃ろう)への対応ができるようになった
2012年に施行された「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」によって、看護師以外でも喀痰吸引等研修を受けた介護職員は、胃ろうを含めた特定の医療行為が許可されました。
特定の医療行為とは、喀痰吸引(口腔内・気管カニューレ内部・鼻腔内)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)の5つです。
介護福祉士は、介護福祉士養成施設にて「医療的ケア」を受講し、実務研修を修了していれば経管栄養の業務を行うことができます。
ただし、介護職員が経管栄養の研修を受けていても、所属する法人が「登録事業者」として各都道府県に登録されていなければなりません。
胃ろうに対応してくれる老人ホームを探すときのポイント
利用者の体を清潔に保つ意識を十分に持っている
胃ろうをしていると入浴が制限されるイメージがありますが、そんなことはありません。
特別な保護をしなくても普通に入浴できます。
胃ろうは常に清潔にしておく必要があるため、入浴や清拭が丁寧におこなわれているかは必ずチェックしましょう。
口腔ケアを徹底してくれる
唾液の分泌は、口の中を清潔に保つうえで重要な役割を担っています。
しかし、胃ろうによって栄養摂取することで自ずと唾液の分泌量が落ちてしまいます。
口腔ケアを怠ると、唾液の分泌量が減って口の中に細菌が繁殖しやすい状況を作り、痰などと一緒に最近を飲み込むことで肺炎などを引き起こしてしまうかもしれません。
胃ろうでも口腔ケアを徹底してくれる施設を選ぶようにしましょう。
栄養剤をしっかり選んでいる
胃ろうで使われる栄養剤は大きく分けて2種類。タンパク質が分解された状態で含まれている「消化態栄養剤」と分解前のタンパク質がそのまま含まれる「半消化態栄養剤」です。
胃ろう造設者の体の消化能力によって、どの栄養剤を投与するかを、医師や看護師としっかり連携をとりながら選択してくれる施設を選びましょう。