親を施設に入れる罪悪感を感じる必要はない

かつては親の介護を子が担うというのが常識だった日本ですが、これが現代社会ではとても難しいものになっています。
昔のように大家族であればみんなで協力し合うこともできましたが、核家族化が進んだ現代では、介護を担う世代の精神的・肉体的・経済的負担は計り知れません。
まだまだ「親の介護を子が担う」という風潮は強く残っており、老人ホームに預けるということを躊躇する人も多いのが実情ではないでしょうか。
施設に預けた方がプロの介護を受けられるとわかっていても、後悔や罪悪感に苛まれてしまうのです。
しかし、介護疲れが限界に達してしまうと、愛情が憎しみに変わり、親を憎むようになってしまったり、親も「無理やり介護をさせている」という負い目を感じるようになるかもしれません。
そのような状況に陥る前に施設介護へ移行することは、決して悪いことではありません。
希望条件に合う老人ホームを探す介護保険は社会全体で介護をするために生まれた制度
2000年に始まった介護保険制度は、介護を社会全体で担うために生まれた制度です。
そのため、要介護状態になればデイサービスや訪問介護などを利用し、在宅での介護が難しいのであれば老人ホームに預けて良いのです。
そのことに罪悪感を抱く必要はまったくありません。
また、介護は長期間続くので、はじめは在宅で対応できていたことも、本人や家族の状況によって難しくなることは珍しくありません。
自立状態の人が歳を重ねれば車椅子になり、次第に寝たきりになるというように、状態が変われば介護すべきことが変わるのは当然で、その対応のひとつとして老人ホームへの入居があります。
そのときの状況に合わせて介護サービスを選択し、適切なタイミングで在宅介護から施設介護へと移行することは決して悪いことではありません。
社会全体で介護する仕組みが進んでいる
現在、厚生労働省の主導で「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。
地域包括ケアシステムの目的は、自治体ごとの特性やニーズに合わせて、できるかぎり高齢者が住み慣れた土地を離れることなく人生の最期を迎えられるサポートをすることです。
超高齢化社会の日本では、社会全体で高齢者を介護していくという仕組みの整備が進んでいることを覚えておきましょう。
職員にも罪悪感について相談しておく
罪悪感を抱いた場合、入居先となる老人ホームのスタッフにその気持ちを遠慮なく打ち明けましょう。
施設のスタッフは、介護をすることの大変さを十分に理解しているので、しっかりと相談に乗ってくれます。
老人ホームの入居後に受けるサービスも、介護保険サービスの一種です。れっきとした公的サービスであり、利用するにあたって罪悪感を持つ必要はありません。
しかし、どうしても罪悪感から逃れられず、気持ちが落ち込むときは、一人で抱え込むことは避けましょう。近くに相談できる親族・家族がいない場合は老人ホーム所属のケアマネージャーや生活相談員に話を聞いてもらうことで、心を落ち着かせることができます。
介護離職してしまう前に施設入居を検討
総務省「平成29年就業構造基本調査結果」によると、介護をしている約628万人のうち、約346人が働きながら介護をしています。
ここで注目したいのが、過去1年間の介護や看護を理由とした離職者数です。
介護や看護を理由に離職した人は年間約9.9万人にものぼります。
介護離職をしないために早めから施設入居を検討することが大切です。
介護離職をしても負担は増える
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(厚生労働省委託調査)「平成24(2012)年度 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」によると、経済面での負担が増えたと回答している人が74.9%、肉体面に関しては56.6%、精神面に関しては64.9%となっています。
このように、介護離職をすることで心身への負担が和らぐと考えがちですが、実際には負担が増したと感じる方が多いのです。
そこで、政府は「トモニンマーク」なるものを導入しました。仕事、介護を両立できる職場環境の整備に取り組む企業にその証を与えようというものです。
近年では国をあげて、仕事と介護が両立できるように、社会や企業の在り方を見直す流れになっています。
介護疲れや介護うつにならないために
介護うつは正式な病名ではありませんが介護を理由に発症する「うつ」を指しており、食欲不振や睡眠障害、倦怠感、思考障害などさまざまな症状が現れます。
また、介護うつになる方は責任感が強く、まじめで几帳面、完璧主義であることが特徴です。
原因は精神的なストレスや肉体的な負担、孤独感などで、介護離職によってさらに介護に時間や労力を費やすことで発症する場合もあります。
介護の日々が続くと、ストレスが重なって介護うつになる心配があります。
介護疲れや介護うつを防ぐために、早めに施設入居を検討しましょう。
介護うつになっていないかセルフチェック
介護うつになっていないかセルフチェックしましょう。
次の項目に当てはまる数が多ければ多いほど、介護うつの可能性があります。
なかなか自分では介護疲れや介護うつに気づくことができません。無理をしない、プロに任せる介護に向けて動き出しましょう。
- 緊張しないような場面でも緊張してしまう
- 人と会うのが億劫に感じる
- 特に理由なく無性にイライラする
- 自信を失い悲観的になる
- 趣味や楽しいはずのことを楽しめない
- 声が小さくなったと言われる
- 好みが変わった
- 食欲が出ない
- 食べ過ぎてしまう
- 記憶力が悪くなった
- 物事の判断ができなくなった
- 腹痛や下痢など胃腸の不調やめまい、動悸などが起こる
- なかなか寝つけなかったり夜間や早朝に目覚めたりする
人の手を借りるのは悪いことではない
親にとっての究極の幸せは、いくつになっても我が子が笑顔で元気に暮らしていることです。
親の介護は、自分の人生を大切にしながらできる範囲で取り組みましょう。
介護の形がどのようなものであろうと、その気持ちはきっと伝わるはずです。罪悪感を抱く必要などありません。
希望条件に合う施設を探すおすすめの施設
老人ホームは、それぞれ種類ごとに特徴があります。ここではみんなの介護がおすすめする施設を紹介します。
介護付きは24時間の介護が必要な方向け
介護付き有料老人ホームは、24時間体制で手厚い介護サービスを提供する入居施設です。
施設ではリハビリやレクリエーションが行われるほか、医療ケアや看取りに対応している施設も多いです。
入居対象は65歳以上で、「介護専用型」は要介護認定を受けている方、「混合型」は自立~要介護状態の方まで幅広く受け入れています。
介護付き有料老人ホームの費用の目安は以下の通りです。
入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|
30万円 | 20.4万円 |
平均値とは:データの合計値をデータの個数で割った値です。極端に大きい値や小さい値の影響を受けやすいという特徴があります。
中央値とは:データを大きい順・小さい順に並べたときに、中央に来る値です。平均値のように、極端な値の影響を受けにくいという特徴があります。
なお、介護サービス費は要介護度に応じて毎月定額で支払います。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す住宅型は必要な分の介護サービスを利用
住宅型有料老人ホームは、自立~要介護1・2の方を中心に受け入れている施設です。
60歳以上が入居条件として設けられていますが、施設によっては60歳以下でも入居が可能です。
施設では食事の提供や洗濯、清掃などの生活援助を受けながら、レクリエーションやイベントなどを楽しみます。
住宅型有料老人ホームの費用の目安は以下の通りです。
入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|
5.6万円 | 12.4万円 |
平均値とは:データの合計値をデータの個数で割った値です。極端に大きい値や小さい値の影響を受けやすいという特徴があります。
中央値とは:データを大きい順・小さい順に並べたときに、中央に来る値です。平均値のように、極端な値の影響を受けにくいという特徴があります。
介護が必要になったときは、外部のサービスを利用するため、自分の好きなサービスを利用することができます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探すグループホームは認知症の方向けの施設
グループホームは、認知症ケアを専門としている施設 です。
専門スタッフのサポートのもと、共同生活を通して地域で落ち着いた暮らしをします。
なお入居するには、認知症の診断を受けていて、要介護認定で要支援2以上であり、施設がある市区町村に住民票があることが条件です。
認知症の方を対象としている施設のため、施設のスタッフも認知症ケアに関しての知識が豊富で、安心して生活することができます。
グループホームの費用の目安は以下の通りです。
入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|
4万円 | 12.7万円 |
平均値とは:データの合計値をデータの個数で割った値です。極端に大きい値や小さい値の影響を受けやすいという特徴があります。
中央値とは:データを大きい順・小さい順に並べたときに、中央に来る値です。平均値のように、極端な値の影響を受けにくいという特徴があります。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す
親を施設に入れることのメリット
続いて、親が施設に入居するとどのようなメリットがあるか解説していきます。
介護者の負担が減る
在宅介護は要介護者本人の心身状態によって、ときには24時間つきっきりの介護になることも少なくありません。
例えば常時介護が必要な場合、仕事と介護の両立が難しくなって「介護離職」をしたり、自分の家庭やプライベートの時間も取れなくなったりします。
また、被介護者が認知症の場合には段々と認知機能が低下し、コミュニケーションを取るのが難しくなり、介護する家族の精神的な負担も大きくなります。
介護者である家族の負担を減らすため、施設に入れることで介護者にも時間や気持ちの余裕が生まれます。
症状の改善が期待できる
「老人ホームに入居すると身体状況が悪化する」といわれますが、それは誤解です。
入居施設では日頃からレクリエーションやリハビリが行われており、身体状況の改善が期待できます。
また、在宅介護の場合はデイサービスやデイリハなどに通う必要がありましたが、施設に入居すれば毎日継続的にリハビリを受けられるようになります。
プロから介護を受けることができる
施設には介護福祉士をはじめ介護のプロが専門的なケアを行っているため、本人の心身状態に合わせた対応をしてもらえます。
とくに認知症の介護は、家族では対応に困ることも多いですが、認知症のケアに精通したプロに任せることで入居者本人も快適に過ごすことができます。
さらに施設によっては、たんの吸引や胃ろうの管理、床ずれ予防といった専門的な医療ケアにもしっかりと対応してくれるため安心です。
親もプロから介護を受けることで負担が減る
在宅介護を受ける要介護者のなかには「家族に負担をかけたくない」という思いから、自分の家族であっても十分に要望を伝えられない人も少なくありません。
しかし施設に入居することで、介護スタッフには介助やサービスについての要望を好きなときに伝えられるようになったという事例もあります。
施設入居に罪悪感を感じるのは家族の側で、親自身は施設入居を望んでいる場合もあるので、今後の介護について本人としっかり話し合ってみることが大切です。
希望のエリアから老人ホームを探す親を施設に入れた後に家族ができること
最後に、親が施設に入居したあとに家族ができることを解説していきます。
施設のスタッフとも良い関係性を築く
施設のスタッフと良い関係を築いておくと、入居した後の本人の様子を細かく把握することができます。
親の心身状態や性格で気になることがあれば、スタッフに伝えておくと施設内でも気にかけてくれます。
ほかにも、もし親が施設の介護やサービスに不満を感じていることがあれば、その不満を施設にも伝えやすくなります。
面会に頻繁に行く
施設で暮らす本人が安心するためにも、定期的に面会に訪れましょう。
入居した直後は、できるだけ機会を作って頻繁に施設に訪れることが大切です。
入居してから最初の3ヵ月は週1回以上を目安に施設を訪れましょう。
親と老人ホームで会うときは、離れて暮らしていても毎日気にかけていることを言葉と態度でしっかりと示すことが大切です。
入居した親に元気な姿を見せて、家族のつながりを感じてもらうことが、入居後における子どもの役割といえます。
Q. 老人ホームへの面会頻度はどれくらいが良い?面会時の6つのポイントを解説
気分転換に協力する
面会などで施設に訪れたときには、定期的に外に連れ出してあげましょう。
施設では団体行動が基本なので、一人では思うように外出ができないこともあります。
ときどき外出して、お茶をしたり買いものをしたりしてリフレッシュする時間を作ってあげると良いでしょう。
入居者とその家族が一緒に参加するイベント・アクティビティを開催している施設も多いので、機会があれば積極的に参加しましょう。