介護施設を変えたい場合の手順

介護施設を変えたい場合、どのような手順で進めれば良いのでしょうか。
住み替えをスムーズに行う、おおよその流れをイメージしておくことが大切です。
今回は、介護施設を変えたいときの手順と合わせて次に住む老人ホームの探し方も解説します。
1.施設やケアマネージャーに相談する
前提として、老人ホームの住み替えは本人と家族の双方に大きな負担がかかります。
理由にもよりますが、すぐに退去を検討するのではなくまずは施設のケアマネジャーや生活相談員、施設長に悩みを相談しましょう。
もし人間関係で悩み住み替えを検討している場合であれば、トラブルが起きた相手となるべく顔を合わせないように調整してもらえます。
また、老人ホームの運営会社が相談窓口を設けている場合もあります。
まずは周りの人に相談してみることで、住み替えをしなくて済むかもしれません。
2.新しい介護施設を探す
介護施設を変えようと決めたら、まず新しい介護施設を探しましょう。
その際に重要なことは住み替えを決めた理由をまとめておくことです。
新しい施設に入居するときに同じ理由で介護施設を変えることがないように、自分がどのような施設に入居したいのかまとめておくことが重要です。
主に介護施設を変えたい理由として挙げられるのが以下の項目です。
- 要介護度が変わった
- もっと設備やサービスの良い施設が良い
- 離れて暮らす家族のいる地域に移りたい
- 人間関係のトラブルが起きた
次に施設に入居するときはぴったりの施設に入居できるよう、この記事では施設を変えたい理由別におすすめの施設を紹介していますので、ぜひご覧ください。
3.退去手続きを行う
新しく入居したい施設が決まったら、続いて退去手続きを行いましょう。
退去の手続きは、各老人ホームが設けている規定に基づいて行われることが基本です。
そのため、どのような手続きが必要なのか、退去にかかる費用はどれくらいかといった内容を施設に確認しましょう。
なお、退去の手続きは、退去希望日の1ヵ月前までに退去希望の申し出を行って、その後、清算・退去手続きに入ることが一般的です。
希望条件から施設を探す介護施設を変えたい理由別の対応方法
続いて、介護施設を変えたい理由別の対応方法を解説していきます。
月々の費用を払い続けられない
「介護保険適用外のサービス利用が多くなり、金銭的負担が増えてしまった」「費用を負担していた家族の経済状況が変わってしまった」などの理由で月々の利用料金を支払えなくなった場合、住み替えの必要性が出てきます。
このような場合は、費用が安い地方の老人ホームへの住み替えも検討しましょう。
身体状況が悪化し、手厚い介護が必要になってきた場合は介護サービスの利用料の負担が増えます。
その場合は、毎月要介護度に応じて介護サービス費が定額の、介護付き有料老人ホームがおすすめです。
毎月かかる費用が定額になるので、介護費用の見通しが立ちやすくなります。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
予算に合った施設を探す身体状況が悪化した
「持病が悪化した」「合併症により新たな病気を発症した」「老化が進んで介護度が上がった」場合は、施設の職員や医療設備では対応が難しくなってしまうことがあります。
その場合、必要な医療ケアに対応できる施設や医療機関に転居しなければなりません。
介護付き有料老人ホームは、24時間365日体制で手厚い介護サービスが受けられます。
施設によっては、看護師が24時間常駐している、医療機関と連携しているといったところも多いので安心です。
看護・医療体制から施設を探す設備が充実していなかった
入居前に見学や体験入居を行っていても、実際に入居してからではないとわからないこともあります。
「設備やサービスが考えていたものと異なる」「思っていた通りの生活を送れない」というとき、より満足度の高い施設に住み替えるために、退去を選択する入居者も多いようです。
次の施設を選ぶときには、「みんなの介護」をぜひご利用ください。
サイト内では、施設のパノラマ写真や居室内の写真が豊富に掲載されているため、入居後の生活をより具体的にイメージすることができます。
「みんなの介護」は以下のボタンからご利用いただけます。
こだわり条件から施設を探す立地条件が悪かった
面会や施設との相談をはじめ、体調不良やトラブル時には家族が施設を訪れて対応しなければいけないケースもあります。
体調不良やトラブルの際は、すぐに施設に出向くのが望ましいため、家族の住む場所と施設までのアクセスが悪いと、家族にとっても負担になってしまいます。
その場合、「もっと訪問しやすい場所にある施設に転居したい」という理由で退去する場合もあるので、家族の訪問のしやすさは老人ホーム探しの重要ポイントのひとつとして検討することをおすすめします。
また、公共交通機関を利用する場合は最寄り駅やバス停からの距離やアクセスのしやすさ、車を利用するときは駐車場の有無やルートの行きやすさなども確認しておくことが大切です。
希望の地域から施設を探すほかの入居者とのトラブル
老人ホームでは共同スペースやイベント、レクリエーションでほかの入居者と接することも多いので、入居者同士のトラブルが起きる可能性はあります。
高齢になると耳が遠くなり、生活音や声が自然と大きくなってしまうため騒音などのトラブルは起きやすいです。
とくに、ユニットケアを取り入れている施設では常に入居者同士が近くにいるので、ほかの入居者との関係性を理由に住み替えせざるを得ない方もいます。
入居者同士のトラブルが起きた場合は、施設のスタッフに相談することで解決することもあるので、困ったことがあればすぐにスタッフに相談しましょう。
希望条件から施設を探す
住み替えのときに気を付けるポイント
続いて、施設を住み替える場合に気を付けるべきポイントを解説します。
入居一時金の返還
施設を住み替える場合に気を付けるべきポイントは、入居時に支払った入居一時金の返還について確認しておくことです。
退去時のトラブルとして最も多いのが、この入居一時金の返還金を巡る問題です。
入居してから、「入居前に思っていた施設と違っていた」「入居後すぐに体調を崩して、退去せざるを得なくなった」などの理由で退去・解約をする場合、契約から90日以内であれば「クーリングオフ」が適用され、入居一時金は全額返還されます。
しかし、90日を超える日数を過ごした場合は、所定の計算に基づいて返還金が返還されることになります。
そもそも有料老人ホームの入居一時金は、「施設を終身利用できる権利を購入すること」と「家賃の前払い」という2つの意味を持ち、施設ごとに定められた方法によって入居後に償却されていきます。
施設を変える際には、入居一時金はいくら返還されるのか確認しておきましょう。
返還金の計算方法
続いて、実際に返還金がどのくらいになるのか計算してみましょう。
その場合にチェックしなければならないのが、「初期償却金」および「償却期間」です。
「初期償却」とは、入居時に直ちに償却される金額で、入居一時金の「20%」「30%」などとあらかじめ割合が定められています。
例えば、入居一時金が1,000万円で初期償却が20%であれば、入居時に200万円が初期償却されることになるわけです。
入居一時金から初期償却売金を差し引いた金額を「償却期間」(月単位)で割ると、1ヵ月あたりの償却額(前払い家賃額)がわかります。
返還金の例
2つの老人ホームを例にみていきましょう。共通条件は以下になります。
- 入居一時金:1,000万円
- 初期償却金:20%(200万円)
- 入居期間:18ヵ月
各施設の入居一時金の返還金は以下になります。
老人ホームA | (36ヵ月均等)老人ホームB | (96ヵ月均等)
---|---|
(1,000万円-200万円)/36ヵ月×(36ヵ月-18ヵ月)=400万円 | (1,000万円-200万円)/96ヵ月×(96ヵ月×-18ヵ月)=650万円 |
短期間のうちに退去する場合、償却期間の長い老人ホームの方が月当たりの償却金額が少ないので、入居一時金の返還額は老人ホームBの方が多くなります。
ただ、施設によってはもう少し複雑な計算方法を採用している場合もあるので、契約時にあらかじめ説明を受けておきましょう。
原状回復費用が発生する可能性もある
退去時には、自然劣化以外の居室の損傷については退去時に原状回復するようにと契約書に書かれていることがほとんどです。
例えば、車椅子で壁を傷つけてしまったり、床に水をこぼして変色させてしまったり、タンスを動かそうとして壁紙を破ってしまったりした場合は、入居者負担での原状回復が必要なケースに当てはまります。
退去前に、原状回復費用が発生するかどうか施設側に確認しておきましょう。
住み替えがデメリットになることもある
ほかの老人ホームに移ることで問題が完全に解決するとは言い切れないため、住み替えが本人にとって良い結果をもたらすとは限りません。
さらには、転居先で新たな問題に直面する恐れだってあります。
施設が変わると職員も変わり、介護方針や運営方針も大きく異なるので、入居者はその変化に適応しなければなりません。
そのため、本人に与える心身上の負担を考慮すると、できれば安易に退去・住み替えを行うことは避けるべきです。
家族から本人に直接「住み替えない方が良い」と伝えにくい場合、まずはいつもお世話になっている職員に相談し、本人が本質的にどのようなことに悩んでいるのかを把握する努力をしましょう。
それでも本人の意向を尊重し、住み替えを決断するのであれば、本人が新たな環境で楽しく生活が送れるように全力でサポートすることが大切です。
老人ホーム入居に関する相談は以下の「みんなの介護入居相談センター」をご利用ください。
次に住む老人ホームの探し方
転居先の施設を探す場合に何よりも重視すべきなのは、退去に至った原因を解消できるかどうかがポイントです。
本人がどうしても譲れない希望条件や、入居にあたって不安に思うことなどをしっかりと確認し、重視すべき事項を明確にしたうえで施設探しを行いましょう。
この項目では次に住む老人ホームの探し方を解説していきます。
施設の雰囲気を確認する
老人ホームを探すとき、施設見学は必ず行いましょう。
施設の公式ホームページやパンフレットだけでは、雰囲気や相性はなかなか判断できません。
見学の際には、施設の雰囲気やスタッフの様子、入居者の表情を確認しておきましょう。
もし気になることがあれば、細かなことでもスタッフに質問しましょう。
見学前に気になる項目を一覧にまとめておくとスムーズに施設見学を行うことができます。
身体状況が悪化した際の対応を確認する
施設探しの際には、将来身体状況が悪化したときに施設がどのような対応をしてくれるのか確認しましょう。
施設によっては、要介護度が高くなった場合は退去を求められるケースもあるので注意が必要です。
また「終の棲家」として終身利用を希望する場合は、医療ケアや看取りにまで対応しているかも確認が必要です。
このほか認知症を発症している場合は、症状の進行度によっては入居し続けられない施設もありますので、施設に問い合わせてみましょう。
老人ホーム紹介サービスを利用する
住み替えが必要になったとき、新しい施設を考えているときは、ぜひ「みんなの介護入居相談センター」をご利用ください。
「みんなの介護」なら、50,000件以上の掲載施設のなかから希望条件に合わせた施設を紹介できます。
なお、施設探しだけではなく見学日の日程調整や入居までのサポートも行っているのでスムーズに施設入居ができます。
相談料は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。
想定外の住み替えを防ぐために退去理由を知っておく
最後に、想定外の住み替えを防ぐために老人ホームの退去理由で多い項目を紹介していきます。
介護付き有料老人ホームの退去理由

介護付き有料老人ホームをやむなく退去する場合に挙げられる理由として多いのは、「医療的ケアニーズの高まり」です。
高度な医療ケアが必要になったにもかかわらず、入居している老人ホームでは必要な処置や十分なケアを受けることができないという理由で住み替えを決めたケースが多いようです。
看護師の常駐体制をチェックしておく

「医療的ケアニーズの高まり」を退去理由に答えた人の割合は、老人ホームに看護師が常駐する体制によって異なります。
老人ホームを「24時間常駐の施設」と「日中のみ常駐、または訪問看護等と連携している施設」「看護師の常駐なし」の3つに分けて比べてみました。
すると「医療的ケアニーズの高まり」を退去理由と答えた割合は「24時間常駐」の施設が46.2%、「日中のみ、または連携」が64.2%、「該当しない」が74.1%と、数値に大きな違いがありました。
看護師が24時間常駐しているなど、医療ケアが手厚い施設を選ぶことで、将来的に医療ケアの問題でやむなく退去するリスクは減るといえます。
看護師24時間常駐の施設を探す住宅型有料老人ホームとサ高住の退去理由

介護付き有料老人ホームと同様に、「住宅型有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」のどちらも「医療的ケアニーズの高まり」と「要介護状態の進行による身体状況の悪化」が上位の退去理由として挙げられました。
なお、「認知症の進行による周辺症状の悪化」が「経済的な理由」を上回っている点が介護付き有料老人ホームとは異なっています。
医療依存度が上がった時のことを想定する
住宅型有料老人ホームについてはさらに詳しい調査で、医療機関との連携体制の状況別にアンケートをとっています。
- 在宅療養支援診療所・病院と協力・連携体制がある
- 上記以外の医療機関と協力・連携体制がある
- 連携をとっていない
以上の3つの状況に分けてみると、連携をとっていない施設では「認知症の進行による周辺症状の悪化」という理由で退去した方が47.4%と飛び抜けて高いことがわかりました。
医療依存度が上がったときのことを想定して、施設探しをすると住み替えの必要がなくて安心です。
医療体制が手厚い施設を探す