見学時の4つの質問ポイント
ほとんどの老人ホームは、入居先を探している人向けにパンフレットを作成・配布しています。しかしそこに掲載されているのは基本的な人員・設備情報だけで、施設の雰囲気や実際の職員の様子などといった詳しい情報は分かりません。
そこで必要になってくるのが、実際に現地に行って施設内を見て回る「見学」です。
見学では施設職員に質問できるので、疑問点や確認したい点があれば遠慮せずに尋ねましょう。
以下からは、介護施設見学の4つの質問ポイントについて詳しく解説します。
建物
ホームまでのアクセス、周辺環境
自宅や最寄り駅からどれだけ離れているのか、車でのアクセスがしやすいかをチェックしましょう。パンフレットや施設のWebサイトには地図が掲載されていますが、実際に現地で距離感や道路状況などを確認しておくことが大事です。
施設までのアクセスのしやすさは、入居後に訪問する家族の通いやすさにも影響します。
専用居室
入居後の生活空間となる居室のトイレ、キッチン、浴室などの水回り、収納、緊急通報装置などの設備状況をしっかりと確認しましょう。
入居時に持参したい家具などがあれば、どこに設置できるのかも見学時にチェックしておくことが大事です。窓からの眺めが良ければベストですが、実際には共有スペースなど居室以外の場所で過ごすことも多いので、まずは間取りや設備状況が希望に合っているかを確かめましょう。
共有スペース
入居後は食事やレクリエーションで共有スペースを利用する機会が多いです。見学時には共有スペースの居心地の良さや使いやすさを確認しておきましょう。
過ごしやすい場所であれば自然と人が集まり、入居者同士の交流もしやすいです。特に、共有スペースの清潔感がどうなのかは重要なチェックポイントといえます。
嫌な臭いがする場合は、清掃やメンテナンスに問題があるのかもしれません。
入浴設備・機能訓練室
寝たきりなど介護度の重い方が利用できる機械浴などがあるか、機能訓練室の充実度はどのくらいかという点も見学時に確認する必要があります。
もし希望する設備が無い場合は、それを補完するためにどのような対応を取っているのかを質問しましょう。
清掃・メンテナンス状況
清掃やメンテナンスが行き届いているかどうかを確かめることも重要です。
においの有無や設備の状態などから、もし衛生面で不安を感じる場合はその点を職員に質問しましょう。築年数が長い施設でも、清掃・メンテナンスが行き届いていれば十分に清潔感を感じられます。
掃除がおろそかになっている場合、人手が足りないなど何らかの問題を抱えていることが多いです。
スタッフ
人員体制、採用・離職状況
重要事項説明書を通して、介護職員・看護師の人員配置体制や有資格者の割合などを確認できます。
そのほかに内容をチェックして疑問点や不安点があれば、見学時に遠慮なく職員に質問しましょう。
離職率が高い場合は、就労環境に問題を抱えている可能性があります。
接遇・教育
見学時に対応するスタッフの接遇ができているかをチェックし、もし説明や質問への対応に問題があると感じた場合には、教育体制がどうなっているのかを確認してみましょう。
教育が行き届いている施設であれば、日常的なケア・サービスの質も高いと考えられます。
ホーム長
ホーム長は施設で働くすべての職員の上司であり、施設の運営方針や教育体制のすべてを把握している人です。
直接ホーム長から話を聞く機会があれば、施設に関する疑問や不安を積極的に質問しましょう。
入居先の候補が複数あって判断を迷っている場合、各施設のホーム長に施設の特徴やアピールポイントなどを聞いておくと、最終的な判断をしやすいです。
医療・介護連携
介護体制
車椅子・足腰の麻痺
車椅子を使用している方、足腰に麻痺がある方は、施設のリハビリケアの体制に注目して見学することが大切です。
個別のリハビリを必要とする場合は、希望する設備が整っているのか、対応できる職員があるのか、料金はどうなっているのかなどをチェックし、不明点があれば質問しましょう。
服薬介助・誤嚥性肺炎
服薬介助を必要とする方、嚥下機能が低下して誤嚥性肺炎の心配がある方は、食事におけるケア体制を確認しておきましょう。
見学も可能ならば、実際の食事時のケアの仕方などを見ておくことが重要です。
刻み食など食べやすい食事を希望する場合は、別途料金が発生するのかもチェックしておきましょう。
認知症症状・徘徊
認知症の症状がある方は、認知症ケアに注目して見学しましょう。
特に徘徊の心配がある場合、きちんと対応できる体制が整っているかどうかの確認は大事です。
また、認知症の知識や介護経験が豊富なスタッフがどれだけいるかも確かめておきましょう。
医療体制
協力医療機関
協力関係にある医療機関の病院名や診療科目、立地場所、協力内容などを確かめましょう。
併せて、緊急搬送時における近隣病院との連携体制が構築されているかも確認します。
健康管理体制
医師による訪問診療、定期健康診断の頻度をチェックしておきましょう。
また、看護師が常駐している時間や、看護師がいないときの緊急時対応の体制なども確認しておくことが大切です。
糖尿病・胃ろう
糖尿病によりインスリン注射を必要とする方、胃ろうの方は、医療体制の状況を確認しておきましょう。
胃ろうの方の場合、食事の時間帯に見学をして、介助の様子や食事中の入居者の様子を見ておくのが望ましいです。
看取り
終身利用を考えている方は、看取りケアや夜間ケアの体制がどうなっているかをチェックする必要があります。
ただし、介護保険施設の見学は夜間に行うことはできないので、疑問点・不安点があれば昼間の見学時に遠慮なく質問しましょう。
契約内容
入居条件、退去用件、受入体制
見学に行った際は、入居予定者の心身状態や病名を伝え、入居可能かどうかを確認しましょう。
認知症の状態や医療依存度の高さによっては、受け入れを断られる場合もあるので注意が必要です。
施設側による最終的な判断は、医師の診断書を提出のうえで決められます。
料金プラン・費用
通常、老人ホーム側が設定している料金プランは複数あります。
パンフレット内にすべてのプランを掲載・説明しきれていないこともあるので、疑問点があれば見学時に質問しましょう。
その際、提示されている入居一時金・入居費用以外に別途費用が発生するか否かも確認しておくことをおすすめします。
個別対応
個別にお願いしたい医療行為やリハビリ対応、食事の形態などがあれば、入居後に応じてくれるのかどうかを見学時に確かめましょう。
例えば「嫌いな食材を出さないようにしてくれるのか」など、具体的な内容についても質問しておくことが大事です。
契約に関する書類
契約時には入居契約書や重要事項説明書、管理規定などの書類をチェックする必要があります。
もし入居を考えている施設の場合は見学時に入手して、早めに内容を確かめておくことをおすすめします。
特に重要事項説明書には、サービス内容やスタッフ体制、料金体系など掲載されているため、施設のことを詳しく把握したいときには欠かせません。
気になることは必ず質問!見学は複数回行っても大丈夫
せっかく見学に行くわけですから、気になる点があれば遠慮なく質問しましょう。施設側としても、入居後すぐに退去されるという事態を避けるためにも、質問にはできるだけ丁寧に答えてくれるはずです。
もし1回の見学だけでは不十分と感じたなら、再度見学の予約をしましょう。
入居後に後悔することのないように、見学によって疑問点や不安をきちんと解消しておくことが大切です。