介護施設の増設が急ピッチで進んでいる最中
福島県の北端に位置する福島市。このエリアが発展したのは、江戸時代に福島城と城下町が形成されたことが始まりで、明治維新後も東北南部を代表するエリアとして成長してきました。
福島市には官公署や国の出先機関、企業のオフィスなどが集まる一方で、山林や温泉、のどかな農地も多く、観光地・保養地として親しまれ、こういった特徴のある街は、高齢者が終の棲家を置く場所として適しているといえます。
福島市は数世紀前から交通の要衝として機能してきましたが、現在もその点は変わりません。新幹線や東北自動車道などが通っていることは有名で、高速バスの多さも見逃せません。
グループホームや特別養護老人ホームのような自治体が深く介入する施設については、かなり急ピッチで施設の増設やケアサービスの充実化を進めていますが、民間の有料老人ホームなども、今まさに増加している途中です。
福島市では月額利用料が13万円前後という施設もあり、比較的安価で施設の利用が可能。少し遠い場所にある施設でも、一度見学に行ってみることをおすすめします。
福島市では4人に1人が高齢者
福島市は福島県の県庁所在地で、桃や梨などの果樹栽培が盛ん。福島県内で一番の農業産出額を誇ります。
そんな福島市の人口は、2012年に28万5,873人だった総人口が2015年には28万5,060人、2017年には28万1,820人、2023年には27万744人と推移。人口はやや減少傾向にあるものの、東日本大震災後も大きな減少もなく概ね横ばい状態です。
高齢化率の推移は全国平均とほぼ同じですが、福島市では高齢者数が年々増加。2012年の高齢者人口は7万212人、高齢化率は24.6%であるのに対し、2017年には高齢者人口は8万人を超え、高齢化率は28.4%、2023年には高齢者人口8万3,513人、高齢化率30.8%となりました。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2024年の福島市の高齢化率を地区別にみると、最も高いのは土湯温泉町地区の58.7%で、2人に1人以上は高齢者という数字です。一方、最も低いのは杉妻地区の24.6%で、地区によって格差があることがわかっています。
65歳以上の高齢者を対象とした「福島市高齢者調査」によると、介護や看護、生活支援などのサポートが必要な高齢者(要援護高齢者)の数は、そう大きな変動はありません。一人暮らしの高齢者数についても、2012年以降やや増加傾向にはありますが緩やかな動きです。
しかし、4人に1人以上が高齢者という状況のなか、福島市では介護予防や高齢者福祉に力を入れ、歳を重ねても暮らしやすい街を作ろうと動いています。
介護サービス利用者数は年々増加
福島市の2012年の要介護認定者数は1万3,425人で、5年後の2017年には1万5,936人となっており、約1.2倍に増加。さらに2023年には1万7,148人まで増加しています。
要介護度別に見ると、要介護1認定者と要介護2認定者が多く、両者の数を合わせると全体の38.5占めています。
しかし、2016年から「介護予防・日常生活支援総合事業」がスタートし、要支援認定を受けなくても「訪問型サービス」や「通所型サービス」などの「介護予防・生活支援サービス」が利用可能となりました。
福島市では、在宅介護を受けながら暮らしている高齢者が多く、特に寝たきり高齢者の介護者は「配偶者」である場合が増えています。
介護者の年齢は、70.8%が60歳以上という状況。介護者が80歳以上の割合が増えており、夫婦介護や老老介護による疲弊がますます問題に。
そのため福島市では、在宅介護が楽になるよう、介護ベッドや車椅子などが借りられる「福祉用具貸与」や、手すりなどを取り付ける「住宅改修サービス」を普及させています。
介護保険サービスとしては、在宅介護の手助けとなる居宅サービスが人気で、排泄介助などの身体介護や、炊事や掃除といった家事をしてもらえる訪問介護には特に大きな需要が。サービスの利用回数増加も課題となっており、福島市は介護や看護など支援を必要とする高齢者にサービスがいきわたるよう努めています。
福島市独自の「いきいきももりん体操」で介護予防を促進
福島市内の65歳以上の寝たきり高齢者を性別で見ると、女性の割合が59.9%となっており、女性の方がやや多い状態です。年齢別に見ると、高齢者の8割以上が75歳以上の後期高齢者であり、ここ数年大きな変動はありません。
福島市は介護予防活動の一環として、脳血管疾患の予防にもつながる栄養改善や口腔機能向上などを目的とした講座・教室を開催しています。
福島市版介護予防体操「いきいきももりん体操」を普及させ、楽しく体力や筋力づくりができるような環境を整備。地域のリハビリテーション専門スタッフと連携し、「地域づくりによる介護予防事業」を支援したり、「いきいき介護予防大会」を実施しています。
また、福島市では認知症高齢者の増加が目立っています。年齢別に見ると、軽度認知症・重度認知症ともに75歳以上が9割以上。認知症高齢者は、後期高齢者がほとんどです。
そのため福島市では、認知症教室などの開催を通じて認知症予防を推進。認知症高齢者対策にも力を入れています。
「認知症高齢者見守り事業」では、行方不明者を減らすべく、徘徊する認知症高齢者をすばやく保護する体制づくりを実施。「福島市地域見守りネットワーク事業」では、地域ぐるみの見守り活動を行っています。
通い場の充実化で地域包括ケア構築を目指している
団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には、福島市でも後期高齢者が急増し高齢化がさらに深刻化すると懸念されています。
そのため福島市では、「すべての人が人間として尊ばれ、生きがいを持ち、心豊かに、安全に安心して暮らせる長寿社会の実現」を目標として掲げ、地域包括ケアシステムを構築中です。
高齢者の自立支援、要介護者の重度化防止、医療と介護の連携体制の強化、認知症対策や地域交流、介護予防、高齢者虐待防止、地域包括支援センターの設置・運営など、多方面から高齢者をサポートしています。
現在市内では、介護と看護のどちらも必要としている高齢者が多く、両サービスを気軽に利用できる体制づくりを目指し、在宅医療・介護連携を推進しています。
介護事業と福島市医師会などの連携を一層深いものするため、連携の中心となる福島市在宅医療・介護連携支援センターを設置予定。地域自立生活支援事業では、60歳以上が入居できる高齢者世話付住宅「シルバーハウジング」などを増設し、高齢者の住まいの確保を行っています。
また、1日1回程度一人暮らしの高齢者宅に訪問し、安否確認を行う生活援助員の派遣や、緊急通報システムの貸与による緊急対応を行い、高齢者の安全を確保しています。
「家族介護継続支援事業」では、在宅介護を行っている家族の精神的負担を減らすため、交流や情報交換ができる「認知症の人と家族の会」や「ほっとひといき介護のつどい」を開催。座談会や介護応援講話などを通じて、在宅介護に携わる人々をサポートしています。
福島市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
福島市では、高齢者が安心して生活できるよう「総合相談支援事業」を実施し、高齢者とその家族や親族、地域住民の悩みの解決を促進。主に地域包括支援センターが相談窓口となり、介護や生活全般、金銭的な相談など、高齢者のあらゆる相談に乗っています。
センターには保健師や社会福祉士などの専門スタッフが在籍するため、的確なアドバイスがもらえるのが魅力で、さまざまな高齢者の生活を守る事業を行っています。
地域生活支援事業では、相談専門員による福祉サービスの利用支援を実施。「福祉サービスを利用したいけれど、どんなサービスがあるかもわからない」といった悩みを持つ人には、利用可能なサービスとその内容を教えてくれます。
福島市社会福祉協議会では、高齢者虐待活動など権利擁護事業を実施。「身寄りがなくて、将来が心配」「毎月の公共料金の支払いなどが難しくなってきた」といった悩みにも対応しています。
また、成年後見制度で福祉サービスへの申し込み代行や、公共料金などの支払い代行を行っており、お金など貴重品管理についての相談が可能。代行サービスは有料ですが、相談自体は無料、電話相談も行っています。