観光名所も多く、アクティブな老後を期待できる都市

いわき市は福島県の南東に位置し、21世紀の初めに静岡市に抜かれるまで、国内で最大の面積を持つ市として知られていました。
これまで長きにわたって炭田で繁栄してきましたが、エネルギー源の移り変わりに乗じて工業都市・観光都市へと変貌を遂げ、その後もこれまでと変わらない発展を続けています。
特に観光スポットはバラエティ豊かで、「いわき湯本温泉」のような天然資源を活用した名所もあれば、「スパリゾートハワイアンズ」のような総合的なレジャーランドも抱えており、個性豊かな都市に成長しています。
市内の交通は、鉄道ではなく車両に重点が置かれ、国道6号線などの主要な道路が広い市内を縦横無尽に走り抜けています。遠出したい場合は、常磐自動車道や磐越自動車道を走行したり、都市間移動バスに乗るのがおすすめです。
そんないわき市では今後、介護サービスの拡充が期待されていますが、市内の老人ホーム・高齢者専用住宅の種類や数は以前からかなり多く、充実しています。
市の大きさや人口の多さを考えると、施設数はまだまだ増設の可能性があり、いわき市には安い施設や希望に合った施設を見つけられ機会が多くあります。
広域にわたって探す努力が必要ですが、根気よく探していけば、月額使用料10~15万円ほどで質の高いサービスと設備を提供している施設も見つかるでしょう。
2023年のいわき市の高齢化率は31.7%
いわき市の総人口は減少傾向なのに対し、高齢者人口は増加傾向にあります。高齢化率を見ると、2023年の全国平均は29.0%、福島県の平均は32.4%、いわき市の高齢化率も31.7%でした。
いわき市の高齢化率は全国平均を上回っていますが、市内では地区によって高齢化の状況が違います。一番高齢化率が高いのは川前地区の54%で、次いで高いのは田人地区の51.9%。反対に一番高齢化率が低いのは小名浜地区の28.0%で、地区によってかなり差があります。
震災後の2011年は総人口が34万666人、高齢者数は8万4,063人でしたが、2023年には総人口31万1,890人、高齢者人口9万8,677人となっています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2023年には総世帯数14万6,775世帯、高齢者のみの世帯は4万8,536世帯でした。いわき市の総世帯数のなかでも、高齢者の世帯数が増えており、いわき市にも高齢化の波が押し寄せているのがわかります。
また、高齢者の年齢を見てみると、65歳~74歳までの前期高齢者も75歳以上の後期高齢者も、両者同じように増加中です。2009年の調査では、前期高齢者が4万2,608人、後期高齢者が4万2,303人でしたが、2014年には前期高齢者が4万4,777人、後期高齢者が4万5,628人となっています。さらに、2023年には前期高齢者は4万7,120人、後期高齢者は5万1,496人となっています。
4人に1人以上が高齢者という高齢社会が到来している今、いわき市では介護予防や重度化防止対策、介護支援サービスの充実などに力を入れています。
後期高齢者の多くが介護サービスを利用している
いわき市では、高齢者の増加にともなって要支援・要介護認定者も徐々に増えています。2006年は認定者数1万3,930人で、認定率16.7%、2011年は認定者数1万5,753人で、認定率18.1%、2023年には認定者数2万1,018人で、認定率20.9%となっており、高齢者の5人に1人は認定を受けている状況です。

認定者の年齢を見ると後期高齢者が圧倒的に多く、2023年の認定者数は、前期高齢者数が2,437人に対して後期高齢者数が1万8,128人となっており、認定者のうち後期高齢者の割合は86.3%にものぼります。
介護サービスの利用状況について見てみると、2010年には居宅サービス1万354人、施設サービス2,474人、地域密着型サービス1,112人の合計1万3,940人でしたが、2024年には居宅サービス1万3,137人、施設サービス2,394人、地域密着型サービス3,545人の合計1万9,076人と、14年で介護サービス利用者数は約5,000人増加しています。
居宅サービスには、料理や掃除などの家事代行や排泄の介助などをしてもらえる「訪問介護」、入浴車で浴槽を提供する「訪問入浴介護」、看護士が療養のサポートを行う「訪問看護」などがあります。
さらに、専門スタッフによる理学療法などが受けられる「訪問リハビリテーション」、医師や歯科医師、薬剤師などが訪問して療養指導を行う「居宅療養管理指導」などもあります。
一方施設サービスは、一時的に入居する「ショートステイ」、訪問介護や宿泊サービスを組み合わせた「小規模多機能型居宅介護」、認知症対応施設であるグループホームなどが利用可能で、サービスの種類が豊富です。
介護保険サービスは、保健福祉センターや市民サービスセンター、市民福祉係が窓口となっており、気軽に相談することができます。
「いわき市シルバーリハビリ体操」で介護予防を実施

いわき市では、介護予防にも目を向けて寝たきり予防のためにも高齢者の外出を推奨しており、外出したくなるような活動を多数用意。高齢者や地域住民が集まる「つどいの場」では、健康づくりや介護予防にまつわる活動を毎月1回以上は行っています。
また、「つどいの場」には地域包括支援センターや地区社会福祉協議会から「つどいの場コーディネーター」が出向しており、運動を通じた健康づくりや食生活の改善につながる講習会、口腔衛生や認知症予防につながるイベントなど実施しています。
住民参加型の介護予防事業として実施されている「いわき市シルバーリハビリ体操」では、椅子や床に座って行う体操、寝て行う体操、立って行う体操、嚥下体操・失禁を予防する体操などで構成されており、筋力と柔軟性を高め、介護予防につなげているようです。
「いわき市シルバーリハビリ体操」では、体操指導士育成を行っており、規模は徐々に大きくなっています。希望すれば自主サークルなどに体操指導士を派遣してもらえ、気軽に教えてもらえるのが魅力です。
また、「いわき市いきいきシニアボランティアポイント事業」では、「いわき市高齢者見守り隊」や認知症カフェ「オレンジカフェ以和貴」でのボランティア活動を推奨。市が指定したボランティアなどの活動に参加するとポイントがもらえ、貯まったポイントは日帰り温泉券やお菓子セットなどに交換できるシステムです。
地域包括ケアに向けて「いきいき交流サロン」を設置

いわき市では「ひとりひとりが安心して自分らしく暮らせるまち いわき」をスローガンに掲げ、包括的な高齢者ケアシステムを構築しようとしています。
実際に多角的な高齢者ケアが実現しており、サービス内容も豊富。気軽に無料で参加できる介護予防運動「いわき市シルバーリハビリ体操」や交流会を行い、体操指導士の育成にも力を入れています。
また、地域包括支援センターの機能の充実にも取り組んでおり、地区保健福祉センターとの情報交換や連携、支援センターで働く社会福祉士や保健師などの社員研修なども実施しています。
地域見守りネットワーク活動事業では、地域ごとに高齢者見守り隊を設置し、定例会や意見交換会などを開催。地域全体での高齢者の見守り実現を目指しています。
いわき市は65歳以上の高齢者のうち約11.3%が認知症のかた。年々増え続ける認知症高齢者のために「認知症高齢者対策事業」も立ち上げられました。
この事業では、認知症高齢者向けサービスの流れなどがわかる「認知症ケアパス」の配布や、認知症を正しく理解するための認知症講演会、認知症サポーター育成に加え、はいかい高齢者SOSネットワークシステムや、徘徊高齢者家族支援事業などを行っています。
被災高齢者支援も実施しており、「仮設等住宅入居高齢者見守り事業」では、自宅を訪問して高齢者の相談に対応したり、ストレスチェックをして心身の健康増進をサポートするほか、高齢者の居場所づくり、生きがいづくりのため「いきいき交流サロン」を設置。定期的に入浴や会食、生活や健康の相談会などを実施しています。
いわき市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
いわき市では、高齢者のさまざまな悩みに対応しています。日常生活自立支援事業「あんしんサポート」では、認知症などで判断能力が下がった人のために、福祉サービスの内容説明やアドバイス、手続き代行などを実施。社会福祉協議会が窓口となり、「どんな福祉サービスがあるの?」「預金通帳やお金の管理が難しくなってきた」といった悩みに対応しています。

市内の薬剤師による「まちかど相談薬局」では、相談員が介護保険や介護サービスに対する苦情や相談を受け付けています。これは相談者である高齢者に適した保健福祉サービスをアドバイスしたり、地域包括支援センターや地区保健福祉センターを紹介して悩みを解決するシステムです。
また、いわき市保健所内の「いわき市医療安全相談センター」では、市内の病院での医療に関する苦情や相談を受け付けています。センターまで足が運べない人は、電話でも相談可能。投薬や診療内容に関する悩みを気軽に聞いてもらえます。
さらに、震災後の辛さと戦っている人のために「こころのケア相談会」も実施中。ストレスによるイライラや食欲不振、体調不良などの悩みを抱える人々に対し、精神科の医師が相談に乗ります。これは予約制で、個別にゆっくり相談を聞いてもらえるのが魅力です。
そのほかにも、市に対する要望・意見、不動産の権利取得などに関する相談、法律や税に関わる相談、被災者の生活再建に関わる相談などは、「ふるさと再生課」が受け付けています。いわき市は無料の相談窓口が多数あり、介護をしながらの生活をするうえで充実したサポートが受けられる街と言えるでしょう。