経済や社会、文化、商業、工業のバランスに優れた住みやすい街
広島市は人口の多さからも老人ホームが集中しており、数という面では多くの選択肢の中から入居先を検討することができます。
しかし、有料老人ホームはそれほど充実しておらず、入居先として考えられるのは介護保険の施設サービスである特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設がメイン。
中でも、特に特別養護老人ホームには市も力を入れて整備を進めており、今後も高齢者施設として多くの利用者を獲得するものと思われます。
広島県はその特徴的な気候や性質から「日本の縮図」、「日本の平均値県・地域」という言葉で語られることが多くあります。
平均的な人口世代分布を基盤に、経済や社会・文化・商業・工業といったさまざまな要素がバランス良く取り入れられた県であり、その中核を成す広島市はまさに万能型都市。
高齢者にとっても至るところで住みやすさを感じられるはずです。
また、市内には路面電車やバスを中心とした交通機能も整備されており、例えば家族が面会に行く際などは、車を利用せずとも便利に移動することが可能です。
高齢者にとっても、またその家族にとっても、この万能型都市での老人ホーム入居にはさまざまなメリットがあると言えるでしょう。
高齢者人口は2023年には30万8,282人にまで増加
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
広島市は大戦時に人口が大きく減少しましたが、現在は全国で10番目に人口が多い都市にまで回復、成長しています。
また広島県民全体の約4割が広島市在住というほどの割合を占めています。
広島市内の高齢者人口の推移を見ていくと、2010年には23万1,145人だったものが、2023年には30万8,282人にまで増加。
高齢化率も26.0%まで伸びており、全国的な波と変わらず高齢化が進んでいる様が見て取れます。
とはいえ、全国平均の29.1%と比較すると3%以上も低い水準。中部地方の産業、文化の中心地という事もあり、生産者人口が多いのも特徴で、少子高齢化の進行は緩やかと見て良いでしょう。
高齢者人口を区別に見てみると、安佐北区がもっとも高齢化が進んでいます。
これには市で一番面積が大きい区ながら、可住地面積が少ないのが原因として挙げられます。
開発が進まない地域と言えるので、古くからの住宅が多く残っていることも影響しているでしょう。
その他の区の高齢者率はおおむね市の平均程度に収まっています。
高齢者人口の増加に伴い要支援、要介護の認定者も増加しています。
2010年の要介護認定者数は4万2,134人でしたが、2024年には6万153人に。
約2万人増加しており、今後も厳しい状況が続くものと思われます。
全国的な傾向でもありますが、広島市でも高齢者の単身世帯または高齢者のみの世帯が増加しており、高齢者全体の約6割が高齢者のみの世帯に属しています。
広島市の様な都市部では特に顕著になる傾向なので、高齢者の孤立防止の施策が求められるところです。
訪問介護を中心に介護サービス利用は増加中
広島市の介護保険の利用状況を見てみると、年々上昇しているのが居宅サービスの利用者です。
訪問介護や看護に加えデイサービスなどの通所介護、また福祉用具のレンタルサービスの利用も大きく増加しています。
一方で、施設に入居する施設介護の割合は横ばい傾向にあります。
特別養護老人ホームも増加していますが、それでも居宅サービスの伸びほどではありません。
介護保険サービスに認定されている民間の老人ホームの利用者数と合わせても、明らかに居宅介護にシフトしている事がうかがえます。
また、地域密着型サービスの分類ではありますが、グループホームの利用者や小規模多機能型サービスの利用者が年々増加中です。
主に認知症の方が対象となる施設ですが、広島市ではそれを示す様に年間に千人単位で認知症の方が増えているというデータもあります。
特に、65歳から74歳までの前期高齢者の方が認知症を発症するケースが増えておいます。
広島市は全国的に見れば3%近く高齢化率が低い都市ですが、政令指定都市かつ人口も多いことから高齢者の数も必然的に多くなっています。
また、市が行ったアンケートによると、高齢者の半数の方は老後を自宅で過ごしたいと思っており、介護が必要になった場合でもそれは変わりません。
今後ますます在宅介護や地域密着型のサービスへの需要が上がることは間違いないものと思われます。
認知症カフェなどの介護予防のための通い場も充実
広島市では介護予防政策の中で拠点作りに力を入れています。
高齢者の方が自分の足で通える身近な場所で、介護予防体操など体を動かすことを中心に行う「通いの場」を提供がそれに当たります。
地区の社協や町内会が運営しているサロンなどの協力も得ながら、最低でも月に1回以上定期的に会合を行い、要支援、要介護の有無に関係なく誰もが参加できるようにしています。
また、認知症カフェを設置し、本人はもちろんその家族同士の交流の場を提供、認知症の進行予防や専門家による相談なども行っています。
一方、比較的軽度な要支援認定者の方などを対象に、ボランティア団体やNPO法人と協力し、住民主体での家事代行サービスも行っています。
布団の上げ下げや干し、庭の草むしり、ゴミ出しや買い物の付き添いなど、一人では若干困難な事を中心にフォローしています。
さらに「短期集中予防支援サービス」では理学療法士や作業療法士が自宅に赴いて、身体機能や口腔機能(飲み込む力)のリハビリ支援を実施。
管理栄養士による食生活の見直し・改善や、自宅内の生活環境改善に対するアドバイスなども行います。
そして、通所型のリハビリに関する支援も実施。
通常のデイサービスとは異なり週1回1~2時間程度リハビリ目的に通っていただきますが、送迎サービスもあるので気軽に利用することができます。
加えて、歯科医師や歯科衛生士による口腔機能の向上プログラムも用意されています。
「認知症ケアパス」を作成し地域包括ケアを推進している
広島市の地域包括ケアシステムには、高齢者の健康と介護予防の促進、地域で高齢者の方を見守っていく体制作り、在宅介護・医療との連携推進という3つの重点施策があります。
3年を1期とした計画は2017年現在第6期が進行中で、2025年時点でのシステムの完全構築を目指しています。
広島市は要支援、要介護の認定において、比較的軽度の認定者が多くなっています。
そのため、重度な介護度認定に至らないように市が先頭に立って介護予防を行い、さらには住民先導で介護予防ができる拠点を築く支援をしています。
具体的にはロコモティブシンドローム(運動器症候群)の認知率を上げる普及活動、70歳以上の方が1日に30以上歩く事の推進、口腔機能低下の防止などが挙げられます。
また、住民主体で要支援者に対する家事代行サービスの構築をしたり、認知症カフェや高齢者サロンの増設も図っています。
広島市の地域包括ケアシステム構築のコーディネーター役を担う地域包括支援センターは2014年度時点で8ヵ所しかありませんでした。
しかし2017年8月現在41ヵ所にまで増えており、確実に計画が遂行されています。
また、在宅介護が増えている現状において、医療も必要とする高齢者に対応する事が多くなってきています。
そこで広島市では、医療と介護の連携強化に乗り出しています。
在宅医療に対応する訪問看護の事業所を増設したり、病院を退院した高齢者をフォローする退院支援担当者を病院に配置したりと、各区ごとに認知症ケアパスを作成し、認知症の方とそのご家族を地域全体で見守っていく体制を整えています。
広島市「あんしん電話」とは?
広島市では在宅福祉サービスの一環として、「あんしん電話」を設置。
これは、利用者が緊急時にボタン一つで外部の人間に異常を知らせることができるシステムです。
また、専門家が常駐しているので、健康相談などを行うことも可能です。
さらに、利用者には月に1回以上電話で声掛けを行い、悩みの相談などにもあたっています。
利用者は病弱などの理由で一人暮らしに注意が必要な原則65歳以上の方で、機器を正しく操作できることが条件です。
緊急通報システムの利用には2名以上の協力員が必要になります。
協力員とは「緊急時に15分程度で家に駆け付けることが可能な親族や知人」を指します。
そういった方がいない場合は民生委員に相談して下さい。
緊急通報は、ボタンを押した段階で電話相談センターに通報され、協力員や消防署、親族などの関係機関に連絡が入る仕組み。
また、夜間や協力員に連絡が取れない場合は、原則30分以内に警備会社が駆けつけることになっています。
通報があった場合、協力員はすぐに利用者宅に駆け付けて安否の確認を行うことで相談センターとの連絡係になります。
そして、利用者が救急車などで運ばれてしまった場合には、家の戸締りや火元の確認も実施。
電話相談センターは365日24時間体制で通報や相談に当たっています。
看護士も常駐していますので、健康に関する悩みや生活状況に関する相談をすることも可能です。
一般的な電話回線であればほぼ対応可能ですし、費用も高額ではないため、健康に不安のある単身者の方でも検討できる内容です。