瀬戸内海に面した土地柄、穏やかな老後が待っている
福山市は、広島県の東部にある中核市です。
人口は約47万人で、広島県では広島市の次に人口の多い街。
福山市から市外の広島空港までは、空港リムジンバスを使えば1時間ほどで行ける距離にあり、隣接している岡山県井笠地方を含む「備後都市圏」の中心都市です。
交通アクセスとしては、JR西日本の山陽新幹線、福塩線、井原鉄道の井原線などが運行中。
バスは井笠バスカンパニー、トモテツバスなどが走っています。
瀬戸内海に面しており、福山港などの港も活用されています。
福山市の高齢者人口の推移を見ると、1990年には総人口は約36万6,000人で、高齢者人口は約4万2,000人。
高齢化率は11.5%でした。
それが2010年には総人口約46万1,000人に対し、高齢者人口は約10万6,000人。
高齢化率は22.9%に上昇。
20年間で、約10%も高齢化率が上昇しています。
早急に超高齢社会に向けての準備が必要であるといえるでしょう。
さらなる高齢化に備え、福山市は高齢者福祉サービスや特別養護老人ホームなどの公的介護施設の整備に力を入れています。
しかし、特別養護老人ホームについては、施設も数十人から数百人待ちで、在宅介護をしながら空きを待っている方が多いのが現状です。
そのため、市は在宅介護者のフォローを行っています。
「家族介護慰労金」という制度を設け、条件付きではありますが、自宅で介護をしている方に慰労金を支給しています。
年間10万円ほど支給される場合がありますので、興味がある方は介護保険課に相談してみるとよいでしょう。
市からのサポートを受けながら在宅介護を行っている方は多いですが、今後のライフスタイルを考慮し、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅、グループホームなどの入居も考えておくのも良さそうです。
デイサービスやショートステイだけ活用するのも一つの手です。
地域包括支援センターやケアマネージャーに相談しながら、被介護者とその家族の状況に合った介護形態を選んでください。
福山市の有料老人ホームは、入居時の費用が数十万円、月額利用料が12万円前後という施設が多いようです。
老人ホームによっては、胃ろうなどの医療看護に対応している場合もありますので、ご自身の病気や介護度などを基準にして入居の検討をすると良いでしょう。
グループホームも市内にいくつかありますが、満室の施設が多いようです。
認知度の急激な上昇や、家庭の状況などが考慮され、入居が優先される場合もありますので、認知症の方は入居の申し込みだけでもしておくことをおすすめします。
福山市の2023年の高齢化率は29.1%
福山市は、福山藩の城下町を起源とする歴史ある街で、道路・電車・航路が発達した交通の要衝です。
総人口は緩やかに減っていますが、高齢者の数は増加しています。
2010年度の総人口は46万1,357人、高齢者数は10万5,858人、高齢化率は23.4%でしたが、人、2023年度の総人口は46万684人、高齢者数は13万4,054人、高齢化率は29.1%にまで上昇。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
市民の4人に1人以上は高齢者という状況です。
今後も高齢化は進み、2025年には高齢化率が31.1%まで上昇すると推測されています。
さらに、団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には、全国的にも後期高齢者が急増し、要支援・要介護認定者も増えると推測されています。
そのため、福山市では介護予防や重度化防止対策を打ち出し、健康教室や栄養指導などを実施しています。
また、一人暮らし高齢者や高齢夫婦のみの世帯など、高齢者世帯が増加傾向にあります。
2020年のデータでは、一人暮らしの高齢者世帯が2万1,235世帯、高齢夫婦のみの世帯が2万4,580世帯となっています。
このような状況から、安否確認による一人暮らし高齢者の病気やケガの早期発見、孤独死の防止が重要ですし、生活支援の充実による老老介護の軽減なども課題です。
認知症高齢者も増えているなか、福山市ではさらなる高齢者サポートが求められています。
介護サービスの利用率は7割を超えている
福山市の要支援・要介護認定者は、2010年度は2万2,134人、2015年度は2万4,924人、2020年度2万7,372人、2023年度2万8,795人となっており、右肩上がりで増加していおり、福山市では介護予防などの重要性が浮き彫りになっています。
なお、要介護度で見ると、2024年時点で要支援1~要介護1が59.4%であり、軽度の方が最も多い状況。
要介護2~3の中度が20.2%、要介護4~5が20.4%となっています。
なお、利用されているサービス内容を見ると、居宅サービスの利用率が68.8%、地域密着型サービスが21.6%、施設サービスが9.6%であり現在は居宅サービス利用者が圧倒的に多いですが、施設サービス利用者も年々増えている状況です。
利用されているサービスを詳しく見てみると、要支援の人が利用できる介護予防サービスを含め、訪問リハビリテーションや居宅療養管理指導居宅サービス、通所介護(デイサービス)の利用者が急増しています。
訪問介護や短期入所生活介護(ショーステイ)や福祉用具貸与などの居宅サービスもよく利用されています。
地域密着型サービスとしては、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護を利用する人が多く、施設サービスは介護老人保健施設(老健)の利用者も多数。
次いで介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)利用者が多いです。
福山市では、ニーズが高い居宅サービスの充実と普及のため、サービスに携わる人材育成などにも力を入れています。
骨折防止のための健康相談や健康教育を実施
福山市では、高齢者がいつまでも元気に暮らせるよう、介護予防にも力を入れています。
「福山市ラジオ体操連盟」では、各地域で早朝ラジオ体操を実施。
高齢者だけでなく市民なら誰でも参加可能で、健康増進や地域住民同士のコミュニケーションに役立っています。
やりがいアップのため、ラジオ体操コンクールを開催。
ラジオ体操グループでは、フリスビーなどの軽スポーツ大会を実施し、適度な運動を楽しんでいます。
「いきいき百歳体操」では、地域の人が集まり、皆で健康づくり体操を行っています。
重りを使った30分程の簡単な体操で、短時間で効果的に筋力アップができるのがポイント。
週1~2回程度、定期的に開催されており、「生活にリズムがついた」という声が聞かれます。
福山市は、「いきいき百歳体操」を続けるグループには、経費補助や機材の貸し出しなどの支援を行っています。
また、高齢者の孤立や引きこもりを防止するため、「高齢者の居場所づくり」にも積極的です。
福山市では、社会福祉協議会の喫茶店風サロンや老人福祉センター、ふれあいプラザなど、高齢者同士の交流の場を提供。
独居高齢者の安否確認にもなっています。
さらに、病気や骨折がきっかけで介護が必要になる人が多いため、健康相談や健康教育を実施。
食と運動の健康づくりボランティアや、食生活改善推進員、運動普及推進員の育成を行い、認知症予防や介護予防などの健康講座も開催しています。
生活習慣病予防の推進にも取り組んでおり、健康手帳の交付や高齢者向けの健康診査、予防接種を実施。
保健師や歯科衛生士などが訪問指導を行っています。
高齢者が自立して生活できる地域包括ケアを目指している
福山市は「福山市高齢者保健福祉計画2015」や「福山市高齢者保健福祉計画2018」に基づき、「地域包括ケアシステム」を構築中です。
介護・介護予防・医療・生活支援サービス・住まいを一体的に提供するシステムを目指しており、高齢者がより暮らしやすい環境になるよう整備中です。
介護関連の事業所や医療事業などの連携が重要なポイントとなっています。
市内在住の高齢者からは、介護サービスの充実が求められていますが、福山市が実施した高齢者向けのアンケートによると、介護保険制度を「よく知らない・まったく知らない」という人が54.2%となっており、回答者の半数を超えていました。
そのため福山市では、介護保険制度の認知度を上げることがまず大切とし、宣伝・普及に努めています。
高齢者向けのアンケート結果では、希望するサービスとして「老人ホームなどの施設の充実」が35.5%、次いで「介護保険による在宅サービスの充実」が31.4%、「医療体制の充実」が29.9%となっており、介護サービスの充実が望まれています。
福山市はグループホームなどの老人ホームの増設を急いでいます。
さらに、栄養バランスの取れた食事の配食サービスや、施設や病院への移送サービス、買物などの外出同行、地域ぐるみの見守りや安否確認、サロンなどの交流の場の確保などを行い、高齢者のニーズに合わせてサービスを展開。
「福祉サービスを利用しながらも、自宅で暮らしたい」と願う高齢者が多く、福山市では、高齢者が可能な限り自立した日常生活を継続できるようサポートしています。
福山市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
高齢者向けのアンケート結果から、「家族や友人、知人以外の相談相手がいない人」が34.3%となっており、相談相手が欲しいと願う高齢者が多いことが分かっています。
そのため福山市では、高齢者向けの総合相談や手話相談などを実施中です。
社会福祉協議会と権利擁護支援センターでは、虐待防止・権利擁護事業を推進。
「虐待を受けているかも知れない」などの相談ができます。
そして福祉サービス利用援助事業「かけはし」では、有料ではありますが、認知症などで判断能力が低下している人を対象に金銭管理や福祉サービスの手続きなどを代行しています。
さらに、金銭や貴重品の管理に関する悩みや、どのサービスを利用するかの相談については無料で対応しています。
家族介護者等支援交流事業では、高齢者だけでなく家族の悩みにも対応。
介護を行う側の心身のリフレッシュに貢献しています。
「オムツ代だけでもかなりの額で、生活費が辛い」といった悩みも、地域包括支援センターで相談可能。
家族介護用品支給事業・家族介護慰労金支給事業に基づき、オムツ代などが支給される場合もあります。
また、福山市は「一人暮らし高齢者巡回サービス」を行っており、不慮の事故など、困ったことがあった場合は巡回スタッフに相談できます。
緊急時に助けが呼べる緊急通報装置や福祉電話の貸与サービスもあり、いざという時に相談できるのが心強いです。
福山市では、高齢者がSOSを発信できる福祉サービスが多数ありますので、地域包括支援センターのケアマネージャーなどに相談してみると良いでしょう。