バラエティに富んだ価格帯の介護施設がラインアップ

大阪都心から、約15kmのところに位置する豊中市。
阪急電鉄、北大阪急行電鉄といった電車網、中国自動車道、名神高速道路、阪神高速池田線、新御堂筋をはじめとする幹線道路網が整備されていくのと同時に、千里ニュータウンの開発が進み、豊中市はベッドタウンとして発展を遂げてきました。
豊中市は2023年時点で約40万人という多くの人口を抱えています。
そのうち65歳以上人口は約10万人で、高齢化率は25.7%。
全国平均や大阪府の高齢化率よりは低くなっていますが、それでも超高齢社会であることに変わりはありません。
そんな社会を支えるための老人ホームですが、豊中市内にはそれほど多くはありません。
そもそも大阪府は、65歳以上人口10万人あたりの老人ホームの数が38.6ヵ所で、これは全国平均を10ヵ所も下回る数字。
しかもそれは、ほとんどが県庁所在地である大阪市に集中しているため、その他の市はいわば“老人ホームの過疎化状態”となっています。
大阪市のベッドタウンである豊中市も例外ではなく、特に特別養護老人ホームでは、多くの高齢者が入居を待っている状態です。
施設の種類は、介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホームがほとんど。
価格帯は両極端で、入居一時金が数千万円、月額利用料が20万円以上といった高額の施設もあれば、入居一時金が数百万円、月額利用料が18万円台からという低額の施設もあります。
もちろん、高額の施設では豪華な設備や食事、充実したサービスが受けられるなど大きなメリットがありますが、いずれにせよ所得や経済状況によって選択できる幅広さはあります。
サービス付き高齢者向け住宅については、市の政策のもとで増設が計画されているので、ケアマネージャーや市の窓口などに、随時相談して確認しておくと良いでしょう。
豊中市は、交通機関が非常に発達しています。
電車や高速道路の他にも、市内にはバスが網の目のように走っており、交通の利便性は大都市並です。
高齢者が移動するのも便利ですし、またその家族が面会に行く際も、車を使わなくても会いに行くことができます。
交通アクセスの良さは、豊中市の老人ホームに入居する際の大きなメリットといえるでしょう。
ただし、大阪府道145号線をはじめ、市の南部を走る道路には歩道がないところが多く、路上駐車も多くなっています。
高齢者にとって危険な場所も多いので、健康状態を鑑みて、認知症患者などは特に看護ケアのしっかりした老人ホームを選ぶと良いでしょう。
豊中市の高齢化率は2023年に25.7%になった

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
豊中市の高齢者の数は、全国と同様に増加しています。
2009年には、総人口が39万4,714人で、その中で高齢者の数は8万3,653人でした。
それが2023年には総人口40万7,695人、高齢者数は10万4,955人となっており、高齢者は14年間で2万1,302人増えています。
2023年の高齢化率は25.7%で、毎年上昇している状態です。
高齢者がいる世帯は年々増えており、高齢者単身世帯や高齢夫婦世帯も増加しています。
高齢者が多いため要支援・要介護認定者も多く、2009年には1万4,858人だった認定者数は、2014年には2万人まで増加。
2023年には2万5,378人となっており、14年で約1万人増加しています。
もちろん認定率も上昇しており、2018年には22.2%、2023年には24.2%となっています。
近年の認定率を見てみると、65歳から74歳までの前期高齢者の認定率は横ばい状態ですが、75歳以上の後期高齢者の認定率は上がっていることから、特に後期高齢者が増えているのが分かります。
しかし、大阪府の主要エリアにアクセスが良い豊中市の総人口は、ここ数年40万前後をキープ。
全国的に人口が減っている都市が多い中、豊中市の人口は横ばい状態です。
そのため全国の都市と比べてみると、豊中市は「高齢化率は低く、認定者率は高い」部類に入ります。
豊中市の高齢者は着実に増えており、もうすぐ4人に1人が高齢者という状況がやってきます。
そのため、高齢者も快適に過ごせる街づくりが課題ではありますが、現在は他市よりは深刻な高齢化に悩まされていない状況といえるでしょう。
豊中市ではグループホームの利用者数が急激に増えている
豊中市では、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの介護施設の数は、緩やかに増えているものの概ね横ばい状態です。
利用希望者は増える中、施設サービスは飛躍的に伸びているとはいえない状態です。
そのため、豊中市は介護施設の充実にも力を入れています。
特に認知症対応型共同生活介護、いわゆるグループホームは急激に利用者数が増えており、市は早急な対応を進めています。
また、豊中市は北西部や北中部など7つの地域に分かれていますが、地域によって特別養護老人ホームなどの受け入れ人数に違いがあるのが現状です。
一方、居宅サービス利用者も増加中で、訪問介護や訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリテーションなど、さまざまなサービスが提供されています。
デイサービスと呼ばれる通所介護も増えており、「毎週お風呂はデイサービスで入っている」といった高齢者も増加しています。
全体的に介護保険サービスの利用者数は増えており、高額介護サービス費等給付金や地域支援事業費など、介護にまつわる予算も増加中。
豊中市では介護保険財政の確保も積極的に行い、全ての要支援・要介護認定者が、希望する介護支援サービスを受けられるよう努めています。
介護保険サービスの内容は、施設サービス・居宅サービスを合わせると非常に種類が多く、人によって利用できるサービスも違います。
利用できる介護保険サービスを知りたい人は、お住まいの地域にある地域包括支援センターに相談してみて下さい。
介護予防体操「とよなかパワーアップ体操」を各地域で実施

豊中市では、オリジナルの介護予防体操「とよなかパワーアップ体操」を各地域で実施したり、レクリエーションや交流が楽しめる「老人憩の家」を各エリアに設置するなど、高齢者の介護予防に努めています。
「とよなかパワーアップ体操」は、地域包括支援センターや市役所の高齢者支援課介護予防係が窓口となっており、参加できる人が5人以上集まれば週1回のペースで開催されています。
参加者は体操のDVDがもらえ、体力測定などをしてもらえます。
さらに、口腔内の健康を保つための情報が満載の「歯や口の健康づくりハンドブック」の配布や、同世代と共に健康づくりや趣味活動、公園清掃などが楽しめる「老人クラブ」の活動支援なども実施。
公衆浴場を開催場所とし、健康体操やヨガ、レクリエーションなどの講座を行った後、希望者は100円で入浴ができる「ぬくもりサロン」も好評のようです。
加えて、地域全体で支え合う地域包括ケアシステム「豊中モデル」の中で、「とよなか地域ささえ愛ポイント事業」も行っています。
これは、高齢者支援活動である「ささえ愛活動」を行った65歳以上の人には、活動支援金に換金できるポイントを、活動内容に応じてプレゼントするシステム。
支援活動をすればするほどポイントが貯まるので、高齢者支援活動のやり甲斐になっているようです。
介護予防のためには、積極的な外出や活動、生きがいが大事です。
豊中市はさまざまな高齢者向けサービスを実施することで、高齢者の介護予防を実現しています。
地域包括ケアシステム「豊中モデル」を構築中
豊中市では、地域包括ケアシステム「豊中モデル」を構築中で、「平均」にこだわらず豊中市だけのケアモデルを作り上げようとしています。
トータルケア・トータルサポートを実現するため、地域包括支援センターなどが中心となり、高齢者の生活支援や、訪問介護や訪問看護といった介護支援、訪問治療などの医療サポートを実施しています。

さらに、健康づくりや老人クラブといった生きがいづくりも支援しており、全ての高齢者が幸せに生きていけるよう、介護サービスの普及・浸透に力を入れています。
豊中市は高齢者だけを別にとらえるのではなく、障害者や子ども世代など、全ての市民がそれぞれに支え合うシステムを目指しています。
そのためにも、繋がりや連携といったネットワークを大切にし、認知症支援や相談支援といった支援側の人材育成などにも重きを置いています。
高齢者のケアは、やはり各地域に設置された地域包括支援センターが中心です。
支援センターではさまざまな角度からフォローできるよう、介護や認知症について学べる「地域教室」、総合相談窓口である地域包括支援センター「ほっと」、司法書士による「相談会」などが行われています。
高齢者だけでなく、高齢者と共に生きる家族や地域住民も参加できるようにしているのが特徴です。
また、若年性認知症の人と家族の交流会や、認知症初期の人の集中支援チームによる活動などもあります。
豊中市は認知症の人も快適に過ごせる環境づくりにも取り組んでいるのです。
豊中市の福祉サービス運営適正化委員会とは?

豊中市では、高齢者が気軽に相談できるよう「介護相談員サービス」を設けています。
介護相談員が市内の介護保険施設(老人ホーム)や居宅サービスの利用者の家を訪問し、直接本人に疑問や悩み、不安などを聞きます。
そして専門の事業所に橋渡しをしてくれるシステムです。
老人ホームでの相談実績としては、冷暖房の時間が延長されたり、食事内容が改善されたりしています。
自宅相談では「家族の悩みが解消した」など、好意的な声があがっています。
介護相談員は介護保険サービスの内容説明なども請け負っており、介護支援サービスの普及にも一役買っています。
さらに、地域包括支援センターではケアマネージャーなどによる相談が受けられます。
高齢者だけでなく、そのご家族や地域住民も利用できる相談サービスで、内容も介護にこだわらず、心の健康やお金の問題など多岐に渡ります。
また、地域包括支援センターが開催する若年認知症本人・家族の集い「ももの会」は、認知症の人とそのご家族の交流会で、悩みや不安が解消できると好評です。
豊中市は心の健康づくりにも取り組んでおり、ストレス度がハッキリと分かるスマホ用アプリを市独自に開発。
アプリを使ってストレス診断を行い、ストレス度が高い場合は保健所などで相談ができます。
保健所に電話して予約しておくと、専門のプロが悩みを聞いてくれるシステムです。
寝たきりにならないためにも、心も体も健康であることが肝心。
豊中市は高齢者の心身の健康をサポートするため、さまざまな相談に乗っています。
悩みのある人は、地域包括支援センターなどで気軽に相談すると良いでしょう。