介護施設の数・種類は大阪市に次いで充実
大阪府において、大阪市に次ぐ政令指定都市となったのが堺市です。
明治時代以降は紡績や煉瓦などの産業を中心に工業都市として成長したのですが、高度経済成長期から後は大阪都市圏の発展とともに、大阪市のベッドタウンという性格を持つ都市へと変貌。
泉北ニュータウンなどの住宅地が次々と開発され、爆発的に人口が増えてきました。
大阪第2の都市だけに、老人ホームの数も充実。
介護保険の施設サービスである特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設はもちろん、住宅型・介護付有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅にケアハウスなど、ニーズに応じてラインナップされています。
有料老人ホームは設備面や費用面でさまざまなファクターから選ぶことができます。
看護師が常駐していたり、医療機関と密接に連携しているといった医療・看護ケアが充実しているような住宅型・介護付有料老人ホームでは入居一時金が1,000万円以上、月額利用料が20万円前後というとことも。
一方で、入居一時金・月額利用料ともに低額で利用できる施設も多くあります。
希望の条件に合わせて選べるのは、大きなメリットと言えるでしょう。
市内には電車やバスなど公共交通機関が発達しており、移動で不便を感じることはほとんどありません。
都市化が進んでいる一方、日本の都市公園100選にも選ばれている大仙公園をはじめ、日本の名松100選に選ばれた松林のある大阪府営浜寺公園や大浜公園、海とのふれあい広場に加え、堺・緑のミュージアム ハーベストの丘…もあったりと、市内は自然の色彩にあふれています。
都市化と緑化がバランス良く整備された堺市での生活は、高齢者にとってきっと心にゆとりをもたらしてくれるはずです。
堺市の高齢者人口は、2025年には減少する見込み
堺市の総人口は2011年の85万780人をピークにその後徐々に減少。
2014年には84万8,111人でしたが、2023年には82万1,428人と年々減少しています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
その一方で高齢者人口は年々増加。
2014年には21万6,948人でしたが、2023年には23万2,349人まで増加しました。
総人口減、高齢者人口増という傾向を受けて、高齢化率も年々上昇していくと予測されています。
2013年時点で24.5%、2023年には28.3%となり高齢化が進んでいることが分かります。
ただ、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年以降、高齢者人口、高齢化率共に減少を見せ始めます。
これは高齢者のうち前期高齢者(65~74歳)の人口数が大きく減少しはじめ、その影響により高齢者人口全体が減っていくからです。
前期高齢者の人口減は2015年から既に始まり、今後も年々減っていくと考えられています。
それとは逆に増えていくのが後期高齢者の人口数。
2015年に9万7,505人だったのに対し、2023年には13万5,089人まで増加しています。
前期高齢者人口が大きく減少していき、それに代わって後期高齢者が年々増加していくというのは、今後10年間の堺市における高齢者人口の推移における大きな特徴だと言えるでしょう。
なお総人口に占める後期高齢者数の割合は、2009年は8.6%でしたが、2023年には16.5%となっています。
介護保険サービスの利用者数が最も多いのは「要介護度1」
堺市の介護保険サービスの利用者数の推移を見ると、居宅サービス(訪問介護、通所介護、短期入所生活介護など)、地域密着型サービス(認知症対応型通所介護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護など)の利用者数は年々増加。
施設サービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)の利用者数は横ばいの状況が続いています。
2008年時点での介護保険サービスの利用者数は、居宅サービスが2万419人、地域密着型サービスが1,176人、施設サービスが4,710人。
2011年時点における利用者数では、それぞれ2万4,890人、1,488人、4,147人となっています。
そして2024年には居宅サービス3万6,488人、地域密着型サービス6,330人、施設サービス4,635人となりました。
なかでも居宅サービスは13年で約1万人増加しています。
居宅サービスと地域密着型サービスの利用者数が大きく伸びるのは他の自治体でも見られる傾向ですが、施設サービスの利用者数が増加傾向を見せないというのは、堺市において特に顕著な現象です。
一方、堺市における介護保険サービスの給付費の額は年々増加。
また要介護認定の介護度別の利用者数、給付額を見ると、利用者数で最も多いのは「要介護1」、給付額が最も多いのは「要介護4」となっています。
介護予防のために「げんきあっぷ教室」を推進
堺市では独自色を打ち出した様々な介護予防事業を展開、市内在住の多くの高齢者が参加しています。
ここでは「介護予防・日常生活支援総合事業」のもと、一般向け介護予防事業(65歳以上であれば誰でも参加可能)として行われている介護予防事業の一部を紹介します。
市内各所の保健センターや地域会館等で、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士に保健師らが健康づくりに関する講座を行います。
保健センターの管理栄養士等による低栄養を予防するための出前講座を行う事業で、言語聴覚士や保健センターの歯科衛生士が、口腔機能向上のための出前講座を行う事業。
正しい歯の磨き方や歯間ブラシの使い方などをアドバイスしてくれます。
運動を自主的に行うためのグループを市民の間で作った場合、市から保健師や理学療法士、運動指導員を派遣してグループ活動を支援してくれます。
地域のグループを対象に運動指導員を派遣し、堺市が進めている介護予防のために行われているのが「げんきあっぷ教室」という事業。
対象となるグループは10人以上、30人未満の規模で、各グループ年4回まで申し込むことができます。
市内の老人福祉センター(7ヵ所)に運動指導員を派遣して「げんきあっぷ教室」を実施するという事業。
週1回の頻度で行われます。
- 介護予防・健康教室
- 低栄養予防出前啓発事業
- 口腔機能向上の普及啓発事業
- 自主運動グループ育成事業
- げんきあっぷ教室(出前型)
- げんきアップ教室(老人福祉センター)
インフォーマルサービスへの支援を強化している
堺市では高齢者が地域で安心して暮らしていけるように、関係機関が連携を図りながら地域社会の中で高齢者を支える仕組みである「地域包括ケアシステム」の基盤整備を進めています。
現在市が力を入れているのは
- 在宅介護をサポートする地域包括支援センターの充実
- 地域密着型サービスの整備
- 利用者の状況・状態に応じた在宅サービス基盤の整備
- 医療と介護の連携強化
- 在宅ケアのための多様なサービス基盤の充実
地域包括支援センターの充実化については、施設数を増やしていくだけでなく、各地域内のケアマネージャーに対する支援の強化も実施。
インフォーマルサービス(NPO、地域住民、民生員、ボランティアなど)に関する情報の整理、及び連携・協働の体制づくりなども行われています。
地域密着型サービスの整備は、ニーズ等を踏まえつつ整備の必要量を検討し、適正なサービス提供体制を整えることです。
在宅サービス基盤の整備については、訪問介護、通所介護、訪問看護など在宅介護を支えるサービスを充実させるという取り組みです。
医療と介護の連携強化では、堺市医師会の協力のもとに「堺市における医療と介護の連携を進める関係者会議(いいともネットさかい)」等を通して連携強化を図る取り組みが行われています。
多様なサービス基盤の充実については、地域内のさまざまな組織や団体の自発的活動、近隣同士の助け合い、といったインフォーマルサービスへの支援をさらに強化し、利用者の実情に応じたサービス提供が進められている状況です。
堺市地域福祉ねっとワーカー(CSW)とは?
堺市には、生活上サポートを必要とする人を公的なサービスや地域内の諸活動と結びつけたり、市民が必要とする新たな制度やサービスを作り出したりする「堺市地域福祉ネットワーカー(CSW)」という福祉の専門職が設置されています。
「CSW」とはコミュニティソーシャルワーカーのことで、堺市では堺区をモデル区として導入が進められ、その後、他の区でも順次導入されていきました。
主な活動として、個別支援(個々人からの相談、各個人のネットワークづくりの支援等)や地域支援(民生委員会、いきいきサロン等への参加)、ネットワーク支援(福祉関係機関の諸会議への参加、関係機関とのつながり作り)などを行っています。
堺市地域福祉ネットワーカー(CSW)の特徴は、地域内の福祉関連の問題に個別対応するだけでなく、それらの問題を集約した上で、新たな制度やサービスを作り出す取り組みまでを行うという点にあります。
対応できる制度が市に無いという「制度の狭間問題への対処」、支援に必要な社会資源がないという「社会資源の開発」までがその活動範囲です。
地域社会で生活していく中で、「どこに相談すれば良いのか分からない」という困りごとが発生した場合、住んでいる区の堺市地域福祉ネットワーカーに相談すると、行政やボランティア団体など、地域内の様々な力をつなげて解決の道を探ってくれます。
市民からの相談は、堺市社会福祉協議会の各区事務所で随時受け付けています。