入居一時金・月額利用料が高額になるケースも
1970年に行われた大阪万博の開催地として広く知られている吹田市。
現在でも万博記念公園にはモニュメントの「太陽の塔」が残されており、吹田市のシンボルとして市民の誇りになっています。
吹田市は名神高速道路、中国自動車道、近畿自動車道を接続する吹田ジャンクションがあり、関西圏の高速道路の要衝。
1960年頃には、なだらかな千里丘陵に千里ニュータウンが建設され、若いファミリー層が住む一大ベッドタウンとして発展してきたという経緯があります。
しかし、平成26年には高齢化率は21%を超え、超高齢社会へと突入しました。
市による試算でも、特別養護老人ホームの利用者数は2012年から2014年の間で1300人、介護老人保健施設は同じく840人、グループホームは860人と、それぞれ利用者数は増加。
そのために市では、高齢者のための施設の整備に注力しています。
その背景には、有料老人ホームがそれほど多くないという理由もあります。
隣の大阪市をはじめ、堺市や西宮市より少なく、選択肢が少ないのです。
そのため、そして大阪市へのアクセスの良さといった理由からも、利用料が比較的高額であるところが多く、入居一時金が300万円以上、月額利用料が20万円前後といったケースも少なくありません。
選択肢の少なさや費用面のハードルさえクリアできれば、吹田市は高齢者にとって生活のしやすい都市と言えます。
気候面では、典型的な瀬戸内海型気候のため雨が少なく、1年と通じて温暖という特徴があります。
また、大規模な商業施設がない反面、市内のいろいろな場所で独自に商店街ができていたり、ショッピングセンターがあったりと、こぢんまりとしたコミュニテイが成立しているのです。
騒がしい雰囲気とは無縁のため、ゆっくりと過ごすには最適です。
市の南部にはJR京都線、阪急京都線と大阪モノレール線が東西に、北大阪急行電鉄が南北に、阪急千里線が西部にそれぞれ走っているなど、電車網が非常に発達しているのも特徴。
電車が走っていない地域には阪急バスが走っているだけでなく、吹田市が独自に、60歳以上の高齢者・障害者・妊産婦を対象にした福祉巡回バスを運行させており、高い利便性を誇っています。
高齢者はのんびりと気楽に過ごし、家族が面会に行くのも便利。
入居までのハードルは確かに高いかもしれませんが、その先には大きなメリットが待っているはずです。
約5世帯に1世帯が高齢者のみ世帯となっている吹田市
吹田市は大阪府北部にある町。
大阪市の北側にあり、ベッドタウンとして発展してきました。
1970年の大阪万博の開催地で、会場跡地である万博記念公園には岡本太郎の『太陽の塔』が現存しています。
アサヒビール創業の地でもあるため、ビール工場見学ツアーも開催されている街です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
交通アクセスとしてはJRの京都線・千里線・京都本線、大阪市営地下鉄の御堂筋線、阪急電鉄の千里線・京都本線、北大阪急行電鉄の南北線、大阪モノレールの大阪モノレール線・国際文化公園都市モノレール線が走行。
阪急バスや京阪バスも走っており、交通アクセスが発達しています。
吹田市では1985年の34万8,948人をピークに、総人口は減少傾向に転じていましたが、2000年から再度人口が増加し始め、2010年には35万5,798人、2015年には36万7,068人、2023年には38万1,306人になりました。
アクセスが良く、大阪市まで出やすいこともあり、近年は人口が増えています。
総人口は増加傾向にありますが、0~14歳の年少人口と15~64歳までの生産年齢人口は減少しており、総人口に対する割合も減っています。
一方、65~74歳の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者は増加の一途を辿っており、少子高齢化が進んでいることがうかがえます。
吹田市では世帯数も増加中で2015年には16万6,190世帯でしたが、2023年には18万99世帯にまで増加。
高齢者のみの世帯も増加しており、3万8,896世帯となっています。
その内、65歳以上の高齢者の一人暮らしが1万9,773世帯です。
また、高齢夫婦のみの世帯が1万9,123世帯となりました。
市内には高齢者だけの世帯が多いことが分かっています。
吹田市介護保険サービス利用は地域ごとに差がある
吹田市の要支援・要介護認定者は増えています。
高齢化率の上昇に比べると、認定率の上昇は緩やかなのですが着実に認定者は増えており、介護保険サービスの需要も高まっているのが現状です。
2017年には1万6,664人、2023年には1万9,215人と6年で約3,000人増加しました。
要介護度別にみると、要介護1認定者が一番多く3,875人でした。
2030年までには要介護認定者数は2万3,000人を超える見込みです。
5人に1人以上が認定を受け、介護保険サービスを利用する時代が来る前に、吹田市は安定して介護保険サービスを提供できるよう、介護サービス事業所などを増やしています。
介護サービスの整備圏域別にみると、要支援・要介護認定者は千里ニュータウン・万博・阪大地域が一番多く、認定率はJR以南地域が最も高い割合です。
吹田市では地域ごとの格差が出ていますので、地域別の対応も検討しています。
また、介護保険サービスの訪問介護や通所介護にくわえ、同等のサービスである訪問型サポートサービスや通所型サポートサービスを実施。
その他にもグループホームや特別養護老人ホームなどの施設も整備し、要支援・要介護どちらの階級でも介護保険サービスが気軽に利用できるよう、介護サポート環境を積極的に構築中です。
「地域包括ケアシステム構築のロードマップ」を作成して地域包括ケアシステムを推進
吹田市では、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年を見据え、行政・市民・事業者が一体となって地域包括ケアシステムを構築するための取り組みしています。
市は具体的な施策として、8つの基本目標を定めた「地域包括ケアシステム構築のロードマップ」を作成しました。
1つ目は『高齢者の生きがいづくりの支援や健やかな暮らしの充実』で、高齢者の仲間づくりや交流などを促進するため、高齢者生きがい活動センターや地区公民館での地域住民の活動を支援。
2つ目は『相談体制の整備』で、地域包括支援センターなどの高齢者向けの相談窓口を設置。
気軽に高齢者や家族が相談できるようにしています。
3つ目は『介護予防活動の推進』で、生涯学習や健康体操、スポーツ活動を実施し、高齢者の健康寿命を延伸しています。
4つ目は『自立した暮らしを実現・維持するための支援』で、訪問介護などで自宅生活を送る高齢者の生活をサポート。
5つ目は『認知症支援』で、認知症高齢者のいる家庭が孤立しないようにサポートするべく、認知症サポーターを育成したり、認知症高齢者とその家族が気軽に話せる相談窓口やカフェを開催したりしています。
6つ目は『在宅での医療と介護の連携』で、訪問診療や看護、訪問介護が同時に利用できる環境を整備。
7つ目は『安全かつ安心な暮らしの実現』で、住宅のバリアフリー化工事費用の助成を実施しています。
8つ目は『介護保険サービスの維持・充実』で、介護保険サービスが利用しやすい環境を構築中です。
吹田市は高齢者サポートを目標ごとにまとめ、それぞれの実現に向けて動いています。
『吹田市民はつらつ元気大作戦』で介護予防をサポート
吹田市は、高齢者が年々増え続け、今後も増加の一途を辿ると推測されています。
要支援・要介護認定者も増え、介護保険サービスの利用者も増えているのが現状です。
そのため、健康寿命を延ばし、一人でも介護を必要としない人を増やすため、高齢者の介護予防活動を普及・推進し、増大する介護保険サービスの費用を抑えていくことが吹田市の課題と言えるでしょう。
吹田市は65歳以上の人の健康を支え、介護予防を推進するための事業『介護予防・日常生活支援総合事業』の一環として『吹田市民はつらつ元気大作戦』『高齢者安心・自信サポート事業』を推進中です。
これらの事業は、高齢者も含めた地域住民が、自発的に介護予防活動に取り組む環境づくりが目標で、そのため、地域グループで取り組む「いきいき百歳体操」などの活動支援講座、養成講座を実施し、介護予防活動のリーダーとなるボランティアやサポーターの養成を行っています。
高齢者が参加しやすいよう、介護予防活動を市内各地で実施。
「はつらつ体操教室」「いきいき百歳体操」「お口からはじまる健康教室」「認知症予防教室」などの介護予防に繋がる教室が開催されています。
また、地域グループが希望すれば、介護予防や健康維持について学べる出前講座も実施。
地域密着型の介護予防活動を行っているのが吹田市の特徴です。
ただ、2016年度の調査によると、『介護予防活動に参加したことがない』と答えた人が29.5%にものぼっており、吹田市は介護予防活動の普及活動にも力を入れています。
「福祉オンブズパーソン」が福祉サービスを公正に調査
吹田市では高齢者の悩みを解決するため、色々な相談窓口を作っています。
近年、福祉保健サービスに関する苦情を調整する『吹田市福祉保険サービス苦情調整委員(オンブズマン)制度』を導入しました。
大阪府ではまだこの制度を設置している都市は少なく、吹田市が高齢者福祉に力を入れていることが分かります。
これは、市が実施している高齢者向けの福祉サービスを利用した際に感じた不満や苦情を申し立てることができる制度で、「福祉オンブズパーソン」と呼ばれる苦情調整委員が中立・公正な立場で調査を行い、必要な場合は市に対して改善のための勧告を行います。
「介護医施設で職員にいじめられる…でも直接言ったら更にいじめられそうだし…」といった場合に、大きな力となる制度です。
福祉総務課が受付を行っており、直接福祉オンブズパーソンと面談します。
相談は予約制ですが無料です。
不満を感じた日から1年以上たったものは受け付けてもらえませんので、早めに相談すると良いでしょう。
また、地域包括支援センターでは高齢者やその家族、地域住民の相談に応じています。
「最近すぐ近くに住んでいるおじいちゃんの姿を見ない」といった報告や通報も受けつけており、気になることは何でも相談できるのが魅力です。
その他にも吹田市は「健康電話相談」や「難病生活相談」「法律相談」などを行っていますし、吹田市社会福祉協議会では「福祉総合相談」や「心配ごと相談」「ボランティア相談」を実施。
地域の相談員がいろいろな相談に応じています。