神戸市に次いで兵庫県内では介護施設が充実

兵庫県の南東部に位置し、東に商都の大阪市、西に住宅都市の西宮市と隣接する尼崎市。
古くは戦国時代、大阪が政都だった頃から、西を守る拠点として栄えてきた都市です。
近代では、阪神工業地帯の中核を担う工業都市として、街に立ち並ぶ煙突が市民の“誇り”として愛されてきました。
兵庫県内で老人ホームが充実しているのは、やはり県庁所在地の神戸市ですが、尼崎市が次いで充実した市と言えるでしょう。
その数もさることながら、介護保険の施設サービスである特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設をはじめ、介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、高齢者住宅などがまんべんなく設置されており、ニーズに合わせて選択できる幅広さがあります。
利用料に関しても、神戸市や西宮市、芦屋市などの高級住宅街よりは比較的低額のところが多いようです。
例えば、住宅型有料老人ホームや高齢者住宅では、月額利用料が15万円台からといった施設もあります。
一方で、入居一時金が2,000万円超、月額利用料が18万円からの高級住宅型有料老人ホームもあるなど、設備やサービス内容によって幅広いラインナップとなっています。
日本有数の工業地帯として、かつては公害問題なども起こった尼崎市ですが、昨今では水と緑が豊かな自然環境に満ちた街づくりを目指し、「尼崎21世紀の森」構想をもとに整備が進められています。
その甲斐もあり、2000年には建設大臣賞「蘇る水100選」を受賞するなど、環境面での住みやすさは徐々に上向いてきています。
一方でJR尼崎駅は、神戸や明石、姫路、福知山方面や、大阪、京都、京橋、四條畷方面からの電車が交わるターミナル駅としての役割を担っているなど、関西の交通の要所として重要な役割を果たしています。
電車はJR・阪急・阪神の各路線が巡り、市営バスも市内の全域で運行。
公共交通機関を使えば行けないところはないというほど、交通手段が充実しています。
つまりさまざまな面から、高齢者やその家族にとって住みやすい環境が整っているのが尼崎市であり、ここでの老人ホームに入居するにあたっては、メリットが多いでしょう。
兵庫県内で老人ホームへの入居を考える際には、神戸市や西宮市だけでなく、尼崎市も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
尼崎市の高齢者人口は2040年には15万人を超える見込み
高齢者の割合は全国的に増えているのは皆さん御存知だと思います。
尼崎市も総人口は緩やかに減少中ですが、高齢者人口は増加しています。
2013年の調査では総人口46万7,673人のうち、高齢者数は11万3,539人、そして2017年の調査では46万2,520人、高齢者数12万5,574人、2023年には45万8,895人、高齢者人口12万6,197人となっています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2017年から2023年の6年の間、総人口、高齢者人口共にほぼ横ばいで推移しています。
65歳以上の高齢者人口割合である高齢化率も、2013年は24.3%だったのが、2023年には27.5%まで上昇しています。
さらに高齢者の中でも75歳以上である後期高齢者の割合を見ると、2013年は11.2%、2017年は13.2%、2024年には15.5%となっており、11年間で約4%上昇しています。
尼崎市は後期高齢者も含めて、高齢者の割合が着実に増えている状態なのです。
この数字は急激に上昇しており、尼崎市の高齢化率は、今や全国平均や兵庫県の高齢化率を上回っています。
後期高齢者の数も、2014年までは全国や兵庫県の後期高齢者数を下回っていましたが、その後、急速に増加し続け、2016年辺りから兵庫県を上回るようになり、2017年には全国を上回りました。
尼崎市内の高齢化率を地区別に見てみると、大庄地区が31.7%、中央地区29.8%、小田地区28.5%と高くなっています。
一番低いのが園田地区の24.2%ですが、全国的に見ても高齢化率が高いのは間違いなく、現在の尼崎市は高齢者の多い街と言えるでしょう。
尼崎市の要支援・要介護認定者数は3万人を超えた
尼崎市の要支援・要介護認定者数は2013年2万4,262人、2017年2万7,437人、2023年には3万953人となっており、11年間で6,691人増加、3万人を突破しています。
2013年から2015年までは毎年1,000人以上増加していましたが、2016年以降の増加率は緩やかになっています。

中でも、要介護1・2の認定者数が多く、要介護1は5,456人、要介護2は4,786人となっています。
尼崎市は要支援・要介護認定率も高く、これは介護保険サービスが利用できている人が多いということなので、尼崎市の介護支援サービスの普及はうまくいっているといえるでしょう。
居宅サービスも普及しており、居宅サービス受給者は2010年には1万3,740人、2024年には2万3,023人と14年で約1万人増加。
また、施設介護サービスは2010年には2,516人、2024年には3,236人と緩やかに増加しています。
このように、施設サービスの受給者数自体は増えているのですが、施設サービス受給者の割合は減っています。
施設サービス受給者の割合は全国的にも兵庫県全体としても減少傾向にあるのが特徴で、全体的に年々減少する中で、特に尼崎市の施設サービス受給者の割合は、全国平均や兵庫県平均を下回っています。
居宅サービス受給者の割合は増え、施設サービス受給者の割合が減っているということから、自宅介護で暮らしている高齢者が多いということが分かります。
「高齢者の生きがいづくり」を目的に地域包括ケアを促進

現在、全国の地方自治体が「地域包括ケアシステム」という介護支援を実施しています。
基本的に地域包括支援センターやケアマネージャーといった相談係が、さまざまな高齢者向けのサービスをコーディネートしてくれるシステムです。
介護支援の活動は、かかりつけ医や地域の連携病院などによる医療的なサポート体制、訪問介護や訪問看護、介護予防サービスなどの居宅サービス、介護老人福祉施設などの施設サービス、高齢者の住宅確保など多岐に渡っています。
特に尼崎市は、高齢者含め一人暮らしの世帯が多く、訪問介護や通所介護などの居宅サービスを利用する人が多いのが特徴。
今後も高齢者が増えるとともに、高齢者の一人暮らしの世帯が増えますので、尼崎市は居宅サービスを中心に、介護支援を更に充実させていく必要性を感じています。
実際、市はさまざまな介護支援活動を行っており、市内に住む高齢者が快適にサポートを利用できるように努めています。
支援内容は徐々に増えており、高齢者が暮らしやすい街になりつつあると言えるでしょう。
さらに、介護予防にも目を向け、高齢者の健康維持サポートも積極的に行っています。
各地区で老人クラブやNPO団体、ボランティアグループなどによる「高齢者の生きがいづくり」を目的としたお茶会やサークル活動、体操教室といった介護予防支援活動が実施されており、尼崎市もそういった活動を支援しています。
介護予防のための「いきいき百歳体操」を実施している

尼崎市は高齢者の生活支援として、介護予防・生活支援サービス事業を実施しています。
さまざまな高齢者サポートをしており、特に尼崎市は介護予防を目的とした生活支援サービスが充実しているのが特徴です。
「おいしく食べよう健口(けんこう)教室」や 「いきいき百歳体操」、「高齢者ふれあいサロン運営費補助事業」、「いきいき健康づくり事業」、「コルセット・あんま・はりサービス」などを開催し、自宅で生活する高齢者が元気に過ごせるようにサポートしています。
「おいしく食べよう健口(けんこう)教室」は市内の介護サポート団体が開催するイベントなどで、栄養士や歯科衛生士が食事や口腔内の健康などについて教える体験学習会を実施。
「コルセット・あんま・はりサービス」ではコルセットの支給やあん摩、マッサージ、はり・きゅうの施術料金の助成をしています。
「皆で体操する『百歳体操』に週一通い出したら、生活にリズムができて元気になった」という人も多いです。
また、要支援・要介護認定を受ければ訪問サービスなどが利用できます。
人によって利用可能回数は違いますが、料理や掃除といった家事サポートもしてもらえるので便利です。
市が行う「いきいき百歳体操」などの一般介護予防事業のサービスは「65歳以上で生活に不安を感じている人」なら誰でも利用可能。
その他にも「このサービスを使えたら有り難いなぁ」と思う介護予防・介護支援サービスがあるので、要支援・要介護認定を受けて無い人も地域包括支援センターに相談してみると良いと思います。
尼崎市の福祉サービス運営適正化委員会とは?

介護サポートや福祉サービスを利用した際に、トラブルが起きることもあるでしょう。
「もっとこうして欲しい」といった希望も出ると思います。
そういった苦情や意見は「さまざまな相談ごと」に分類されており、基本的に地域包括支援センターが窓口になっています。
介護のこと、家族のこと、お金のことなど…近年、高齢者の相談内容もより複雑になっていますが、全て地域包括支援センターに相談して構いません。
支援センター内にそれぞれの分野に詳しいスタッフがおり、内容に合わせて相談に乗ってくれます。
「初めてヘルパーさんに来てもらったけど、料理が下手すぎて…変えて欲しい」などの介護サポートに関する相談から、「家族に声を荒げてしまう」といった心の問題や家族の問題まで相談できますし、「オレオレ詐欺かも?」「お金が無い」といったトラブルや金銭についての悩みなど、何でも相談可能です。
また、高齢者だけでなく、周囲の人々も相談できます。
「最近隣の●●さんを見かけないんですが…」といった心配の声も、地域包括支援センターは受け止めています。
身体などの事情で地域包括支援センターに行けない人は、電話で申し込めば支援センターのスタッフが訪問してくれます。
相談全般に加え、介護予防プランなども作成してもらえるので、利用すると良いでしょう。
地域包括支援センターの電話番号や場所が分からない場合は、区役所の介護保険課などでお住まいの地域の支援センターを教えてもらえます。
気になることがあれば、気軽に相談してみて下さい。