高齢者が老後を楽しむ史跡や神社仏閣が多数
鹿児島湾の西側を取り囲む形で、南北に広がる鹿児島市。
九州地方のなかでも特に大規模な都市で、有名な薩摩藩のおひざ元だった土地として知られています。
鹿児島市が古くから発展してきた理由はさまざまですが、平坦な土地が多く、自ずと経済や文化の中心地となってきたことは間違いありません。
今でもその名残は強く、工業や商業が活発に展開されています。
そのため、日々の暮らしには大変便利な土地といえます。
そして、娯楽や憩いを求める場合にも困ることはありません。
天文館地区のように、長年一大繁華街として栄華を極めてきた地区がありますし、近年はほかの場所にも発達した繁華街や商業地区が登場しています。
そして鹿児島城や異人館、城山公園や照国神社といった史跡や観光スポットが多く、余暇の楽しみ方が豊富な土地柄です。
交通事情は、近年利便性が増しています。
JRについては、既存の鹿児島本線・日豊本線・指宿枕崎線に加えて、九州新幹線が開通したことで福岡などへの移動が容易になりました。
また、市内にはバスの会社が多く、市営バスやコミュニティバスのほかに、鹿児島交通・南国交通・JR九州バス・いわさきバスネットワークなどが活躍しています。
鹿児島市の人口は何十年もの間伸び続けていますが、そのペースはどんどん落ち込んでおり、現在は横ばいに近い状況です。
近い将来、減少に転じる可能性があることは間違いありません。
幸いまだ、市内の高齢化率は2023年には28.4%と県全体や国全体の結果と比べてわずかに低い状態です。
もっとも少子化率は県全体の平均値とほとんど変わらない水準になっており、こちらの進み具合に同時に注意する必要が感じられます。
いずれにしても、九州でも有数の大都市であるため、市内に建てられている介護施設の数もかなりの数に達しています。
居住地域による制限はあるものの、施設の選択肢が豊富なことは大きなメリットでしょう。
コスト面を見ても高額な施設が目立つ一方で、極めて安価な施設も各地に点在しています。
とりわけ住宅型有料老人ホームに注目すると、入居一時金や月額使用料を合計して、20万円に満たない施設があちこちで見受けられます。
このほか、グループホームが急速に増えていることも特徴的です。
認知症の兆しがある場合は、正式な診察を受けてから相談に行くことをおすすめします。
2040年には高齢化率が35%を超える
鹿児島市は、他の市と同様に高齢化率が年々上昇しています。
2014年は総人口60万8,366人に対し65歳~74歳までの人口が7万1,526人、75歳以上の人口が7万979人で、高齢化率は23.4%でした。
2015年の高齢化率は24.2%。
2016年は65歳~74歳までの人口が7万6,373人、75歳以上が7万4,283人で、高齢化率は24.9%でした。
2014年と比べると、75歳以上の後期高齢者が大きく増加していることがわかります。
2017年には高齢化率が25.5%となり、鹿児島市にも4人に1人以上が高齢者という状況が訪れました。
さらに、2023年には総人口59万7,834人、高齢者人口16万9,601人、高齢化率28.4%と年々高齢化が進んでいます。
また、高齢者のいる世帯も増えており、2005年には総世帯数25万5,276世帯に対し、高齢者のいる世帯は7万5,509世帯。
2020年には総世帯数27万9,644世帯、高齢者のみの世帯は7万53世帯でした。
特に、高齢者の一人暮らし世帯が10年間でかなり増えている状況です。
鹿児島市だけでなく、鹿児島県全体でも高齢者が増えています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
鹿児島市は、総人口が減少し高齢者数は増え続けるなか、超高齢化社会の到来に向けて、高齢者が幸せに暮らせるような地域包括ケアシステムを構築中です。
要支援・要介護認定者はともに増加傾向にある
鹿児島市では高齢者の増加に伴い、要支援・要介護認定者数も増えています。
2014年には、要支援・要介護認定者の総合計数は3万24人で、そのうち要支援認定者が約9,000人、要介護認定者が約2万1,000人でした。
2015年の要支援・要介護認定者の総合計数は3万751人で、要支援認定者は9,347人、要介護認定者は2万1,038人でした。
そして2024年の要支援・要介護認定者の総合計数は3万5,488人でした。9年で1万人以上増加しており、要支援認定者・要介護認定者ともに増加の一途をたどっています。
あと数年のうちに4万人を超える可能性も。
要支援認定者・要介護認定者が利用できる介護保険サービスは、居宅サービスと施設サービスに分けられ、利用する場合どちらも基本的に費用の1割~2割分を負担することになりますが、利用できるサービスは豊富です。
居宅サービスは訪問介護・看護だけでなく、福祉用具のレンタル、訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護、訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーションなどさまざま。
住宅改修費の支給や福祉用具購入費の支給など、金銭的なサポートもあります。
また、通所系サービスは「通所介護」とも呼ばれるデイサービスだけでなく、通所リハビリテーション・介護予防通所リハビリテーションなどが利用可能。
鹿児島市では、自宅で高齢者向けのサービスを受けながら暮らしている高齢者が多く、通所も含めた居宅サービスの利用者も多いです。
一方施設サービスは、特別養護老人ホーム、短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)などが利用できます。
さらに、居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導や特定施設入居者生活介護・介護予防特定施設入居者生活介護などもあり、細やかな介護保険サービスで高齢者のさまざまなニーズに応えています。
筋力低下防止の体操を行う「よかよか元気クラブ」を実施
鹿児島市では、介護予防サービスが充実しています。
介護度を上げないためには、病気の早期発見・早期治療が肝心なので、高齢者が気軽に検診に行けるよう「元気いきいき検診事業」などを実施。
はり・きゅう施設の利用助成事業も行っています。
高齢者の作品展示やグラウンド・ゴルフなどが楽しめる「すこやか長寿まつり」なども開催し、高齢者の外出を促進。
各地の公民館や地域学習プラザでは、高齢者向けの体操クラブや「高齢者いきいき元気塾」などが開催されています。
筋力低下防止の体操を行う「よかよか元気クラブ」は、座っていてもできる体操で車イスの人も参加可能。
認知症対応型デイサービスや通所介護(デイサービス)でも、認知症予防になるゲームや、健康維持に役立つ体操などを実施しています。
また、健康維持のためには運動だけでなく食事も大事ですので、高齢者料理教室などを通して高齢者の食事改善サポートも行っています。
近年、かごしま市民福祉プラザにある鹿児島市社会福祉協議会ボランティアセンターが中心となり、「高齢者元気度アップ・ポイント事業」を実施。
これは、高齢者が活動に参加することでポイントが貯まり、ポイントは地域商品券に換えられる「高齢者いきいきポイント」を導入し、高齢者の参加を促す計画です。
特定健康診査や長寿健康診査を受診したり、介護保険施設でのボランティア活動や街の清掃活動などに参加したりすれば、活動に合わせたポイントがもらえるため、「やりがいがある」と好評です。
65歳以上で、要支援・要介護認定を受けていない人なら誰でも参加登録可能です。
鹿児島市は「高齢者の生きがいづくり」にも力を入れている
鹿児島市では、地域全体で高齢者を支え皆で元気に暮らしていけるよう、地域包括ケアシステムを構築しています。
地域包括ケアシステムは高齢者の健康維持サポート、介護予防・日常生活支援事業、高齢者の生きがいづくり、福祉サービスの充実、住環境の整備、認知症対策など、さまざまな角度から高齢者の生活をサポートするシステムです。
在宅介護のフォローにも目を向けており、紙おむつなどの助成事業や「心をつなぐ訪問給食事業」などを実施。
介護予防では健康体操や訪問相談などを行っていますし、認知症対策では認知症高齢者だけでなく、その家族や介護者を対象とした電話相談や、認知症サポーター養成講座などを行っています。
「高齢者の生きがいづくり」にも力を入れており、高齢者の就労支援や高齢者福祉バスの運行、敬老パスや友愛パス、友愛タクシー券の交付などを行い、高齢者が気軽に外出できる環境を整えています。
さらに、高齢者の孤立化を防ぐため、老人クラブの活動支援や、高齢者ゲートボール場の整備、愛のふれあい会食事業、地域ふれあい交流助成事業などを推進。
高齢者が心身ともに健康で生きていける社会を目指しています。
地域包括ケアシステムは、地域包括支援センターや高齢者福祉センターを中心に、鹿児島市健康福祉局のすこやか長寿部「長寿支援課」「介護保険課」「指導監査課」、鹿児島市保健所「健康予防課」などが窓口となり、高齢者の相談にも対応しながら、包括的なケアを行っています。
鹿児島市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
高齢者の増加にともなって、高齢者の相談も増加しています。
相談内容も多様化しており、鹿児島市はさまざまな相談窓口を設けることで対応しています。
地域包括支援センターである「長寿あんしん相談センター」が基本窓口となり、高齢者や介護者、地域住民の悩みを受け付け、必要であれば専門機関を紹介しています。
長寿あんしん相談センターは、市内17ヵ所に設置されており、直接相談だけでなく電話相談や訪問相談にも対応。
介護のこと以外にも健康のことや家庭内不和などのコミュニケーションに関する問題、振り込め詐欺なども含めた金銭問題など、あらゆる悩みが相談できます。
鹿児島市は、鹿児島県社会福祉協議会が運営する長寿社会推進部内に「福祉サービス運営適正化委員会」を設置し、福祉サービス利用支援事業の適正な運営と、福祉サービスに関する利用者からの苦情を受け付けています。
福祉サービスを利用するなかで「問題がある」と感じたサービス利用者は、まずサービス事業者に申し出ます。
そして、問題内容を聞いた委員会が必要な調査や助言を行い、問題を解決するシステムです。
その他にも、鹿児島市には心の健康問題について勉強したり相談ができる「こころの健康教室」や、シニア世代のヘルスプロモーション事業による「健康相談」、認知症高齢者向けの電話相談である「認知症オレンジプラン」など、さまざまな相談窓口を設置し、高齢者が気軽に相談できる環境を整えています。