過ごしやすい瀬戸内海式気候で、高齢者が心地よく過ごせる地
愛媛県の県庁所在地である松山市は、愛媛県の三分の一以上の人口が集中しており、四国全体で見ても最大の人口を抱える都市です。
2005年には北条市および温泉郡中島町を加え、さらに大きくなりました。
松山市は、旧松山城を中心に城下町として繁栄してきたエリアですが、道後温泉を中心とした歓楽街の歴史も持っています。
瀬戸内海に面した松山港を持ち、多数の旅客航路が利用できるほか、空港があるため、空路での移動も容易に行えます。
鉄道や道路・バスもよく発達しており、交通インフラが大変優れている都市です。
また、瀬戸内海式気候のため年間を通して温暖であり、高齢者が居心地良く暮らしやすい場所といえるでしょう。
松山市は、四国の中枢都市という役割を担っているだけではなく、中国地方全体で見ても大きな都市であるため、人の流入は昔から途切れることなく続いています。
とはいえ21世紀に入ってから、その伸びは緩やかになりました。
また、市内各地で人口の減少が相次いで報告されるようになり、松山市全体の人口が減少に転じるのも時間の問題であると数年前から指摘されています。
市内の高齢化率は、2007年に初めて20%に達しました。
それ以来じわじわと高齢化率は上昇し、2023年には28.7%を記録しています。
松山市当局も、少子高齢化の進行には危機感を抱いており、かねてより福祉政策に多額の予算を注ぎ込んできました。
幸い、松山市内で老人ホームや高齢者向け住宅を探すことは難しいことではありません。
大都市なので当然ではあるものの、定員に達していない施設を見つけることができます。
施設の種類も、各種有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホーム・特別養護老人ホームほか、選択肢が非常に豊富です。
建てられた年度や立地条件などの違いから、価格帯には幅がありますが、高額な施設でも30万円以下の月額使用料に収まることがほとんどです。
安い施設を探せば、入居一時金や月額使用料を合わせても、15万円以下で済むケースもあります。
自宅からの距離や、周囲の環境といった条件も含めて、焦らずに選ぶことが吉でしょう。
松山市の高齢化率は2023年には28.7%に到達
松山市の人口は、20世紀が終わる前から増加を続けており、2000年頃に50万人を突破しました。
ただし今後は、ゆっくりと減少傾向に向かうと推測されています。
高齢化率については、全国の平均値のあとを追うかのように伸びているところです。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2000年の段階では、市内の高齢化率はまだ16.7%、全国平均値は17.4%でした。
それから10年経った2010年には、市内の高齢化率は22.0%に、全国平均値は23.0%に上がっています。
その後高齢化は加速し、2023年時点では市内の高齢化率28.7%、全国平均29.1%に。。
松山市は、高齢化だけに目を向けるなら、まだほか地域と比べると深刻な問題に直面しているとはいえないでしょう。
しかしそれは、県庁所在地という背景を持つために、これまで人口がずっと流入してきたためといえます。
今後は人口が伸び悩むことが予想されているため、高齢化の問題は少しずつ顕在化していく恐れがあります。
また、高齢化と同時に少子化が進んでいるという事実にも目を向けなくてはなりません。
1996年の調査では、松山市の合計特殊出生率は1.39でした。
これは、県全体の数字と比べても全国の平均値と比べても低いです。
2006年に入ると、市内の合計特殊出生率は1.27に下がりました。
その後、愛媛県全体で出生率が若干改善されたため、5年後に1.38にまで回復しました。2023年時点では1.32です。
それでもまだ、楽観できる状況ではありません。
松山市では、少子化問題・高齢化問題どちらについても、油断せずに取り組んでいく必要があるといえます。
介護居宅サービスの利用者が多いことが特徴
松山市では、ほかの自治体と同様に高齢者人口の成長につれて要支援・要介護認定者の人数も増えています。
2024年には、3万1,653人にまで増えました。
現在の市内で一番多いのは、要支援1の認定者です。
2024年の集計では8,076人でした。
要介護1の認定者も多く、6,665人を数えています。
なお、2024年の各サービスの利用者数を確認すると、居宅サービスが71.9%、地域密着型サービスが19.2%、施設サービスが8.9%。
松山市では介護居宅サービスの利用者の多さが顕著です。
このような動きを踏まえて、市では地域密着型サービスをもっと利用しやすくなるように政策を進めています。
グループホーム・小規模特別養護老人ホームに関して、必要利用定員数を毎年定めるようになりました。
2016年は、前年と比べてグループホームでは162人、小規模特別養護老人ホームでは290人必要利用定員数を増やしています。
高齢者の自立を促進する身体介護や生活援助サービスが充実
松山市の介護予防サービスは現在、「介護予防・日常生活支援総合事業」の枠内で続けられています。
要支援1や2と認定された高齢者や、地域包括支援センターの基本チェックリストで介護予防が必要と判断された高齢者は、市が提供する介護予防・生活支援サービスが利用できます。
その他の高齢者については、一般介護予防事業の範疇で提供されるサービスであれば、自由に利用することができます。
介護予防・生活支援サービスの中でよく知られているのは、介護予防型訪問サービス・生活支援型訪問サービス・介護予防型通所サービス・生活支援型通所サービスの4種類でしょう。
介護予防型訪問サービスでは、あくまでも要支援者が要介護状態に陥ることを防止することが目的となっています。
したがって、利用者の自立を促進するサービスが中心となっていますが、身体介護や生活援助サービスを受けることは可能です。
同居している家族がいる場合は、一部の例外を除いて利用できないことになっています。
生活支援型訪問サービスでは、掃除や洗濯といった生活援助サービスが行われます。
介護予防型通所サービスは、デイサービスセンターで行われます。
食事や入浴の介助や機能訓練、レクリエーションなどが主な内容です。
なお、レクリエーションだけを要望するときは、生活支援型通所サービスを利用するとよいでしょう。
一般介護予防事業では、市内の高齢者のために運動機能や口腔機能の訓練・向上や栄養改善などのサービスが行われています。
在宅医療・介護を推進する松山市の地域包括ケア
現在のは、地域包括ケアシステムの構築を2025年までに進めることを目標としています。
2025年は、団塊の世代が後期高齢者の仲間入りをする時期にあたります。
後期高齢者の急増に対処するために、介護や医療をはじめ、高齢者の生活に必要なサービスすべてが一元的に提供できるシステムを構築しようと動いているのです。
2017年から市では、地域包括ケアシステムを構成する、以下の4種類の事業の推進を決定しました。
「在宅医療・介護連携推進事業」では、自宅での生活を続ける高齢者のために、介護と医療の情報を共有するための仕組みを目指します。
なおこの事業は、地域包括支援センターの強化をはじめとした、相談支援体制の整備事業と同時に進められています。
「認知症施策推進事業」では、認知症がはじまった頃の高齢者を集中的に支援することが最大の目標です。
専門家で構成される支援体制の組織化や、必要なサービスの提供のために活動する推進員の設置が予定されています。
「介護予防・日常生活支援総合事業」では、従来の訪問介護サービスと通所介護サービスを新たな事業に移行して一元化します。
各地域の実態に合わせた支援サービスを効率よく提供します。
「生活支援体制整備事業」では、各地で高齢者のために生活支援サービスを引き受ける人材を養成します。
ボランティアの発掘や、地域におけるネットワークの構築に寄与するコーディネータの配置が具体的な活動内容です。
松山市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
松山市民が、介護サービスに関して苦情や要望・相談事などを抱えたときは、県全体の相談窓口を利用するとよいでしょう。
愛媛県の社会福祉協議会は、松山市内に所在する組織のため、松山市民にとっては利用しやすい団体です。
この協議会は、介護だけの相談窓口ではありません。
福祉サービス全体に関する窓口として機能しています。
いずれにせよ福祉に関する苦情があるときは、協議会では3通りの方法を提唱しています。
1番目は、苦情受付担当者を利用する方法です。
これは、各施設が配置している担当者を通して申し立てる方法です。
苦情受付担当者は一番利用しやすいですし、さまざまな助言が期待できます。
2番目は、第三者委員に頼る方法です。
施設側に苦情を持ち込んでも思わしい結果にならなかったときは、利用するとよいでしょう。
外部の公平な立場から、あらゆる問題を判断します。
苦情受付担当者に代わりに報告をお願いすることも可能です。
3番目は、運営適正化委員会に持ち込む方法です。
これは社会福祉協議会の内部に設けられた委員会です。
苦情受付担当者や第三者委員だけでは解決し切れなかった場合を中心に活動しています。
運営適正化委員会は、相談専用の電話番号を設置して各地から相談事を受け付ける体制をとっています。
原則として土日祝日でなければ、朝から夕方まで利用可能です。
受けている介護サービスについて何か困ったことがある場合、特に施設側に直接訴えても解決しそうにない場合は、電話するとよいでしょう。