優秀な都市計画の下で、要介護者にも明るい未来が待っています
富山市は富山県の県庁所在地であり、県内で一番広い面積を有しています。
北は富山湾、南は岐阜県・長野県に面しており、山林や農地から住宅地や商業地・工業地まで、とにかく雑多なエリアを内包しているのが特徴です。
つい10年前の大合併以前は、今よりも随分規模が小さく現在とは異なる街でした。
富山市は、以前から独自の都市開発計画のコンセプトをもとに、合併を繰り返し大きく成長してきました。
「国際会議観光都市」や「国連エネルギー効率改善都市」の指定を受けており、未来に向けて多様な可能性を秘めた、北陸地方を代表する都市といえます。
都市を構成する設備があらゆる点で洗練されているため、交通システムの伸張についても目を奪うものがあります。
空路は「富山空港」、海路は「伏木富山港」が利用でき、鉄道では「JR西日本」と「JR東海」の両方を利用できるという、稀有なエリアです。
もちろん、「北陸新幹線」が使えることは忘れてはならないでしょう。
そのほか、富山地方鉄道が本線を中心に複数の路線を運行しています。
そして本数は限られているものの、「富山ライトレール」も頼もしい地元住民の足とされています。
道路事情に目を向けると、「北陸自動車道」「能越自動車道」「東海北陸自動車道」のインターチェンジが市内に設置されており、国道と県道が合わせて30本以上開通しています。
市内を走行するバスは、「富山地方鉄道」と「富山地鉄北斗バス」以外に民間主体の路線はありませんが、コミュニティバスのコースが10種類以上敷かれている点は、大いに注目に値するでしょう。
富山市は、富山県と北陸地方の要衝として、かつて市内の人口は順調に伸びていました。
しかし2000年以後は人口の伸びが横ばい状態になり、近年では若干の減少傾向にあります。
市内の高齢化率は、2023年に30.1%をマークしました。
これは、県全体の総合値と比べると少し低めの数字です。
しかし少子化率は13.2%と、県全体の数字とほとんど変わりなく、若年層の人口が増えるような施策が求められています。
それに加えて、福祉政策のボリュームアップが不可欠になっていることは明白で、その点は要介護認定者を受け入れる施設の状況を見るとわかりやすいでしょう。
今の富山市内では、宅地を中心にありとあらゆる介護施設が急増しており、個々の家庭で目的に合わせて施設が選べるようになっています。
少し時間をかけて条件を絞り、見学先を選び出すことが大切でしょう。
富山市では2023年に高齢化率が30.1%になる
富山市は、「越中富山の薬売り」や「富山の朝市」で有名な中核都市で、ホタルイカや温泉が観光として人気です。
富山市の面積は、富山県の29.24%を占めており、ひとつの市町村が県に占める面積の割合としては全国で一番広いです。
富山市でも、他の地域同様に高齢化は進んでいます。
国勢調査によると、富山市の総人口は2010年の約42万人が最大で、その後は減少中。
2023年時点では約40万人にまで減少しました。
一方65歳以上の高齢者人口については、2010年に11万7,045人、高齢化率は24.5%でした。
2023年時点では高齢化率30.1%にまで上昇しています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
なお、世帯数の内訳を見ると全17万1,917世帯のうち高齢者のみの世帯は3万9,739世帯。うち、一人暮らし世帯は1万9,338世帯です。
一人暮らしの高齢者の自立した生活をサポートするため、富山市では生活支援や声かけなどを行っています。
全国的に、認知症高齢者も年々増えています。
2012年の調査によると、全国の認知症高齢者数は約462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人は認知症となりました。
将来推計では、2025年には730万人となり、高齢者の約5人に1人は認知症となると推測されています。
この将来推計を富山市に当てはめると、2025年には2万4,600人に。
そのため、富山市は認知症高齢者とその家族の支援体制の整備を急いでいます。
介護サービスの中でも「福祉用具貸与」サービスが人気
65歳以上の第1号被保険者数は、2017年の調査では2万2,266人でした。
2020年には926人増えて2万3,192人になり、2025年には約2万6,000人になると予測されています。
市民を対象としたアンケートで、「望ましい介護の生活形態は?」と質問したところ、「ヘルパーによる訪問介護や、日帰りで施設に通うデイサービス、短期間だけ施設に宿泊するショートステイなどのサービスを活用しながら、自宅で暮らしたい」と答えた人が30.7%、「家族の介護を受けながら、自宅で暮らしたい」が23.6%となっており、いずれも自宅で暮らしたい人が半数を超えています。
実際、富山県では在宅介護をしている人が多く、介護ベッドや車イスなどが借りられる「福祉用具貸与」サービスが人気です。
2018年には、福祉用具の価格を国が公表し、適正価格で借りられるようになります。
しかし、在宅介護に関してのアンケートによると、自宅で介助や介護をしている人の年齢は「65 歳以上」が49.4%、「75歳以上」が23.6%となっています。
在宅介護をしている人の約半数が高齢者となっており、老老介護の問題が浮き彫りになっています。
そのため、富山県では訪問介護や訪問看護などの居宅サービスや、デイサービスや通所リハビリテーションといった通所型のサービス、そして認知症対応型デイサービスや夜間対応型訪問介護看護などの地域密着型サービスを充実させ、一人暮らしの高齢者や在宅介護者をサポート。
介護度が上がり、自宅での生活が厳しくなった場合も、ケアハウスや特別養護老人ホームなどに入居して快適に暮らせるよう、介護施設の増設を検討しています。
「高齢者農園」では農業を通じて介護予防ができる
富山市では、歳を重ねてもずっと現役で元気に楽しく生きていけるよう、介護予防に力を入れています。
富山市高齢者保健福祉実態調査の結果によると、85歳~89歳の48.0%、90歳以上の51.8%の人が、「昨年と比べると外出回数が減っている」と答えています。
その理由には「足腰などの痛み」「外での楽しみがない」「交通手段がない」などが上がっています。
そのため、富山市では足腰を鍛える体操教室の開催や生きがいづくりなどを行い、高齢者の外出支援を推進中です。
富山市の介護予防センターでは、温泉水を使った水中運動、温熱療法、リハビリテーションなどの運動プログラムを実施。
高齢者だけでなく、メタボなどで介護予防が必要な人なら、40歳から利用できるのが魅力です。
体を鍛えることで足腰の痛みを予防・軽減し、寝たきりを予防します。
生きがいづくり事業としては、公民館や老人憩いの家、老人福祉センターなどで生け花や気功など、さまざまなことが学べる「シニアライフ講座」を開催。
「高齢者農園」では、格安で農地を貸し出し、農作物を育て収穫する楽しさが味わえます。
また、高齢者ふれあい入浴券を交付したり、老人クラブ「長寿会」や「生きがい対応型デイサービス」をなど閉じこもり防止につながる活動を支援しています。
さらに長寿福祉課が窓口となり、自宅生活をしている要介護1以上の高齢者などを対象に、外出支援タクシー券「おでかけタクシー券」を交付。
高齢者の外出や社会参加を促進しています。
緊急時でも高齢者がSOSを出せる地域包括ケアを展開
2017年に介護保険法が一部改正され、地域包括ケアシステムの推進がより重視されるようになりました。
富山市でも、制度改正などを踏まえながら「富山市高齢者総合福祉プラン」を策定し、高齢者保健福祉政策を推進しています。
その一環として、介護を必要とする高齢者が快適に暮らしていける環境作りを目的に、介護、医療、住まい、介護予防、生活支援サービスなどあらゆる分野が連携して適切な支援を行う「地域包括ケアシステム」を構築中です。
2017年に実施した富山市高齢者保健福祉実態調査の結果によると、高齢者だけの世帯が「必要と思っている見守りや支援」は、「緊急時の連絡・援助体制」が31.9%と一番多く、需要が高いことがわかりました。
富山市では、緊急連絡装置や福祉電話を貸与し、いざという時にSOSが出せるよう整備しています。
調査結果の「生活に関する不安について」は、「病気の不安」が58.2%と一番高く、次いで「認知症の不安」が51.7%、「寝たきりの不安」が48.6%と続きます。
富山市では、予防接種費用の一部助成や、高齢者向けの格安の健康診断、栄養などの勉強ができる健康教室などを実施。
認知症対策として、認知症予防教室や認知症についての講座の開催や、認知症高齢者とその家族を支援する事業などを行っています。
また、「ねたきり・ひとり暮らし高齢者寝具乾燥消毒事業」では、寝たきりになっても安心して暮らせるよう、寝たきりや一人暮らしの高齢者を対象として、寝具類の乾燥消毒や丸洗い消毒をして生活をサポートしています。
富山市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
富山市では、さまざまな高齢者相談を行っています。
「富山市社会福祉協議会」では、総合相談窓口を設置し、介護や福祉サービスだけでなく生活や人間関係のトラブルなどあらゆる相談に対応。
高齢者だけでなく、家族や親族、地域の住民も相談できます。
「生活困窮者自立支援事業」も行っており、「生活費が足りない」「家賃が払えない」といった内容にも対応しています。
社会福祉協議会は、「成年後見人制度」や「日常生活自立支援事業」を実施しており、「歳のせいかサービス申し込みなどの手続きが難しくなってしまった」「通帳を失くしてしまう」といった手続きや金銭管理についての相談ができます。
サービスは有料ですが、社会福祉協議会のスタッフが代理で金銭管理や手続きをしてくれるので便利です。
また、公民館や社会福祉センター内にある「心配ごと相談所」では細かな相談にも乗っており、相談先を迷った場合でも話を聞いてもらえます。
法律相談も実施しているため、離婚問題や土地の相続問題など、難しい相談も可能です。
さらに「まちなか総合ケアセンター」には、訪問診療を行う在宅療養支援診療所「まちなか診療所」や、在宅医療と介護の連携に関する相談窓口などがあるため、「介護も医療ケアもして欲しい」などの相談ができます。
介護予防についての相談は「富山市角川介護予防センター」が担当していますし、介護する側である介護者の「心の相談」は富山市保健所の保健予防課が受け持っています。
そのほかにも、認知症相談や高齢者就労相談などさまざまな相談窓口がありますので、気になる人は富山市保健所の保健予防課保健係に聞いてみると良いでしょう。