地価の低いエリアでは有料老人ホームでも低額で利用が可能

長崎県北部の北松浦半島の多くを占める佐世保市。
県内では、南部に位置する県庁所在地である長崎市と並んで、とてもインパクトのある自治体です。
20060年に五島列島の北部が編入されたため、面積や人口がさらに増加しました。
造船業が主産業のエリアというイメージが強いですが、ほかにも市内に拠点を持つ企業は相当に多く、また観光業もさかんです。
西海国立公園のような自然を活かした施設もあれば、ハウステンボスのようなスケールの大きなテーマパークもあって、飽きない楽しみを見いだせます。
鉄道の種類は限定的ですが、JRの佐世保線や大村線、松浦鉄道の西九州線が大量の人員を毎日運んでいます。
また西九州自動車道などの重要な道路の利用が容易で、タクシー会社やバス会社が多数入り込んでいるエリアです。
市内の移動だけに注目しても、市営バス・させぼバス・西肥自動車と種類が豊かです(宇久観光バスのように、離れた島の内部で営業を行っているケースもあります)。
佐世保港や相浦港などから海路を使って移動するという手段も使えます。
佐世保市内の人口は、1970~80年代のようにほぼ一定だった時代がかつてありました。
しかし昭和から平成に移り変わるころから減少がスタートしています。
特に21世紀に入るとそのペースが勢いを増しており、数年以内に25万人を切る可能性についてよく言及されるようになりました。
もっとも長崎を代表する行政区であることも手伝って、県内で見るなら少子化・高齢化はともに顕著な部類には入りません。
高齢化率は2023年に32.5%。
これは県の平均値より若干低めです。
少子化率は同年に13.6%と集計されており、県の総合値と完全に一致しています。
要介護認定者数は近年、年に数百人、ときには1,000人に近いペースで増えており、ケアサービスを提供する施設の供給は、官民が力を合わせるように猛スピードで進められてきました。
市内では完全に公営の施設から民間の業者が手掛ける施設まで、いろいろなタイプを見つけることができます(ただし、住宅型有料老人ホームは比較的少なめです)。
特にサービス付き高齢者向け住宅は、入居費用が極端に安い施設がいくつもたてられており、一見の価値があるでしょう。
介護付き有料老人ホームの場合でも、ある程度地価の安いエリアで探してみると拍子抜けするくらい安い施設が見つかることがあります。
広いエリアですから結局、施設の特徴にも幅があるわけです、その点を常に意識しながら、施設探しに臨むとよいでしょう。
佐世保市では高齢化率が32.5%に到達
佐世保市は長崎県の北部にある中核市。
長崎県内では長崎市に次いで人口の多い街となっています。
在日米軍の基地などがあり、佐世保バーガーやレモンステーキといったご当地グルメも発達。
西海国立公園に指定された「九十九島」やテーマパーク「ハウステンボス」などの観光資源も豊富で、毎年多くの観光客が訪れています。
また、JR佐世保駅や佐世保港のあるエリアには、多彩な商業施設が建ち並び、市内外の人々で賑わっています。
そんな佐世保市ですが、2005年と2010年は市町村合併をしたため、総人口は一時的に増加。
しかし、1960年の26万2,484人をピークに緩やかに減少中です。
世帯数は増え続けており、65歳以上の高齢者がいる世帯も増加。
特に一人暮らしの高齢者が増えています。
他市同様に高齢化が進んでおり、2023年は総人口24万473人に対し、65歳以上の高齢者人口は7万8,175人。
高齢化率は32.5%で、4人に1人以上は高齢者という状況です。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
今後、人口の多い60代前半が高齢者となっていくので、佐世保市は高齢化率の上昇に拍車が掛かると予測。
一方で0歳から14歳までの年少人口は減っており、少子高齢化が進んでいます。
将来推計では、2022年以降は65歳から74歳までの前期高齢者は減り、75歳以上の後期高齢者は増加するとされています。
後期高齢者が増えると介護保険の要支援・要介護認定者も増えるので、佐世保市は介護保険サービスなどを提供し、切れ目のないサポートができるよう、提供体制の整備に努めています。
要介護2・3の高齢者が増加傾向にある
佐世保市では介護保険の要支援・要介護認定者は2015年まで増加していましたが、保険制度の改正などにより、認定者でなくとも市の支援サービスが受けられるようになったこともあり、その後は減少傾向に。

認定者の介護度をみると、要支援認定者は増加傾向、要介護認定者は減少傾向にありますが、要介護2・3の認定者だけは増加しています。
市内では自宅で暮らす高齢者が多く、在宅介護をしている家族も多いのが現状です。
介護者側の負担も減らすべく、一時的に入居出来る「短期入所介護(ショートステイ)」などを充実させています。
また、理学療法や作業療法ができる「通所リハビリテーション(デイケア)」や、車イスなどが借りられる「福祉用具貸与」、夜間訪問で夜にも対応してもらえる「夜間対応型訪問介護」などの介護保険サービスも需要が高くなっています。
佐世保市には4つの有人島があり、2017年の高齢化率は宇久(宇久島と寺島)が53.4%、黒島が53.0%、高島が34.1%。
佐世保市全体の32.5%に比べると高齢化率が深刻です。
高齢者の多さに比例して、要支援・要介護認定者も多いのですが、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や小規模多機能型居宅介護などが整備された宇久島以外の3島(寺島・黒島・高島)では介護サービスの提供体制が十分でないため、介護保険サービスがあまり普及していません。
佐世保市では離島渡航費の助成などを行い、本市での介護保険サービスを受けてもらいつつ、既存のサービスの充実に急いでいます。
高齢者の孤立を防ぐ「見守りネットワーク」強化に注力
佐世保市では、高齢者が安心して暮らせる社会を実現するため、地域包括ケアシステムを構築中です。

佐世保市では、高齢者の増加にともない、一人暮らしの高齢者も含め、高齢者のいる世帯が増加し続けています。
そのため、佐世保市は高齢者の孤立化や孤独死などを防ぐ「見守りネットワーク」の強化に注力。
地域での声かけを行うボランティア団体などを支援し、絶え間ない見守りを実現しようとしています。
また、特別養護老人ホームやグループホームなどの介護施設を整備・増設し、介護や認知症ケアが必要な高齢者の住まいを確保。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護や、認知症対応デイサービスなどの整備も進めています。
配食サービスにより、一人暮らしの高齢者などで、栄養が上手く取れていない人をフォロー。
配食の際に安否確認も行うため、怪我などの早期発見に繋がっています。
そして、在宅介護をしている家族などの介護者をケアするため、介護のやり方などを学べる介護教室を開催したり、おむつの購入費を支給したりしています。
他市同様、佐世保市でも認知症高齢者が増加傾向にあります。
認知症高齢者とその家族への理解を深めるため、認知症サポーターの養成講座を実施。
2022年の時点で2万2,000人の認知症サポーターを養成しました。
サポーターによる支援の輪は年々広がっています。
さらに、認知症高齢者とその家族が受けられる介護サービスや地域のサービスをリスト化した「認知症ケアパス」の普及や、認知症初期集中支援チームの設置による認知症の早期発見・早期治療の実現などを目指しています。
介護予防のリーダー「けんこう運動支援隊」の育成も推進
佐世保市は、高齢者がいくつになっても元気に過ごせるよう、介護予防や介護の重度化防止活動を行っています。
介護が必要になった原因について調べたところ、「骨折・転倒」が一番多く、「高齢による衰弱」、「リウマチなどの関節の病気」が続くことがわかりました。

そのため、骨折や転倒を防ぐべく、筋力やバランス力などの増強につながる介護予防の体操教室を実施。
定期的に体操教室に参加することは、コンスタントな外出を促し、閉じこもり防止にもつながっています。
主に介護予防体操の一つである「いきいき百歳体操」では、重りなどで負荷をかけながら30分程度の運動を実施。
仲間とおしゃべりしながら行うため、「楽しい」といった感想も出ています。
また、リーダーとして「いきいき百歳体操」を行う「けんこう運動支援隊」の育成も推進中ですし、5人以上で百歳体操を行うグループには助成も行っています。
さらに、社会参加や趣味活動、仲間づくりや地域交流、長期的にスポーツや学習を行う人は、要介護や認知症の状態になりにくいという調査結果も出ているため、佐世保市ではこれらの活動を積極的に支援中です。
「老人福祉センター」や「老人憩いの家」では、交流会などを開き、高齢者のコミュニケーションの活性化を促進。
高齢者向けの生涯スポーツや生涯学習や文化活動なども推進しています。
その他にも、生きがいづくりや社会での居場所づくりとして高齢者の就労も支援。
佐世保市はさまざまな形で高齢者の介護予防をサポートしています。
佐世保市の高齢者相談

佐世保市では、高齢者のいろいろな相談に対応しています。
佐世保市社会福祉協議会では、「日常生活自立支援事業」を通じて、認知症などで福祉サービスの利用手続きや、家賃や医療費の支払い、金銭管理などが困難な人をサポートしています。
そのため、「福祉サービスの利用手続きが難しいから代わりにやって欲しい」「福祉サービスへの苦情を申請したいから手伝って欲しい」といった相談が可能です。
また、させぼ成年後見センターの方でも、認知症などで預金通帳の管理などが難しくなった人を対象に、財産管理や契約の代行を実施中です。
一人暮らしの高齢者や高齢夫婦のみの世帯が増えており、振り込め詐欺などの消費者被害が増えています。
そのため、佐世保市社会福祉協議会では高齢者の権利擁護活動も実施。
被害にあった高齢者の相談に対応したり、被害の予防に努めたりしています。
高齢者本人だけでなく、家族も相談できるのが魅力で、「家のお母さんが頻繁に『通帳が無い』といってヘルパーさんを困らせるので、代わりに管理して欲しい」といった希望も出せます。
サービスは有料ですが、相談は無料で、電話での相談も可能です。
そして、介護や高齢者福祉の中心的役割を担う「地域包括支援センター」を市内に9ヶ所ほど設置し、高齢者やその家族、地域住民が気軽に高齢者相談をできるようにしました。
センターでは社会福祉士や保健師などの専門職スタッフが、悩みの内容を詳しく聞き、問題解決に繋がるようにアドバイスします。