異国情緒が色濃く漂う街並みに、介護施設が年々増加
九州の北西部に位置し、長崎半島と西彼杵半島にかけて広がる形状の長崎市。
長崎県の県庁所在地であり、国から中核市に指定されています。
山に挟まれた地域を開拓してきた歴史があるため、独特の石畳や坂道が続く風景が多く、ほかの地域ではなかなか見られない景観が魅力です。
そのような立地条件に加えて、江戸時代には長きに渡って外国との交易窓口を務めてきたこともあり、エキゾティックな建物や街並みが市内のそこかしこに見られます。
「眼鏡橋」や「大浦天主堂」など国宝や重要文化財が多数存在し、観光客が多数訪れるのはもちろん、市民にとっても大切な心のよりどころとなっています。
「長崎くんち」や「精霊流し」などの盛大なイベントが堪能できる点もメリットです。
市内には「JR長崎本線」が通っており、市外への重要な足として機能していますが、市内の移動に関しては路面電車の方が便利でしょう。
マイカーやタクシーで遠出する際は、「長崎自動車道」や「国道34号線・206号線」を使うと便利です。
そのほか、県道や地方道が合わせて10数本通っているほか、一般の有料道路が2本(出島道路と女神大橋道路)存在します。
バスについては、県庁所在地であるため、県営バスと市営コミュニティバスを一度に使えるという利点があります。
民間バスの業者については、長崎自動車の独壇場となっています。
市内の人口は、1970~80年代においては微増と微減を不定期に繰り返しており、全体的には大きな変化がない状態でした。
しかし、昭和から平成に変わる頃に50万人を切ったのを皮切りに、じりじりと減少の一途をたどっています。
また、長崎市の2023年の高齢化率は33.7%と全国平均の29.1%を超えており、高齢者へのケアサービスを主軸に、多角的な福祉事業を実行する必要があることは間違いありません。
長崎市では、要介護高齢者に対しては既に相当数の介護施設を設けることで対応しているところです。
公営から民間まで施設の種類は出そろっており、地域によって偏りは多少あるものの、さまざまな条件で吟味することが可能です。
長崎市の高齢化率は30%を突破
長崎市は、前述したとおり長崎県の県庁所在地であり、長崎県最大の人口を誇ります。
江戸時代には、日本で唯一の貿易港「出島」を有し、海外の玄関口として栄えてきました。
そのため「グラバー園」や「チャイナタウン」などの観光スポットが多く、出島や長崎港などには国内外から観光客が訪れています。
そんな長崎市ですが、総人口は1985年の約50万6,000人がピークで、その後は減少中です。
2023年には総人口40万1,195人となり、0~14歳までの年少人口や15~64歳までの生産年齢人口は大きく減っています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
その反面、高齢者は増加の一途をたどっており、2023年の高齢化率は33.7%。
3人に1人が高齢者という状況です。
昭和までは長崎市の高齢化率は全国平均とほぼ同じでしたが、平成に入ってからは長崎県同様、全国の平均を上回り、現在も高齢化率は上昇中です。
2015年に、団塊の世代がすべて65歳以上になったため、65~74歳までの前期高齢者が増えました。
75歳以上の後期高齢者も増えており、全体的に高齢化が進んでいます。
長崎市では要介護3以上の重度者の増加が顕著
長崎市では、2023年には総人口40万1,195人に対し、要支援・要介護認定者数が2万9,502人。
認定者が総人口の7.3%を占めるようになりました。
後期高齢者が増えている長崎市では、要支援・要介護認定者も増え続け、2025年には要支援・要介護認定者は4万人弱まで増えるという将来推計が出ています。
年齢別の人口ピラミッドをみると、ほかの地域と同様に団塊の世代が最も多く、この世代がすべて後期高齢者となる2025年を見据え、介護保険サービスなどの高齢者施策をより一層充実させておく必要があるでしょう。
要介護度別にみると、要介護1認定者が最も多く全体の26.4%。
次いで要介護2認定者が16.6%と多いです。
しかし、要介護3以上の重度者の増加率が一番高く、長崎市では特別養護老人ホームなどの施設サービスの増設や、居宅サービス、地域密着型介護サービスを通して、重度者のサポートを行っています。
認知症高齢者も増えており、2015年には1万5,381人だった認知症高齢者は、2020年には1万6,547人まで増加。
高齢者の12.8%が認知症という状況です。
そのため、長崎市では認知症対応型デイサービスや、グループホームといった認知症高齢者をケアするためのサービスを整えています。
介助や介護の必要性についてアンケートをとった結果、「必要」と回答した人は19.9%で、5人に1人は介助や介護を必要としていることがわかりました。
長崎市では、家事代行や身体介助を行う「訪問介護」や、介護士による医療サポートが受けられる「訪問看護」などの介護保険サービスを充実させるため、体制づくりを急いでいます。
「すこやか運動教室」では介護予防を促進してる
長崎市は、健康寿命を延ばして最期まで元気に過ごせるよう、介護予防にも力を入れています。
「すこやか運動教室」では、地域のグループが自主的に運動できるよう支援。
ラジオ体操も各地で実施し、体を積極的に動かす場を設けています。
仲間と一緒に体操するため、交流が楽しめるのもポイントです。
長崎市は、活動量の低下や筋力の衰え、運動機能の低下に繋がる「閉じこもり」を防ごうと活動しています。
バスや電車、タクシー、船舶いずれかの利用券を交付する「高齢者交通費助成事業」を通じて、高齢者の外出を支援。
老人福祉センターや老人憩の家では、地域行事やイベント、交流会を実施しています。
入浴が可能なため高齢者に人気です。
また、介護予防活動などを行う老人クラブを支援し、高齢者の活動の場を広げています。
介護予防の拠点である「高齢者ふれあいサロン」では、リハビリや勉強会などを実施。
「ふれあいセンター」では利用者の年齢制限をなくし、世代を超えた交流を楽しめるようにしているのが魅力です。
さらに、高齢者の生きがいづくりの一環として、「シルバー作品展」を開催。
発表の場を設けることで、創作活動にやり甲斐を持たせています。
作品展では体験型イベントも行い、若い世代との交流も行います。
「高齢者ふれあいサロン事業」では、地域支援ボランティアポイント制度を実施。
ボランティア活動の実績に合わせ、買い物券や交付金に変えられるポイントがもらえるため、やる気アップに繋がっています。
長崎市ではさまざまなサポート活動により、高齢者の趣味活動や社会参加を推進中です。
地域の民生委員による「友愛訪問」で在宅介護を支援
長崎市では、高齢者が安全に自立した生活が送れるよう、地域全体で見守りやサポートを行う地域包括ケアシステムを構築中です。
高齢者の在宅医療希望者が増え続けており、在宅医療や生活支援の需要が高くなっている今、自宅で介護と医療が同時に受けられる環境づくりが重要になっています。
長崎市は介護や医療の連携や、理学療法士などによる訪問リハビリテーションの普及に努め、介護予防や重度化防止を推進。
居宅療養管理指導も行っています。
一人暮らしの高齢者が増えており、地域の民生委員による「友愛訪問」や、見守り支援による安否確認を通じ、高齢者の孤立化や孤独死を防いでいます。
「高齢者あんしんネットワーク協定」では郵便局やコンビニなど、身近な業者が見守りを実施。
連絡先などがわかる「安心カード」を拡充させ、緊急時にも適切な対応ができるようにしています。
認知症高齢者の増加にともない、認知症高齢者を介護している家族への負担も増えました。
そのため長崎市では、介護側の家族の孤独などを和らげるべく、交流や情報交換ができる認知症カフェを開催。
認知症ケアパスの作成・配布や、認知症サポーターの育成なども行い、総括的なフォローに努めています。
そのほか、住宅改修や福祉用具貸与、おむつ代の支給や緊急連絡用の福祉電話の貸与、高齢者相談や高齢者向けの健康診断など、長崎市はさまざまな高齢者サポートを実施中です。
長崎市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
長崎市では、高齢者に関する相談窓口を設置しています。
長崎市地域包括支援センターが総合相談窓口となっており、福祉や健康、在宅介護などの相談を受け付けています。
「各種公的サービスを使いたい」といった相談も可能で、利用可能な関連機関を紹介してもらえますし、必要な機関との連絡調整もしてもらえるのがポイントです。
あわせて、高齢者の権利擁護や虐待に関する相談や、介護予防活動や地域活動に関する相談も可能で、相談内容は広範囲です。
高齢者だけでなく家族や地域住民も相談できるので、「おばあちゃんの足腰が弱ってきた」「両親のもの忘れが酷い…」「最近、近所のおじいちゃんを見かけない」といった相談が可能です。
長崎市社会福祉協議会も相談を実施しており、「しゃきょう”なんでも”相談」では、家族や地域間のトラブルや、介護などの悩みに対応。
長崎市生活支援相談センターでは「年金が少なくて家賃が厳しい」「病気で病院代がかさんで辛い…」といった金銭的な相談も可能。
電話での相談にも対応しており、相談者に合わせた解決方法を相談員が探してくれます。
相談は無料です。
長崎市では、元気な高齢者を応援するべく、シニア就労も支援。
生涯現役応援センターと連携し、就労相談や社会参加に関する相談も行っています。
さらに、長崎市では健康相談や行政相談、こころの相談や法律相談など、専門的な相談を実施。
相談はどれも無料ですので、悩みがある人は気軽に相談してみると良いでしょう。