月額の費用が10万円前後という老人ホームも多数

青森県の東部に位置し、太平洋に面する中核都市、八戸市。青森県の主要3都市のひとつで、人口密度は県内で一番高いです。
八戸港は、日本でもトップクラスの漁獲高を誇る漁港で、特にイカの水揚げ量は有名。魚介類好きにとってはうってつけのエリアです。
しかし、八戸市は漁業だけで成功を収めている都市ではありません。
青森県南部から岩手県北部にかけて広がる、商工業地帯の中心地としても発展を遂げています。
そのほか、市内には数々の温泉や観光地が存在しており、引退してゆっくりと生活を楽しむのにはおすすめのエリアです。
東北地方としては比較的冬の積雪量が少なく、そういった点も高齢者にはありがたいポイントとなるでしょう。
電車事情は、2002年から東北新幹線が延長され、八戸市から東京駅まで2時間56分で移動できるようになりました。そのほか「八戸線」や「八戸臨海鉄道」など市名を冠した鉄道が充実しています。
路線バスの本数も多く、2009~2010年にかけて、走行内容についての大規模な整備が行われ、いっそう便利になりました。
八戸市の人口は、高度経済成長の時代は増える一方でしたが、1980年代に入ると横ばい状態に。その後20年程度あまり変化はありませんでしたが、21世紀に入ってからは徐々に減少しています。
また、八戸市内の高齢化率は、2012年に25%に達しました。県内のほかの大都市(青森市・弘前市)と比べると、その進行速度はまだ遅めですが、2020年までに30%を上回ることは避けられないようです。
八戸市内の少子化率については、2010年に13.4%を記録しました。こちらも、県内のほかの都市と比べれば多少高めの数値ですが、八戸市でも少子高齢化は進行しています。
八戸市では、要介護認定者が2013年に1万名を超え、その増え方がかなり急激であることが頻繁に指摘されています。
市内の老人ホーム・高齢者専用住宅については、施設のジャンルに多少偏りが見られますが、近年施設のオープンが相次いでおり、その偏りが解消される日もそう遠くなさそうです。
高齢者人口は2023年には7万人を超えた
八戸市は、内陸から海岸まで広がっている地形のため、山の幸と海の幸を両方が楽しめるのが魅力。なかでも海の幸が堪能できる「八食センター」が有名で、名物となっている「八戸の朝市」には観光客が多く訪れます。
そんな八戸市の総人口は減少が続いていますが、その一方で高齢者人口は2014年には6万人を超え、2023年には7万人となりました。高齢者人口は現在も増加中です。
高齢化率も、2013年までは全国平均を下回っていましたが、2015年以降は全国平均超え2017年には高齢化率28.7%、2023年には31.7%となっています。3人に1人は高齢者という状況も近いです。
さらに、2030年ごろに高齢者数は7万1,000人を超え、高齢化率も35%を超えると予測されています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
八戸市は、2040年には総人口17.3万人、65歳以上の高齢者数7万人、高齢化率40.5%となり、3人に1人が65歳以上になると予測。反対に、40歳から64歳の人口は減少し、高齢者の人口を下回るとしています。
介護サービス利用促進のための普及活動行っている
八戸市では要支援・要介護認定者が毎年増えており、2010年8,891人、2015年1万863人、2020年1万1,091人、2024年には1万1,441人となっています。数年のうちに、要支援・要介護認定者が1万3,000人を超える見込みです。
実際、在宅サービス受給者1人あたりの保険者負担額をみると、八戸市の要介護2~5は全国平均よりも高くなっています。
2016年から介護保険制度の一部が変更となり、要支援の認定を受けなくても利用できるサービスが増えたため、2017年度は要支援1・2の認定者は減りました。要介護認定率も低下、要介護認定率は約16%と、全国平均の18.1%を下回っています。
しかし、要支援・要介護認定者は増えているのに認定率が下がっているということは、高齢者の増加率がそれほど高くなっているということがわかります。

認定を受けていない高齢者のなかには、「健康だから必要ない」という人と「介護保険サービスがよくわからないので申請をしていない」という人がいるため、八戸市では介護保険サービスの認知度を上げるため普及活動を行っています。
八戸市では、デイサービスやショートステイ、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導など、さまざまな介護保険サービスを実施。高齢者とその家族をサポートしています。
在宅生活を送る高齢者と、その家族を対象としたアンケート調査によると、「日中・夜間の排泄」「認知症状への対応」を不安に感じている人が多く、「訪問介護」や「夜間対応型訪問介護」、「認知症対応グループホーム」などの需要が高まっています。
「はり・きゅう・あんま・マッサージ」の施術を助成し介護予防

八戸市では、高齢者数が増えていますが、平均寿命は男女ともに全国平均を下回っています。健康寿命(要介護状態になる前までの期間)についても、女性は全国平均を上回っていますが、男性は下回っている状態です。
八戸市は、平均寿命や健康寿命を伸ばすため、健康管理や健康増進、体力や筋力の増強を目的とした介護予防活動に力を入れています。
健康維持の支援として、高齢者の「はり・きゅう・あんま・マッサージ」の施術費の助成券を交付。市内各地で運動機能向上体操や認知症予防講座・口腔機能向上教室・栄養改善指導などの介護予防教室を実施し、市全体での介護予防を目指しています。
また、健康づくりや仲間づくりの場として、「老人いこいの家」や「老人福祉センター」を設置。教養講座などを行い、学ぶ意欲の増進を促しています。
生活習慣病や認知症の予防、介護予防の推進拠点として、総合保健センター内に「介護予防センター」を2020年度に開設しました。
センターでは介護予防の専門職を配置し、介護予防教室などを開催します。
高齢者向けのアンケートによると、「外出する機会がない」または「外出は週1回以下」という高齢者は全体の24.1%にものぼり、概ね4人に1人はほとんど外出していないことがわかりました。
高齢者の外出機会を増やすため、70歳以上の高齢者に対し、市内すべてのバス路線に乗車できる特別乗車証を交付。気軽に外出できる環境を整えています。
地域包括ケアのための「ほっとサロン」を実践

八戸市では、高齢者が暮らし慣れた場所で安全に生活するための、地域包括ケアシステムを構築中。高齢者が求める適切な介護サービスを提供し、高齢者だけでなく家族や周りの人々も安心して暮らせる環境を目指しています。
介護する側の年齢は60代以上が58.5%。介護側も高齢化していることがわかり、介護が必要な高齢者や家族を支える高齢者福祉サービスの充実が必須として、さまざまなサポートを実施しています。
また、高齢者が生きがいを感じ、経験を生かしながら暮らせるように、高齢者の生きがいづくりや社会参加を支援しています。
「老人クラブ」の活動のサポートや、社会福祉協議会での「ほっとサロン」実施を受け、高齢者は活動や交流を楽しみながら社会に参加しているようです。
八戸市の高齢者福祉サービスの内容は実に多彩。高齢者のみの世帯や、一人暮らしの高齢者に向けて、緊急通報装置を貸与し、緊急通報があると市の社会福祉協議会が対応し、最寄りのタクシーが駆けつけるシステムを構築しています。
そのほかにも、寝具一式を洗濯・乾燥させる「寝具洗濯乾燥消毒」や、かかりつけ医や持病などの情報を保管する「救急医療情報キット」の配付、高齢者の孤立化を防ぐ「老人福祉電話貸与」といったサービスを実施。サービスの利用者も徐々に増えています。
また、認知症高齢者の増加を鑑み、認知症高齢者とその家族を支援する「認知症サポーター」を育成。県内最大の約1万5,000人を養成中です。
八戸市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
市内には高齢者だけの世帯も増えており、一人暮らしの高齢者の割合が16.7%、夫婦ともに65歳以上の高齢夫婦の割合が36.4%で、高齢者だけの世帯が半数を超えました。

そのため、「身近に相談相手がいない」という悩みを抱える高齢者も増えており、八戸市では高齢者が気軽に相談できる相談窓口を設置しています。
高齢者の総合相談窓口となっているのが地域包括支援センターである「高齢者支援センター」です。
社会福祉士やケアマネージャーなど専門スタッフが常駐し、「最近、近所のおじいちゃんの姿をみかけない」といった地域住民からの相談も受け付けています。
介護保険サービスの窓口にもなっていますので、「車椅子を借りられますか?」といった福祉用具や介護についての相談も気軽にできるのが魅力。高齢者虐待や、振り込め詐欺などの消費者トラブルにも対応しています。
八戸市のアンケート調査によると、介護側が最も不安に感じることは「認知症状への対応」となっており、不安要素のなかでも30.9%を占めることがわかりました。そのため、高齢者支援センターでは認知症に関する相談も行っています。
さらに、社会福祉協議会内の「八戸市成年後見センター」では、財産や契約に関する支援を実施中です。
これは高齢者本人だけでなく、家族からの相談も可能。「通帳の管理などが難しくなってきた」「福祉サービスの契約がわからない」などの相談ができるので、少しでも不安がある人は問合せてみると良いでしょう。
また、社会福祉協議会が主催している「高齢者サロン」では、地域交流が楽しめます。お互いに情報交換したり、悩みを打ち明けあったりできるため、仲間づくりにも役立っています。