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第90回

【高血圧薬オルメサルタンも】飲み合わせに要注意な薬を薬剤師が解説します

最終更新日時 2022/12/21
#薬
目 次

薬に期待される本来の有効性(主作用)とは別の作用のことを副作用と呼びます。一般的に副作用の出やすさは、薬の服用量や、薬を飲む人の体質によって変わります。

また、複数の薬を飲んでいる場合では、薬の飲み合わせによって副作用が引き起こされることもあります。

一方、2つのものが互いに働きかけ、それぞれに影響を及ぼすことを相互作用と呼びます。2種類以上の薬を飲んだ場合の相互作用を薬物相互作用と呼びます。

また薬だけでなく、食品やサプリメント(健康食品)との飲み合わせによって相互作用が起こることもあります。

なぜ相互作用が起こる?

薬が関連する相互作用は、その作用の仕方(メカニズム)から、大きく2つに分けられます。

薬力学的相互作用
薬が人の体に働きかける仕組みを原因とした相互作用
薬物動態学的相互作用
薬が体に吸収・分解される過程、体の中から外に薬が排泄される過程などで発生する相互作用

例えば、血圧を下げる薬を2種類飲むことによって、血圧が下がりすぎてしまう副作用は、薬力学的相互作用によるものです。

「血圧を下げる」という人の体に働きかける仕組みが同じ薬を併用することで、それぞれの薬の効果が強く出てしまっているわけです。

このように、人の体に働きかける仕組みが同じ薬を併用することは、薬力学的相互作用を原因とする副作用の危険性を高めることになります。

一方で、Aという薬が、Bという薬の吸収を遅らせてしまう場合、AとBを併用することで、Aの吸収が悪化し効き目が弱くなってしまうことになります。

この場合、Aの効き目が弱くなってしまった原因は、Bの作用によるAの吸収の遅れです。薬が吸収される過程で発生している相互作用ですから、AとBの相互作用は薬物動態的相互作用ということになります。

なお、BがAの吸収を早めてしまう場合、Aの効き目が強く出てしまうことになり、Aの副作用も出やすくなります。

また、BがAの排泄を遅らせたり、Aの分解を妨げる場合にも、血液中のAの濃度を高める原因となるため、Aの副作用が出やすくなるでしょう。

このように、薬物動態学的相互作用は薬本来の効き目を弱める原因にも、過剰に強めて副作用を起こす原因にもなります。

相互作用の危険性は身近な問題

ご高齢の方は、多くの薬が一度に処方されることもあるため、薬と関連した相互作用の危険性が高まります。

カナダで行われた研究によれば、処方された薬の数が5剤以上の入院高齢者では、その約8割で薬物動態学的相互作用の危険性があると報告されています。

また、アイルランドで行われた研究では、入院していない高齢者であっても、その2割以上で相互作用の危険性があると報告されています。

医療機関を受診しやすい日本においても、処方薬の状況は大きく変わらないように思います。実際、岡山県にある11件の薬局で行われた調査によれば、対象となった924人のうち、66.5%で薬物相互作用の危険性があると報告されています。

相互作用は日常的に起こりやすい

薬力学的相互作用の具体例

副作用の危険性を高めることが報告されている薬力学的相互作用として、高血圧の治療に用いられるレニン-アンギオテンシン受容体遮断薬やスピロノラクトンと、抗菌薬の併用が挙げられます。

レニン-アンギオテンシン受容体拮抗薬は、血圧を上昇させる物質の働きを妨げることで血圧を下げます。レニン-アンギオテンシン受容体拮抗薬の代表的な副作用として、血液中のカリウム濃度の上昇が挙げられます。

血液中のカリウム濃度が高くなると、手足に力が入りにくくなったり、吐き気、動悸などの症状が現れることがあります。ひどい場合は、意識を失ったり、心停止を起こす危険な状態に陥ることもあります。

抗菌薬の中でも尿路感染症の治療などに用いられるスルファメトキサゾール・トリメトプリムや、高血圧の治療に用いられるスピロノラクトンという薬も、血液中のカリウム濃度を高めることが知られています。

そこで併用すると、カリウム上昇に伴う意識消失や心停止の危険性が高まります。その具体的な薬は以下の通りです。

レニン-アンギオテンシン受容体拮抗薬の種類
薬品名 商品名
ロサルタン ニューロタン®
カンデサルタン カンデサルタン®
バルサルタン ディオバン®
テルミサルタン ミカルディス®
アジルサルタン アジルバ®
オルメサルタン オルメテック
イルベサルタン アバプロ®

海外で行われた研究では、レニン-アンギオテンシン受容体拮抗薬とスルファメトキサゾール・トリメトプリムの併用や、スルファメトキサゾール・トリメトプリムとスピロノラクトンの併用で、副作用による入院のリスク、心停止による死亡リスクの増加が報告されています。

薬物動態学的相互作用の具体例

抗菌薬の中でもマクロライド系と呼ばれる薬は、薬の分解を促す酵素の働きを妨げる作用が知られています。そのため、マクロライド系の抗菌薬は、薬物動態学的相互作用を起こしやすい薬の一つと言えます。

例えば、コレステロール値を下げるスタチンという薬は、肝臓で分解され体外に排泄されますが、マクロライド系の抗菌薬と併用することで、スタチンの分解が妨げられてしまいます。

その結果、スタチンの副作用が出やすくなることがあります。実際、マクロライド系の抗菌薬とスタチンを併用すると、スタチンの副作用である横紋筋融解症(薬によって筋肉組織が障がいされる病気)による入院が、2.27倍増加することを報告した海外のデータもあります。

薬と食品の相互作用

薬と食品の相互作用もまた、薬力学的相互作用と薬物動態学的相互作用に分類されます。

例えば、花粉症の薬や睡眠薬など、眠気を催す薬とアルコール(飲酒)を併用すると、眠気の副作用を強めることがあります。

これは、アルコールにも眠気を催す働きがあるためで、薬力学的相互作用によって眠気の副作用が強まったと考えることができます。

また、血液を固まりにくくするワルファリン(商品名;ワーファリン®)と納豆の併用でも薬力学的相互作用が生じます。

ワルファリンは、ビタミンKの働きを妨げることで血液を固まりにくくします。しかし、納豆に含まれている納豆菌は、人の体の中でビタミンKをつくり出すことが知られており、ワルファリンの効果が減弱してしまうのです。

一方、薬物動態学的相互作用として、高血圧の薬とグレープフルーツの併用が挙げられます。グレープフルーツの果肉に含まれる成分は、カルシウム拮抗薬と呼ばれる血圧を下げる薬の分解を妨げることが知られています。

そのためカルシウム拮抗薬と、グレープフルーツやそのジュースを併用すると、血圧を下げる効果が強く出てしまい、急な血圧低下や頭痛などの症状が現れることもあります。

相互作用の予防と対応

相互作用の危険性がある薬・食品の組み合わせは膨大です。また、薬の投与量や、服用する患者さんの病状によっても影響は大きく変わります。

そのため、相互作用を予防するためには、かかりつけの医師や薬剤師に、服用しているすべての薬の情報を伝えることが肝要です。

なお、市販の薬、サプリメント、健康食品でも相互作用を起こすものがあるので注意してください。

相互作用の危険性を少しでも回避するためには、医療機関から処方されている薬だけでなく、常用しているサプリメントや健康食品、市販薬についても、医師や薬剤師に伝えることが大切です。その際にはお薬手帳を活用すると良いでしょう。

また、飲酒、グレープフルーツ、納豆以外にも、乳製品、カフェインを多く含むコーヒーなどは、薬との相互作用を起こしやすい食品として知られています。

日常的に摂取している人は、相互作用の危険性について、今一度医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

処方されている薬と市販薬や食品との作用を知ろう

相互作用が起きてしまうと、薬の作用が弱まってしまったり、副作用の危険性が高まります。ただし、相互作用が起きているかどうかを、患者さんご自身で判断することは難しいでしょう。

副作用を疑うような症状が現れた場合には、直ちに薬を処方した医師の診察を受けてください。また、薬の効きが悪いと感じた場合には、相互作用の可能性も含めて、かかりつけの医師や薬剤師に相談すると良いでしょう。

【参考文献】

Ann Pharmacother. 2013 Mar;47(3):324-32. PMID: 23482734
Drugs Aging. 2021 Nov;38(11):1025-1037. PMID: 34632551
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Arch Intern Med. 2010 Jun 28;170(12):1045-9.PMID:20585070
BMJ. 2014 Oct 30;349:g6196. PMID;25359996
BMJ. 2011 Sep 12;343:d5228PMID;21911446
CMAJ. 2015 Mar 3;187(4):E138-E143.PMID:25646289
CMAJ . 2015 Feb 17;187(3):174-180. PMID: 25534598

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