こんにちは。薬剤師の雜賀匡史です。
多くの薬を服用することにより副作用などの有害事象を起こすことを、ポリファーマシーといいます。
今回は、ポリファーマシーで悩んでいる人に向けて、薬剤師との関わり方について紹介します。
「薬を減らしたい」と医師に伝えないことでポリファーマシーを招く
高齢者は複数の疾患を有する人が多く、多科受診によって引き起こされるポリファーマシーの問題が増えています。
例えば内科と整形外科、眼科を受診している患者がそれぞれの医師から3種類ずつ薬を処方されていたとします。この場合、患者が毎日使用する薬は9種類に及びます。
5種類以上の薬を併用すると転倒のリスクが高まり、6種類以上の薬を併用すると副作用を意味する薬物有害事象の発現率が上昇すると言われています。
たとえ、それぞれの医師がポリファーマシーを避けるために処方数を抑えていても、複数の科を受診することで簡単にポリファーマシーの状態がつくられてしまうのです。
このようなとき、「薬を減らして欲しい!」と心の中で思っても、医師に直接訴えるのは勇気がいることですよね。
「忙しい中、処方してくれた先生に申し訳ないから」と、気を遣われる方も多いと思います。
気持ちはとてもよくわかりますし、日頃からお世話になっている処方医のことを思うとなかなか言い出しにくいです。
しかし、このような医師への気遣いがポリファーマシーを招いてしまうことがあります。
医師に直接訴えにくいことも、薬剤師を介して伝えることができます。困ったときに相談出来る薬剤師がいると、ポリファーマシー問題が簡単に解決できるかもしれません。
薬学的根拠という判断材料が加わることで、処方変更しやすい環境がうまれる
私たち薬剤師は、処方薬や処方内容についての相談を受けたとき、患者からの言葉をそのまま医師に伝えることはありません。
患者から聞き取った服薬背景や生活状況、処方内容などに薬学的な観点を加え、薬を減らすことのメリットとデメリットを総合的に判断し、医師に打診しています。
と言うのも、医師は不必要な薬をやみくもに処方しているわけではありませんので、減薬するにはそれ相応の根拠が必要だからです。
薬剤師からの薬学的根拠という判断材料が1つ増えることで、医師にとって処方変更しやい環境がうまれます。
これにより患者や介護者は医師に必要以上の気遣いをしなくて済み、医師も多忙な業務の中で処方検討に割かれる時間を他のことに使えるでしょう。
患者や介護者、医師、薬剤師のそれぞれの意見を集約することで、ポリファーマシーの状態を脱することができるのです。
薬剤師に伝えると良い情報
私自身もポリファーマシーで困っている患者や介護者から多くの相談を受けています。
相談時には、以下のような情報を伝えていただけると助かります。
薬剤師に伝えると良い情報など
- 市販薬や健康食品も含めて、使用しているすべての薬の内容
- 睡眠や食事、排泄、身体機能、認知機能、疼痛の程度など、日常生活や体調についての情報
- 服薬介助の必要性の有無などの服薬状況
- 服薬に費やす時間
- 介護サービスの利用状況
- 残薬状況と残ってしまった背景
- 転倒歴
- 患者、服薬介助者の服薬上の意識や負担感
処方された薬の種類が多いときだけでなく、服薬回数が多くて困っているときにも同様の情報をいただけると助かります。
ポリファーマシーの状況を脱するために、明日からできることとして、薬剤師への相談を検討してみましょう。困ったときは我慢せずに、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師に気軽に相談してくださいね。