皆さまこんにちは。
有限会社リハビリの風でデイサービスを管理している阿部です。
2021年度の介護報酬改定は0.7%のプラス改定でしたが、事業所によってはその感覚を得られないところもあると思います。特に「個別機能訓練加算」を取得していたデイサービスに関して言えば、「マイナス改定では?」と感じる人も多いのではないでしょうか。
今回は、デイサービスにおける個別機能訓練加算について、介護報酬改定後のメリット・デメリットと、今後のデイサービスの方向性の大きく二つにわけてご説明します。
介護報酬改定におけるメリット2つ
1:機能訓練加算と生活機能訓練をシームレスに行える
今回の介護報酬改定によって変更された個別訓練加算のメリットは、「ICFの視点に近づく」という点があります。「ICF」とは「国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health)」のことで、人の生活機能と障害を分類するものになります。
生活機能とは、ICFの中心的な概念であり、人が「生きる」ことを支える「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つを包括した概念のことです。
以前の個別機能訓練加算は、「個別機能訓練加算Ⅰ」は機能訓練、「個別機能訓練加算Ⅱ」は生活機能訓練と、訓練内容で算定項目が変わっていました。今回の介護報酬改定で個別機能訓練加算が統合されたことによって、機能訓練と生活機能訓練をシームレスに行うことができます。
これは、ICFにおける生活機能を考慮すれば、利用者の方の状態を理解するために望ましい変化と言えるでしょう。
2:科学的介護情報システム「LIFE」で効率の良い支援が受けられる
個別機能訓練加算Ⅱでは、利用者情報をデータベースに入力することが必要となります。このデータベースを「LIFE」と呼び、利用者の方の状態やサービス内容などの情報を蓄積していきます。今後は国がLIFEを基軸として、自立支援や重度化防止の効果が高いと見込まれる「科学的介護」の実現に向けて進めていくでしょう。
今回の導入で、「介護は科学的に進めていかなければならない」という方向性が明確になりました。
介護報酬改定におけるデメリット2つ
1:個別訓練加算の単位数が減少
今回の介護報酬改定による個別機能訓練加算のデメリットとしては、加算における単位の減少が挙げられるでしょう。変更前の単位数は下記のように変更されました。
改定前
- 個別機能訓練加算Ⅰ 46単位/日
- 個別機能訓練加算Ⅱ 56単位/日
改定後
- 個別機能訓練加算Ⅰイ 56単位/日
- 個別機能訓練加算Ⅰロ 85単位/日
- 個別機能訓練加算Ⅱ 20単位/月
以前のルールでは、機能訓練指導員を2人以上抱えるデイサービスでは、個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱを同時に取得して、46+56=102単位を算定していました。ところが、今回の個別機能訓練加算Ⅰロを取得したとしても85単位のみの算定になり、単純計算でも1日17単位の減収となります。
新しい個別機能訓練加算Ⅱは月に20単位の算定になるため、内容としては前述のLIFEを推進するために意味のあるものですが、単位数でのメリットは少ないと言えるでしょう。
2:加算要件が厳しい
個別機能訓練加算を行ううえでは、個別~小集団で直接的に訓練を行うことが必須となりました。以前の個別機能訓練Ⅰは、直接指導を行うのはほかの介護職員などでも問題なかったため要件が厳しく変更されたことになります。
また、管理者と機能訓練指導員の兼務では、個別機能訓練を算定することはできません。今回の改定以前の話では、「個別機能訓練加算は小規模事業所の算定率が低い」ということから、算定率を上げるような施策が取られるのかと思っていました。なので、小規模事業所に見られる管理者と機能訓練指導員の兼務が不可になったことは疑問に思います。
この決定はQ&AのNo.3における問58に書かれている内容です。小規模なリハビリ特化型デイサービスなどでは、管理者と機能訓練指導員を兼務している事業所が多いと聞きます。以前の個別機能訓練加算Ⅱは、そういった人員配置のもと取得していた事業所も多かったのではないでしょうか。
このQ&Aによれば、管理者と兼務した場合の機能訓練指導員は人員基準としての機能訓練指導員としては認められるものの、個別機能訓練加算を取得するための基準は満たせないということになります。これも事業所の単位減となる要因の一つとなるでしょう。
デイサービスの基本報酬がプラスに変更されているということはありますが、このポイントによって減収する事業所もあると思います。
今後のデイサービスは成果主義の方向へ
2021年度の介護報酬改定は、結果だけ見れば0.7%のプラスになりましたが、個別機能訓練加算を算定していた事業者にとって言えば、なかなか厳しい変更だったと言えます。
とはいえ、今後LIFEへの情報入力の結果が積み重なれば、「行った内容で加算を得られる」ことから、「結果を出したら加算が取れる」というような、成果主義の方向に向かっていくことは間違いありません。
以前は個別機能訓練のようなサービスをするだけでその施設には付加価値がついていました。しかし、今では施設運営を行うにあたって個別機能訓練を行っていることは当たり前の時代になってきました。
今後、ますますリハビリテーションの考え方が重要になると思います。2024年の大改定に向けて、そういった流れを抑えつつも日々行動していきましょう。