年齢を重ねて体や心のはたらき、社会的なつながりが弱くなった状態をフレイルといいます。そのまま放置すると、要介護状態になる可能性があり、早めに適切な取り組みを行うことが必要です。
また、薬を多く使用しているポリファーマシー(多剤併用)の人ほどフレイルになりやすいことも報告されています。
今回はフレイルと薬の関係についてご紹介いたします。
フレイルの条件
老年医学の専門家によると、以下のうち3つ以上が当てはまる状態を、要介護状態に至る前段階(フレイル)として位置づけられています。
- 体重減少
- 筋力の低下
- 疲れやすい
- 歩行速度の低下
- 身体活動の低下
似たような言葉にサルコペニアがありますが、こちらは加齢に伴って筋肉量が減り、筋力、身体機能が低下する状態を指し、フレイルの原因の一つとされています。
フレイルは多面的な要因が絡み合っているため、フレイルそのものに効く薬は現時点ではありません。体全体に起こっている問題を一つひとつ評価し、総合的に判断して改善を図る必要があります。
フレイルとポリファーマシーの関係
フレイルの主な対策には、一般的に次のようなことが良いとされています。
- バランスの良い食事
- 運動
- 定期的な受診と服薬による持病のコントロール
- 感染症予防
自分自身でできることも多いので、日ごろからフレイル予防に努めましょう。

また、薬を服用中の方もフレイルに気をつける必要があります。
近年、高齢者で薬が多くなるポリファーマシーが問題となっています。加齢にともなって持病が増えてしまうと、その治療のために服用する薬が増えてしまい、ポリファーマシーになりがちです。このポリファーマシーとフレイルには関連があるとされています。
フレイルと診断された高齢者は5剤以上の薬を使用しているポリファーマシーの人が多いという報告があります。
また、ポリファーマシーの人はフレイルを合併しやすいとも言われています。
フレイルは転倒を引き起こす危険因子でもあるため、ポリファーマシーは間接的に転倒の発生数の増加につながると考えられています。
多すぎる薬を減らすことはフレイル予防にもつながりますが、薬を使わなくて良いということではありません。
治療に必要な薬を自己判断で中止したり、医師の指示とは異なる使用法に自分で変更することのないよう気をつけましょう。
ポリファーマシー対策をとるため、薬は少ないに越したことはありませんが、薬の必要性については慎重な見直しが重要です。使用する薬を減らすことと同時に、リスクの高い薬の中止や変更といった対応も必要となるかもしれません。
特に高齢者が気を付けたい薬として、ベンゾジアゼピン系の不眠症の薬があります。ふらつきの副作用があるため、転倒や骨折を引き起こす可能性が高まります。
また、三環系抗うつ薬、パーキンソン病薬の一部、第一世代のアレルギー薬の一部には抗コリン作用という認知機能低下を引き起こす可能性のある薬もあります。
転倒・骨折、認知機能低下はいずれもフレイルにつながるため、これらのリスクがある薬はできれば避けたいところです。
近年は製薬企業の努力により、副作用の少ない薬が続々と販売されています。長年同じ薬を使用し続けていると中止や切り替えのタイミングが難しいと思いますが、フレイル予防のためにも定期的な薬の見直しをしてみてください。
医師や薬剤師と相談し、薬の服用によるフレイルを防ぐように心がけましょう。

自分自身でできるフレイル予防と、専門家と一緒に行うフレイル予防のどちらも並行して行うことで、健康的な生活を送ることができることでしょう。