こんにちは。薬剤師の雜賀匡史です。
今回のテーマは「坐薬(ざやく)の使い方」について、挿入時に起こるトラブルの解決方法と併せて説明していきます。
坐薬は即効性のある薬の1つ
坐薬とは、肛門や膣に入れて使用する医薬品のことです。肛門周辺の局所作用のある坐薬と、腸粘膜(ちょうねんまく)から吸収されて血中に移行し、全身に作用する坐薬があります。体温で薬の成分が溶けることで体内に素早く吸収されるため、即効性に優れた薬です。
坐薬は、飲み薬や注射薬を使用することが困難な場合に処方されることが多く、小児や高齢者などに多く処方されています。一般的な飲み薬や貼り薬と異なり、保管方法や使用方法で気をつける点があるので見ていきましょう。
冷たい場所に保管するのが一般的
一般的な坐薬は体温で溶けるようにつくられています。高温の場所での保管は坐薬が溶けてしまうことがあるため、冷蔵庫内など冷所で保存するのが一般的です。一度溶けてしまった坐薬は変形したり、有効成分が偏ってしまうことがあるので注意しましょう。
正しい使用方法
できるだけ排便を済ませてから挿入しましょう。小児の場合は体重に合わせて、大人が使用する2分の1、または3分の2などに減量して使用することがあります。
坐薬のカットは使用直前に行ってください。包装の上から清潔なハサミや包丁、カッターなどで斜めに切り、先端のとがったほうを使います。薬局で切り込みの目安となる線が包装上に印刷されているときは、その線に合わせてカットしましょう。もしカット部位がわからないときは、薬剤師に確認する必要があります。
坐薬の挿入方法は以下の通りです。
- 坐薬を挿入する姿勢
- 横向きに寝た状態(子どもは仰向けに寝かせて両足を持ち上げる)で先がとがっている方から肛門に挿入しましょう。挿入時にうまく入らないときは、坐薬の先に水やワセリン、オリーブ油などを少量つけると滑りやすくなります。
- 坐薬を挿入する際の注意点
- 奥まで入らないと出てきてしまうことがあります。挿入直後は形を保ったまま出てきてしまうこともあるので、ティッシュなどでしばらく抑えましょう。また、挿入後20~30分間は歩き回ったり運動などを控えるようにしてください。
挿入がうまくいかなかったときの対処法
挿入直後に形が残ったまま出てきてしまったときは、焦らずに再度挿入してください。
5分~10分後に下痢や排便をしてしまった場合、形が崩れていなければ再度入れなおす必要があります。
もし固形状の坐薬が確認できなければ、すでに成分が吸収されていると考えられるため、しばらく様子をみてください。判断に困ったときは自己判断せずに、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
2種類同時に使うときは薬剤師に確認を
小児の熱性けいれん時や飲み薬が使用できないときなどに2種類の坐薬を使うケースがあります。坐薬は有効成分と添加物の違いにより、使用する順番や使用間隔を誤ると吸収率が低下してしまうことがあるので注意が必要です。同時に使用する坐薬の組み合わせで異なるため、事前に使用順番や使用間隔について医師または薬剤師に確認しておきましょう。
今回は坐薬の使い方についてご紹介しました。改めて坐薬の正しい使い方を確認していただき、安全かつ有効な使用をしていきましょう。