種々様々な介護施設があり、選択肢は豊富

北東から南西へと細長く伸びた沖縄本島の南部に位置する、那覇市。
沖縄県のあらゆる産業と行政、それに文化が集中する都市です。
面積が広いわけではないものの、人口密度が非常に高く、また県内での存在感は飛びぬけています。
近年は、建築規制が少ない地域に毎年のように超高層ビルやマンションなどが建てられており、日本国内で見ても特に開発が目覚ましい都市のひとつです。
市内にはオフィス街や繁華街、住宅地や商業地区のような人々の密集する地域のほか、首里城や識名園のような史跡や波の上ビーチのような観光スポットがあちこちに存在します。
毎日を楽しく過ごすことも快適に暮らすことも可能であり、高齢者にはおすすめできる土地柄です。
沖縄県は鉄道インフラのない場所として有名ですが、那覇市には10数年前から沖縄都市モノレール線が開通しており、住民に好意的に受け止められています。
もちろん、いまだに市民の移動は車両に依存することが圧倒的に多いですが、レンタカーやタクシーなどのサービス業が発達しており、慣れればストレスを感じることなく利用できるようになれます。
市内の主要な道路といえば、沖縄自動車道がその代表例でしょう。
また、国道58号線や329号線も出入りがしやすくてさかんに利用されています。
そして忘れてはいけないのは、バス会社でしょう。
那覇バス・琉球バス交通・沖縄バス・東陽バスとメジャーな会社が4社が入り込んでおり、市民の円滑な移動を助けています。
もちろん沖縄の県庁所在地である以上、空路(那覇空港)や海路(那覇港)も重要なインフラとして認知されています。
那覇市は、人口の増加が目立つ都市としてよく話題の的になってきました。
1990年代後半に微減傾向を示したことがあったものの、この20年くらいは確かに少しずつ人口が増えており、今後もまだこの勢いは止まらない見通しです。
沖縄は全体的に少子高齢化が遅いのですが、那覇市も2023年に高齢化率24.3%、少子化率14.2%とまだそれほど高齢化は進んでいません。
その上で介護施設の増加も進んでいるため、高齢者にとっては心強い条件がそろっています。
市内で多いのは介護付き有料老人ホーム・グループホーム・サービス付き高齢者向け住宅の3種類の施設でしょう。
新しくて建物全体がきれいな施設が多いという長所に加えて、設備やスタッフが優秀であったり、または民間の施設であっても入居コストが安めであったりと施設ごとの持ち味はさまざまです。
近隣のケアマネージャーに相談するなどして、見学をじっくりと行うのがベターです。
高齢化率は24.3%と全国平均よりも低め
那覇市は沖縄県の県庁所在地。
沖縄県の政治や経済の中心都市で、人口も県内最大です。
国際空港である那覇空港や、那覇港があり、沖縄県の玄関口にもなっています。
那覇市の内外を結ぶバス路線が豊富で、交通アクセスが比較的発達しているので便利です。
沖縄都市モノレール線が走る「ゆいレール」が設置され、沖縄県で唯一、バス以外の公共アクセスがあります。
ゆいレールのおかげで那覇空港からメインエリアに行きやすいのも魅力でしょう。
そういった利便性の良さなどから、那覇市は人口が増加傾向にあり、近年中核市に昇格しました。
しかし、2018年度をピークに総人口は減少傾向に転じ現在は緩やかに減少中です。2023年には市内総人口31万7,030人を記録しました。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
一方、高齢者は今後も増加し続けるようで、2023年には7万6,972人、高齢化率は24.3%となりました。
2016年度は高齢化率が20.9%でしたので、7年間で約4%も増加しています。
さらに、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる2025年には、高齢者は7万9,256人、高齢化率は25.9%、さらに2035年には8万7,820人、29.6%まで高齢化が進みます。
概ね4人に1人は高齢者という状況が訪れようとしています。
また、2020年度には65歳から74歳までの前期高齢者は3万7,997人、75歳以上の後期高齢者は3万6,531人に。
2023年には前期高齢者3万8,809人、後期高齢は3万8,923人と僅かですが後期高齢者が前期高齢者の数を上回りました。
那覇市は後期高齢者が大きく増えるとともに、要支援・要介護認定者も急増すると想定。
介護保険サービスの拡大や、サービス提供体制の充実に急いでいます。
要支援・要介護認定者が年々増加している
那覇市では介護保険の要支援・要介護認定者が年々増加しており、2023年には1万5,360人となりました。
要介護認定者の認定率は他の中核市や全国の平均よりも高め。
しかし、受給率(実際にサービスを受けている率)は、全国平均や沖縄県の平均に比べると低めです。

また、那覇市は認定率が高いこともあり、65歳以上の第1号被保険者1人あたりの在宅サービスの給付月額が他の地域よりも高くなっているのも特徴です。
認定者の認定要因としては、男性は認知症が25%で一番多く、高血圧、脳疾患などが続きます。
一方、女性は高血圧が34.4%で一番多く、骨折、認知症、リウマチなどの関節症が続きます。
那覇市は病気の早期発見・早期治療につながる長寿健診の受診率が低めです。
約3人に1人以下しか受診していません。
そのため、那覇市では検診の受診率をあげ、病気や怪我の早期発見・早期治療を推進。
介護とともに医療サポートが必要な高齢者のために、訪問看護などの医療サポートが介護サービスと同時に受けられるよう配慮しています。
また、介護保険サービスの利用率を見てみると、グループホームへの入居や、デイサービスや通所リハビリテーションの利用率が高く、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護は、まだまだサービス提供が始まってから日が浅いのもあり、利用率が低めです。
那覇市では、自宅で暮らす高齢者が多いこともあり、訪問系サービスと通所系サービスを組み合わせて利用している高齢者が多いため、いかに無理やムダなく、多様なサービスを同時利用できる環境を整えるかが課題となっています。
地域包括支援センター「ちゃーがんじゅう課」を設置
那覇市はソーキソバや豚の角煮、ゴーヤチャンプルなど、名物料理が多く、遠方からはるばる食べに来る観光客も多数。
首里城や中心市街地の国際通りなど、観光スポットも多く、観光地として人気があります。
若者も多い街なので、日本の全国平均に比べると、那覇市はまだまだ高齢化率は低い方ですが、超高齢社会の到来に向けて、高齢者福祉サービスの充実も含め、地域包括ケアシステムを構築中です。
日本の都道府県の県庁所在都市としては、面積は一番小さく、人口密度も高め。
そういった条件なども加味しながら、那覇市らしい街づくりを目指しています。

那覇市では地域包括支援センターを「ちゃーがんじゅう課」と名付け、地域に密着した高齢者福祉を提供。
名前の通り「いつも元気」を目指して、高齢者一人一人に合わせた介護保険計画などを実施しています。
また、認知症高齢者への専門的な認知症ケアや、「認知症の人と家族の会」の開催、認知症ケアパスの配布などによる介護側の家族のフォロー、認知症初期集中支援チームによる認知症高齢者宅への訪問指導などを実施。
認知症高齢者とその家族の孤立化などを防いでいます。
さらに、介護だけでなく看護や医療サポートが必要な高齢者が増えているため、那覇市は医療サポートの充実にも注力。
内科医や歯科医による訪問診療や看護士による訪問看護などのサービスが気軽に受けられるような環境を整えようとしています。
介護予防のための「ちゃーがんじゅう体操」」を推進
那覇市では最期まで楽しく健康的に過ごせるよう、介護予防に力を入れています。
高齢者の介護をしている家族などへのアンケート調査によると、一番不安に感じるのは「認知症状への対応」と答えた人が一番多く、認知症予防が重要であることが分かりました。
そのため、那覇市はストレッチ体操や筋トレだけでなく、脳トレやバランス運動なども含まれる「ちゃーがんじゅう体操」」を推進。
この体操は介護予防や認知症予防につながる体操で、介護予防リーダー養成講座を修了したリーダーたちが、那覇市の各地で体操活動を行っています。

また、生きがいづくりや生涯学習、社会参加や交流、スポーツやレクリエーションなどを楽しんでいる人の方が、認知症や要介護状態になりにくいことが調査でわかっているため、那覇市は老人福祉センターや老人憩いの家で高齢者向けの講座などを開催。
地域住民との交流の場にもなっています。
生涯スポーツを推進するべく、総合型地域スポーツクラブの活動を推進。
子どもから高齢者まで、誰でも参加できるため、世代を超えた交流ができるのも魅力です。
また、誰でも参加できる健康推進ウォーキング大会「ひやみかちなはウォーク」も開催し、全世代で健康づくりへの意識を高めます。
老人クラブは介護予防活動にも繋がる趣味活動などを実施。
仲間づくりの場にもなっているのがポイントです。
その他にも、栄養・運動等について学ぶ教室や認知症予防教室、筋力アップ教室、男性のための運動教室、男性のための貯筋リーダー講座、フィットネスダンスなどを実施。
いろいろな教室を通じて、高齢者が気軽に介護予防ができるようにしています。
那覇市の高齢者相談

那覇市では高齢者のための相談窓口を設置しています。
那覇市社会福祉協議会では、社会福祉協議会が提供している福祉サービスへの苦情を受け付けており、「福祉サービスで家に来てくれているスタッフの対応が酷い」といった苦情や悩みごとに対応。
1年以内の苦情なら、専門スタッフがアドバイスをしたり、解決に向けて動いたりして、悩みを取り除きます。
また、社会福祉協議会の「南部地域福祉権利擁護センター」では、日常生活自立支援事業を実施中です。
認知症などの病気で、家賃や公共料金などの支払いや、貯金の出し入れなどが難しい人の代わりに、手続きや管理を行います。
代行サービスは有料ですが、比較的低料金ですし、相談は無料です。
「印鑑がすぐどこかへいく」といった悩みがある人は、気軽に相談してみると良いでしょう。
さらに、地域福祉課の「ふれあい福祉相談室」では、日常の心配ごとや悩みごとなら何でも受け付け、助言や援助を行っています。
「ふれあい福祉相談室」には、心の悩みや生活費など、生活の悩み全般の話ができる「一般相談」や、難しい法律の相談も可能な「弁護士・司法書士相談」、騒音や暴力などの悩みが打ち明けられる「人権困りごと相談」、行政への苦情が言える「定例行政相談」など、色々な相談窓口があるのがポイントです。
そして、地域包括支援センター「ちゃーがんじゅう課」では、認知症専門相談や総合相談を実施。
高齢者本人、家族、地域住民の相談に対応しています。
動けない高齢者には家庭訪問なども実施し、しっかりと悩みに耳を傾けています。