寝たきりの人や車いす生活の人を介護していると、十分に気を付けたいのが褥瘡(じょくそう)です。褥瘡は一般的に床ずれと呼ばれ、皮膚の一部が赤い色みを帯びて炎症を起こす皮膚の病変です。
褥瘡の治療には日ごろのケアと適切な薬の選択が欠かせません。
今回は褥瘡に関する基本的な薬の活用法をご紹介いたします。
褥瘡の前ぶれ症状を確認しよう
脳梗塞や老衰で寝たきりの状態が続いている人や、歩行不安定で長時間の車いす生活を続けている人は、布団や椅子に圧迫された部分の血の流れが悪くなってしまいます。
長時間にわたり圧がかかることによって、十分な血液が供給されず、必要な酸素や栄養を補給できなくなった皮膚は、やがて炎症を引き起こし、重症の場合は潰瘍や壊死にまで発展します。
私たちが普段寝ているときや椅子に座っているときに褥瘡にならないのは、無意識に寝返りやお尻を浮かせるなどの圧を分散させる行動をしているからです。この圧を分散させる行動を体位変換といいます。
脳梗塞で麻痺のある人や、老衰で筋力が低下した人は体位変換が難しく、圧力を分散することが困難なので、褥瘡になりやすくなってしまいます。
褥瘡になりやすい部分は、骨の出っ張ったところです。寝ている体の向きや、座っている姿勢によって異なりますが、腰よりやや下のお尻の中心にある仙骨部、かかと、後頭部、尾骨、坐骨、背部などで発症しやすいです。
個人差はあるものの、圧迫が3~4時間続くと褥瘡になりやすいですが、それを元通りの皮膚に治すのは容易ではありません。
こまめに体位変換を行い、圧がかかりすぎないように注意する必要があります。圧を分散させる福祉用具のマットレスを利用するなど、工夫しながら予防することも大切です。
褥瘡になりやすい皮膚の前ぶれ症状を確認時は、皮膚が赤くなっているところに注目しましょう。
皮膚の赤くなっているところを指で3秒ほど押して圧迫し、白く変化すれば褥瘡の心配は少ないです。圧迫しても赤みが消えずそのままの場合には、早急に対応する必要があります。

褥瘡治療のポイントは皮膚の固定
とはいえ、どんなに献身的な介護や看護を提供できても、条件が悪ければ褥瘡ができてしまいますので、その後の治療についても理解を深めておきましょう。
高齢者の皮膚は、体内の水分量の低下、皮膚脂質量の低下、コラーゲン繊維の減少などの影響でたるみが生じ大きく動きます。
皮膚が動くと傷の部分が擦れ合うので、症状を悪化させるだけでなく、せっかく塗り薬を塗っても本来効いてほしい部分からずれてしまうことがあります。
そうすると、十分な効果が得られません。このずれを防ぎ、皮膚を固定させることが褥瘡治療の大事なポイントです。
もう一つは、薬の選択です。
私たちが転んで擦り傷ができると、その患部から血液以外に滲出液(しんしゅつえき)と呼ばれる透明~黄色の液体がジワジワと出てきます。この滲出液には白血球やマクロファージといった傷の治癒に必要な成分が豊富に含まれています。
褥瘡も傷の一種ですので、患部からは滲出液が分泌されます。この滲出液の量は、少量だと傷は治りにくく、多すぎてもジュクジュクしてしまい、治りが悪くなってしまいます。
60~70%の適度な湿潤環境をつくってあげることが、傷を早く治すのに有効です。
この湿潤環境を適度に保つために使われるのが、塗り薬やドレッシング剤と呼ばれる被覆材です。
これらの選択を間違えると治りが非常に遅くなってしまうので、患部をしっかりと観察し、滲出液の量、皮膚の熱感、匂い、色などを見ながらタイミングごとに使い分ける必要があります。
適切な治療薬を選ぶことが大切
褥瘡に使われる塗り薬は多岐に渡ります。一般的に塗り薬は、有効成分が約5%、残りの95%は添加物で構成されています。薬効を示す有効成分の選択はもちろん大事ですが、褥瘡治療で有効成分と同じくらい大事なことは、添加物の成分です。
その理由は、添加物が滲出液の量をコントロールしてくれることにあります。
例えば、患部周辺の皮膚を触ったときに熱感を帯びており、強い匂いがしたときなどは細菌に感染している可能性が高く、有効成分に抗菌作用をもった薬が選ばれます。
さらに、感染時には一般的に滲出液が多量に出るので、滲出液を吸収し抗菌作用のある薬を選択することで、治りが格段に早くなる場合があります。
抗菌作用のある塗り薬には滲出液をほとんど吸わない薬もあるため、有効成分だけで薬を選択すると、たとえ抗菌作用をもっている薬でも、傷はなかなか治りません。
褥瘡治療を続けていて、なかなか状態が改善されていないときや悪化しているようなときには、適切な治療薬が選択されているか今一度確認すると良いでしょう。

医師、看護師だけでなく薬剤師にも意見を求めよう
褥瘡の治療は医師、看護師とともに、薬剤師も含めたチームでの治療が最も治りが早いといわれています。
塗り薬の選択は、経験則ではなく理論的な裏付けが必要です。薬剤師は薬学部で薬剤学を学んできており、添加物に使われる薬剤について十分な知識を有しています。
添加物の組成まで考え、状態に合った薬の選択をすることが、早期治癒につながります。
そのなかで、褥瘡治療では薬剤師の需要が高まっており、褥瘡・創傷専門薬剤師という専門薬剤師制度が日本褥瘡学会で創設されました。チーム医療の一員として、薬剤師が褥瘡領域で力を発揮することがますます求められていくことでしょう。
現在治療中の方で、もし薬剤師が介入していないようなときは、ぜひ薬剤師にも相談してみてください。今までとは別の視点からアドバイスをもらえるかもしれません。