千葉県の地域包括支援センターで社会福祉士として勤務する藤野です。
ご高齢者が地域で安心して生活するためには、医療や福祉との連携のほか、地域住民との連携も重要です。
高齢者が在宅で生活している場合、いくら福祉サービスを組み合わせても24時間体制での見守りや支援をすることは困難だからです。
そこで、今回は地域連携の中核を担う、区長や民生委員の役割について説明いたします。
地域の見守りなどを支える区長や民生委員
地域での連携において、頼りになるのが区長さんや民生委員さんです。地域で課題を抱える世帯があったとき、私たち地域包括支援センターは「地域ケア個別会議」という会議を開催します。
例えば、認知症によって徘徊が始まった高齢者について、医療機関や警察、行政、福祉事業所とその情報を共有し、対策を考えていくといった内容の会議になります。
その際、地域を守る区長さん、民生委員さんにも出席を依頼します。「認知症→徘徊→地域でフォロー」といった環境をつくるための課題を関係者で話し合うときに地域住民の力は欠かせないからです。「地域に徘徊の恐れがある方がいる」という事実を把握していただくだけでも、大きな力となります。「見守りの目」を周囲の方に持っていただくことが、課題を抱えた高齢者にはとても重要なのです。
これまでも認知症により、踏切から線路軌道内に入り込んでしまった高齢者や、同居の妻に暴力や暴言を振るってしまう高齢者について、地域ケア推進会議にて情報を共有し、適切な医療につなげて地域で見守っていく体制を構築してきました。
最終的には、医療機関に入院したり施設入所したりという流れになるのですが、それまでの期間をカバーするためには、地域住民の理解が必要です。
その際、地域を取りまとめる区長さんが力を発揮します。それとなく見守ってくださったり、適宜訪問して様子を見てくれたりといった活動を、民生委員さんと共同して行ってくださいます。異常があった際には、私たち地域包括支援センターに連絡をしてくれるのです。
「あたたかい地域の見守りの目」と「人と人とをつなげていく」地域体制は、区長さんや民生委員さんの協力なくして成立しないのです。
不足する未来の担い手を育てていくことが大切
地域の課題を抽出し、行政に報告していく地域ケア推進会議にも参加していただき、ともに地域の改善すべき課題に取り組んでいただいています。最近では、高齢者の新型コロナウィルスワクチンの接種を円滑化するため、区長さんたちと話し合いを持つこともありました。その結果、区長さんや民生委員さんの協力のほか、地域の社会福祉法人の協力も得て、ワクチン接種会場までの高齢者の移動手段を確保することができました。
地域での生活に不安がある人の情報を地域包括支援センターに連絡してくださり、それを基に私たちが支援の動きをとることもしばしばあります。
地域包括支援センターは、広く一般的に知られているとは、まだまだ言えません。そんな中、区長さんや民生委員さんが地域住民と包括支援センターとの架け橋になってくださっているのです。私たちの担当するエリアは台風15号で大きな被害を受けました。また2020年末の断水騒動で、多くの住民が生活に支障をきたしました。このような災害の際に活躍されるのも地域を守る区長さんや民生委員さんです。被害状況の把握や支援物資の配布など地域包括支援センターもともに活動させていただき、地域の被害状況や必要な物資、支援について共有することでより合理的な活動が叶ったと考えています。
日常的に発生する独居の高齢者や認知症の人の地域課題の共有や災害など非常時の協力体制についても、今後も地域ケア推進会議などを通じて、さらに密な連携が取れる様準備をしていく必要性があると強く感じています。
高齢者が安心して暮らせる環境づくりは、地域に精通し、地域のために活動してくださる区長さんや地域住民との連携が欠かせません。
しかし、過疎高齢化が進む地域では、その担い手が不足していることも事実です。さらに、区長さんや民生委員さんの活動に求められる内容も高まってきています。住民による互助が成立しなくなりつつあるのです。
地域包括支援センターとしては、地域の柱である区長さんとの連携を強化するとともに、少しでもその活動が楽になるよう、福祉サービスや広く地域住民への働きかけを行っていく必要があると考えています。
次の地域の担い手となる未来の区長さんと良好な関係を築くためにも、そうした働きかけは急務だと、私は考えています。