皆さん、こんにちは。認知症支援事業所 笑幸 代表の魚谷幸司です。
私の事業所では、介護保険では対応できないことに特化してサービスを提供しています。ここ数ヵ月の間、新型コロナウイルスのワクチン接種に伴う全般的な対応をすることがありました。
そこで、今回はワクチン接種の予約に始まり、接種日の付き添い、接種後の様子観察などの対応を通じて感じたことをお話します。
高齢者にとっては不便なワクチン予約方法
まず連日報道されているとはいえ、新型コロナウイルスそのものについてまだよく知らない人がいるという現実があります。
私に依頼してきたTさんもその一人です。認知症ではありませんが、家にテレビはなく、新聞をとっていないために情報は人を通して聞く程度です。したがって、ワクチン接種の案内が届いてもよくわからず、ケアマネージャーさんから新型コロナの話をされるまで気にも留めなかったと言われます。
しかし、ようやくその必要性を理解し、予約をしようと思ったときに新たな壁にぶつかります。予約ができないのです。これは、私自身も案内が届いたときに感じて腹立たしく思っていたことでした。なぜなら、予約方法が高齢者にとって決してわかりやすいとは言えなかったからです。
接種できる場所は「ホームページに載っている」「予約はQRコードで」といった具合です。これでは、認知症ではない高齢者にとっても難しいと言えるのではないでしょうか。世間一般の人にとって便利と思われていることが高齢者にとってはそうではないことが多いと早く気がついてほしいと思います。

認知症の人はマスク着用も理解しづらい
また、マスク着用の必要性については、少なくとも一部の認知症の人には理解が難しいことです。接種場所までの道中や接種場所において説明し、着用を促してもすぐに外してしまうのです。
「風邪も引いていないのになぜずっとしないといけないのか」と言われます。理解できないままマスクを「させられる」ことは、一部の認知症の人にとっては不快でしかありません。結果として、周りの関係者がマスク着用を徹底することしかできません。しかし、認知症の人からしてみれば「なぜみんなマスクをしているのか」「マスクをしていると何を言ってるのかがよくわからない」という話になります。
さらに、新型コロナウイルスに限ったことではありませんが、認知症の人は自身の体調変化を正確に伝えることが難しいと言われています。病気によっては表情などから推測して対応をすることとなりますが、それも思うようにできません。接種後に何度も体温を測ることにしても、「なぜそんなに測るのか」となってしまうのです。

以上のことから一般の人にとっても難しい感染対策が、高齢者や認知症の人にとっては、なお難しいとわかっていただけましたでしょうか。
何かわかりやすい方法で感染対策は行えないものだろうかと思います。高齢者にとってわかりやすいことはほかの人にとっても良いことだと、私は考えます。感染者数が落ち着いてきたとはいえ、今後のためにも、今回の感染症対策を通して学ぶべきことは多くあると言えるのではないでしょうか。