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第233回

介護保険制度の歴史から読み解く!2025年の「地域包括ケア」に必要な視点とは?

最終更新日時 2021/06/16
#介護保険サービス
皆さんこんにちは。終活カウンセラー協会認定終活講師でジャーナリストの小川朗です。終活カウンセラー協会では、介護保険制度の成立からその内容について、テキストで詳しく学んでいます。そこで今回は介護保険制度の歴史と背景を探り、現在に横たわる問題についてお話いたします。

皆さんこんにちは。終活カウンセラー協会認定終活講師でジャーナリストの小川朗です。

延べ2万2,000人以上が受講している終活カウンセラー協会の2級検定(昨年まで初級検定)において、介護は6つある主要科目の1つとなっています。2011年に協会が設立された当時、公式テキストに終活、保険、年金、相続、お葬式・供養とともに介護を組み入れた経緯について、武藤頼胡代表理事に聞いてみました。すると、10年前の世相がくっきりと浮かび上がってきたのです。

「当時すでに、日本が超高齢社会に突入することがはっきりしていました。介護保険についても、自分たちでしっかりと知っておかなければならない状況になっていました」

そこで、今回は介護保険制度が誕生する背景や歴史を探り、終活カウンセラー協会がどのようにかかわってきたかをご紹介します。

介護保険制度が誕生した歴史と背景

介護保険制度がスタートしたのは、20世紀最後の年となった2000年4月。小渕恵三首相が病に倒れ、小渕内閣をそのまま引き継ぐ形で森喜朗政権が誕生するなど、政治の世界も混乱している時期でした。

この連載の第91回でもふれた通り、介護保険がスタートした当初は環境が十分に整備されていたとは言えず、介護の現場も手探り状態でした。夫婦がそれぞれの実家で実母の介護をするために別居を余儀なくされた、筆者の元同僚Aさんは、サポートも受けられないまま介護離職に追い込まれました。

介護保険法案が国会に提出されたのは、橋本龍太郎政権の1996年11月。1997年12月の国会で可決成立しました。その根底には、1990年に1人の高齢者(65歳以上)を5人の現役世代(20歳から64歳)で支えていた人口ピラミッドの構造が、2025年には1人の高齢者を1.8人の成人で支えることになるとの予測がありました。

ものすごいスピードで人口ピラミッドが変わり、それまでの高齢者福祉、高齢者医療政策が崩壊する危機感があったのです。

また、介護保険法に移行するまでは自治体主体の「措置制度」によって介護サービスの提供が行われていました。しかし、この制度は、いくつかの難点も指摘されていました。

  1. 市町村が介護サービスの種類、提供機関を決めるため、利用者が選択をできない状況だった。そのうえ、競争原理が働かないことからサービス内容が画一的になりがちだった。
  2. 所得調査が必要なため、利用にあたっての抵抗感があった。
  3. 応能負担(受けたサービスの量に応じて、費用を負担する方式)となるため、中高所得者の負担が重くなっていた。

すでにこの頃から、現場では介護を理由とする一般病院への長期入院(いわゆる社会的入院)が激増。特別養護老人ホームや介護老人保健施設に比べてコストが高く、医療費も増加するという深刻な問題も起きていました。

介護保険制度の基本的な考え方3つ

従来の高齢者福祉・高齢者医療制度による対応はすでに限界だったため、医療保険がパンクする前に、介護保険制度を導入したわけです。それは「病院で一生面倒を見てもらえる社会」から、「在宅医療・介護を促進することで、病院には一定期間しかいられない社会」に向けての一大改革でもありました。

その基本的な考え方は次の3つです。

  1. 単に高齢者の身の回りの世話をするのではなく、高齢者の自立を支援する。
  2. 利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービスや福祉サービスを総合的に受けられる制度。
  3. 給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用。

一方で、導入当初は業界全体が整備されておらず、スタッフの人材育成も不十分で、多くの現場で前述のAさんが直面したようなケースが引き起こされていたわけです。

終活カウンセラー協会が重視する介護保険の仕組み

さて、本協会の講義で重要なポイントとなっているのは、「そもそも介護保険は健康保険加入者全員が、40歳から加入者になること」です。生涯にわたる保険料の支払い義務が発生し、年金からも天引きされます。介護サービスが必要な要支援・要介護の認定を受けた場合に、被保険者は収入に応じた自己負担割合で、その介護度に応じたサービスを受けられますが、制度を利用する側になっても、保険料の支払いは続きます。その都度、国民の同意を必要としていません。つまりは税金のようなものなのです。

そうなると、すべての市町村に介護事業所がないと、都合が悪いことになります。そこで導入前の1990年代後半には民間に対しても介護業界への参入が積極的に働きかけられました。とはいえ、民間企業は営利法人。利益を上げて株主に還元するのが目的だけに、積極的にマーケットを奪い合いました。大手民間企業がグループホームやデイサービスなどをオープンさせ、介護ビジネスバブルとも言える状況まで起きていました。

介護保険制度によって林立した民間介護施設

終活カウンセラーが知るべき介護保険の改革

診療報酬改定は偶数年にあたる2年ごと、介護報酬改定は3年ごとのペースで行われます。そのため6年ごとに、同じタイミングで改定となるのです。たとえば2006年にはそれまでの訪問介護や訪問介護の文言の前に「介護予防」の4文字が加えられました。少子高齢化が急速に進行する一方、社会の担い手である15歳から64歳の若年人口が減っていくことで、「介護崩壊」の危機が一部でささやかれるようになったためです。

それを回避するための対策として、国民の健康寿命を延ばし、要介護・要支援認定者数を抑制するため「介護予防」の必要性も出てきたわけです。私を含めた第1期の終活カウンセラーが産声を上げた2011年10月23日は、介護保険制度がスタートして12年目。介護保険は国民の間に定着したものの、新たな問題も浮上していました。この年に医療保険と介護保険の改正が同時期に行われ、2012年に施行となります。

地域包括ケアの推進が最重要テーマに据えられ、24時間対応の定期巡回・随時対応サービスや、複合型サービスの創設など、介護保険はさらなる改革を進めていました。当然生活者の側もこの問題をよく知って、生活防衛に役立てる必要性も高まります。終活カウンセラーが知らなければいけない項目は、山ほどあったのです。

2015年には医療・介護などの連携による認知症の方への支援、予防・治療のための研究開発、認知症高齢者などに優しい地域づくりの3本柱にした認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)も掲げられました。

直近では団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度の要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるよう、医療・介護・住まい・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築がテーマとなります。時代に沿いながら形を変える我が国の介護。介護業界もコロナ禍の中、賃金や待遇の面でも多くの問題に直面しています。

終活を学ぶことは、こうした問題を自分のこととしてとらえる、きっかけにもなるのです。

終活カウンセラー検定のテキスト

左は2011年10月23日、筆者が受講した第1回終活カウンセラー検定のテキスト。右は改訂版のテキスト
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大内田 省治
ケアプランセンターはぴるす 代表取締役
2022/04/13

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