こんにちは。「カラダブログ」を運営し、セミナーなどを通じて「多くの人が病院に行かないような文化を作りたい!」をテーマに活動している理学療法士の吉田直紀です。
介護を受けている方、介護をしてあげる側の方、どちらもより健康でいることが一番よいですよね。
今回は、日本で2,400万人もいると言われている「膝」にトラブルを抱えたみなさんへ、「変形性膝関節症」の方のためのトレーニングと簡単セルフケアをお伝えしていきます。
非常にお手軽なものです。動画も4本ご用意したので、ぜひご自宅・施設で実践してみてください。
膝関節の3つのお悩み
わが国にはX線上の変形性膝関節症(膝OA)が2,400万人、腰椎OA が3,500万人いると推測されることが、東京大学医学部22世紀医療センターによる疫学調査で明らかになった。
平成28年の厚生労働省の調べによると「介護が必要となった主な原因」を要介護度別にみると、要支援者では「関節疾患」が 17.2%で最も多い」とされています。関節症を減らすことで早急に求められています。
膝関節の悩みは大きく3つ
・伸びない
・曲がらない
・痛い
以上の3つの症状が問題になります。
厳密にいうと、最初に「膝が曲がらない・伸びない」という症状から始まり、徐々に膝の痛みが出現することが多いです。
「最近膝が曲がりにくくて…。」「膝が伸びないんですよね~」と、そんな言葉をよく耳にします。
しかし、病院に行くまでの症状ではないので、ほとんどの人が放っておいてしまいます。そして徐々に膝の変形は進行して手術適応レベルまで悪化してしまうケースが多い。
膝の「伸びない・曲がらない」は膝のSOSです。早ければ早いほどSOSに対処することができます。
他にも…
・膝が腫れている
・膝に熱感がある
・階段の上り下りで痛む
・膝が変形している(O脚やX脚のように見える)
・太ももの筋肉が細い
・膝を押すと痛む場所がある
など、上記に当てはまる人も「膝」へのストレスが溜まっているかもしれません。
トレーニングは1つに絞ると効果的
膝関節の痛みにはさまざまな治療方法があります。注射や薬、手術などなど。
確かに痛みを止めることは大切です。しかし、膝痛になった根本の原因は改善できていますか?膝の伸びない・曲がらないは解消されたでしょうか?
変形性膝関節症になりやすい要素として…
・肥満
・膝の既往歴
・性別が女性
など、以上の3つがあげられます。つまり、体重が増えて筋力が弱い女性は膝の負担がかかりやすいということなのです。
では手術以外で科学的に根拠のある膝の治療方法にはどんなものがあるのでしょうか?
- 筋力強化運動
- 有酸素運動
- 物理療法
これらの方法は科学的根拠が高い治療方法になります。
有酸素運動・筋力強化運動・パフォーマンストレーニングを研究した結果
ある研究論文によると…
・3つの複合的なトレーニングは効果が低い
・単一のトレーニングに絞った方が効果が高い
・週3回が効果的
・トレーニングの強度や期間には差がない
といった結果になりました。つまり「週3回、有酸素か筋トレかパフォーマンストレーニングのうち1つに絞って運動する」ことが重要になります。
今回は1つに絞って膝の筋力強化運動とその前の準備段階として、膝の動きをスムーズにするセルフケアをお伝えしますね。
理学療法士が伝える3つのセルフケア
3つのセルフケアの目的は「膝周りの動きをよくすること」が目的です。膝周りの動きが悪い状態で筋力強化運動を行なうと痛みが出る場合があります。
まずは「膝周りの筋肉をほぐす」ことが第1の選択肢になります。今回は、特に硬くなりやすい部位のセルフケアをお伝えします。
- お皿のマッサージ
- 膝の曲げ伸ばし
- 膝裏マッサージ
筋力強化運動をする前に膝周りを柔らかくしておくことがポイントです!膝を曲げ伸ばししても引っかかりや痛みがない状態まで改善しておくことが重要になるのでおさえておきましょう。
膝痛解消3つの運動療法
これは私の患者さんの中で、膝関節に痛みがある人へ「自主トレーニング」として提供しているものになります。ぜひやってみてください。
- 膝伸ばし運動
- 膝が伸びきらない人は太ももの前側の筋力が弱くなり、太ももの後ろ側の筋肉が硬くなります。この運動は2つの筋肉を同時に刺激する効率の良い運動です。太ももの後ろ側~膝の後ろ側まで突っ張る感じがすれば効いている証拠です。
- 横向きからの体伸ばし
- 肋骨~膝周りの外側の筋肉はつながっています。膝が伸びない・曲がらない人はこの筋肉の連結部位が硬くなります。加えてこの部位が硬くなると歩くときの外側の動揺が強くなってしまい、結果的に膝の痛みにつながります。
- 体を大きく伸ばすことによって縮まっている筋肉を伸ばして上げましょう。
- お尻上げ
- お尻にある「大臀筋」という筋肉を鍛える運動です。現代の生活では大臀筋を使う機会が減っています。特に立ち仕事が少なく、座っている時間が多い人ほどお尻の筋肉は使わなくなります。
- お尻の筋肉を鍛えることで歩きが安定して膝のストレスも少なくなってきます。
膝痛のための体重コントロール
これは簡単に想像ができると思いますが、体重が重ければ重いほど膝に負担がかかります。体重と身長の関係から肥満度を表す体格指数にBMIというものがあります。
計算式はとても簡単でBMI= 「体重kg ÷ (身長m)✕2」。この数値が25以上の場合は膝関節に問題が出やすくなります。肥満による膝関節の負担が大きくなるのです。
ここで質問です。
・たくさん走ったり歩いたりする必要があるのでしょうか?
答えはNoです。歩くだけで膝が痛い人にとってウォーキングはジョギングで膝を痛めてしまうかもしれません。実は、体重を落とすためだけなら有酸素運動よりも筋力トレーニングの方が効果的なのです。
人間には、安静にしていても使うエネルギーとして「基礎代謝」というものがあります。これが1日の6〜7割ほどのエネルギー消費になります。
基礎代謝が高い部位ランキングは…
1位「肝臓」
2位「脳」
3位「筋肉」
つまり筋肉をつけることは基礎代謝を上げて痩せやすい体に変わるポイントなのです。
私のオススメは朝に筋トレを行うこと。朝に筋トレを行うことで1日中エネルギー消費が高い状態になるからです。
筋肉をつけることも大事ですが、加えて「食事」も体重コントロールをする上で大切になります。
細かい食事のコントロールはとても難しく、モチベーション維持も大変です。特に、いきなり食事の量を減らすのはストレスもたまりリバウンドすることがほとんど…。
私のオススメは「食事の量を減らすよりも質を変えること」です。1日の食事を見直した時にカロリーが高いものや余分なお菓子、ジュース、アイス、ファーストフード、などを控えて和食に変えてみる。
それだけでもかなりのカロリー数がマイナスになります。まずは無理なく食事の質を変えてみる。少し慣れてきたら食事の量を変えてみる。これがかなり“大切”です。
膝痛解消のためのプログラムまとめ
膝痛の根本的な解決は、
・体重コントロール
・膝周りの筋力強化
・膝関節の柔軟性の向上
以上の3つを揃えることが重要になります。
体重を減らして膝にかかる負担を減らす。そして、筋肉を柔らかく強くすることが膝痛解消のための一歩となります。とてもシンプルですがこれらの運動やセルフケアを行いつつ、食事に気をつけることで膝の痛みを緩和できるのです。
薬や手術だけに頼るのではなく、自分の膝を整え、大切にすることで膝の負担が変わります。「膝が曲がらない・伸びない」人こそ早めの対処が必要になってきます。
この連載で何度かお伝えしていますが、介護者の健康が何よりも大事ですよね。自分のためのセルフケア、そして要介護になってしまったご家族、まだまだ健康だけど加齢で体力が落ちてきた方にぜひ実践していただきたいと思います。
次回は「肥満解消のための代謝を上げる運動」をお伝えします。お楽しみに!