「介護予防って、なんだか地味で大変そう…」そんな先入観、ありませんか?そのイメージを軽やかにくつがえし、全国の高齢者に笑顔と元気を届けているのが、作業療法士のスギリハ先生です。
「歌って、踊って、楽しんで!」を合言葉に、音楽とリハビリを組み合わせた体操を、先生ご自身のアイデアで制作・発信し続けています。
今回はその活動のきっかけやこだわり、さらにご家庭で取り入れる際のヒントをたっぷり伺ってきました。
「介護予防って、なんだか地味で大変そう…」そんな先入観、ありませんか?そのイメージを軽やかにくつがえし、全国の高齢者に笑顔と元気を届けているのが、作業療法士のスギリハ先生です。
「歌って、踊って、楽しんで!」を合言葉に、音楽とリハビリを組み合わせた体操を、先生ご自身のアイデアで制作・発信し続けています。
今回はその活動のきっかけやこだわり、さらにご家庭で取り入れる際のヒントをたっぷり伺ってきました。
今井:最近、親の健康のために何かできないかと考えている方も多いのではないでしょうか。
そんな皆さんにぜひ知ってほしいのが、作業療法士のスギリハ先生が運営するYouTubeチャンネル『スギリハCH「歌体操・健康体操」』です。
登録者は3万7,500人を超え、65歳以上のシニア世代に向けて、健康と笑顔をテーマにした体操動画やお役立ち情報をコンスタントに発信されています。 再生リストには肩こり・膝痛・姿勢改善など目的別にプログラムが並んでおり、とても充実した内容です。
さらに、体操の考案から実演、撮影編集、そして使用される歌まで、すべて先生ご自身が手がけているという点にも驚かされます。スギリハCHが生まれた背景には、どんな想いがあったのでしょうか?これまでの歩みとあわせてお聞かせください。
スギリハ先生:作業療法士になって、もう20年になります。 最初の2年半は病院で勤務し、その後は有料老人ホームで12年半にわたり機能訓練士として働いてきました。
YouTubeでの活動を始めたのは5年ほど前、ちょうどコロナ禍の真っ只中でした。 緊急事態宣言が繰り返され、外出自粛の日々が続く中、両親も家にこもりきりになり、体調を崩してしまったんです。 私自身も仕事柄なかなか実家に戻ることができず、今の自分にできることは何だろうと考えるようになりました。
そこで、これまでの経験を活かして体操の動画を作り、両親に送ってみたところ、楽しんで取り組んでくれて、ちょっと元気になったんです。 気づけば毎週のように送り続けるようになり、服装や雰囲気づくりにも少しずつこだわるようになりました。
そうして動画の本数が増えていくうちに、これは他の高齢の方にも役に立つかもしれないと思い、YouTubeでの公開を決意しました。
今井: ご家族のために始めたことが、いまや多くの方の健康や日常の楽しみにまでつながっているなんて、とても素敵ですね。 公開当初から反響は大きかったのでしょうか?
スギリハ先生: 確実に65歳以上の方に届けたかったので、最初の4ヶ月間は誰にも知らせずに投稿していたため、反応はありませんでした(笑)。
でも、昭和歌謡を扱うYouTuberのみなさんと交流をし始めてから、少しずつ広がり始めたんです。 今では、80代や90代の方からも「動画を見ながら、毎回楽しく体操しています」といったコメントをいただくようになりました。
また、ご家族の方が私のチャンネルを見つけて、コレいいよとお父さんやお母さんに勧めてくださることがあるそうです。 そしてそのご家族が体操を始めると、ベッドで寝ていたのに自分から起きてきて、一緒に取り組むようになったというお話を伺い、とても感動しています。
今井:スギリハ先生のチャンネルといえば、やはり歌体操ですよね。 実際に拝見していても、自然と体を動かしたくなるような工夫がたくさん感じられます。 このスタイルは、どのようにして生まれたのでしょうか?
スギリハ先生:私はもともとエアロビックが趣味で、競技にも出場していました。 その経験から、音楽に合わせて体を動かす楽しさを、自然と実感していたんです。
リハビリの現場でも音楽を活用していて、たとえば北島三郎さんの曲を流すと、普段は来られない方が「今日はやってみようかな」と、意欲的に取り組んでくださることがありました。
また、アルツハイマー病で会話が難しい方でも、昔好きだった歌をかけると涙を流されたり、体を動かしたりして自らリハビリに取り組まれる姿が見られることもありました。音楽には記憶や感情に触れ、意欲や集中力を引き出すなど、無限大の力があると感じています。 そうした経験を重ねるなかで、音楽を通して自然に体を動かすという歌体操のスタイルが、少しずつ形になっていきました。
今井:音楽がリハビリの現場でも活かされており、あらためてその力を実感しました。 では次に、動画を制作されるうえで、楽しく続けてもらうために工夫されていることがあれば教えてください。
スギリハ先生: 振り付けはあえてシンプルにして、バリエーションも絞っています。 こうすることで「私にもできた!」という達成感が生まれ、それが次の意欲につながるんです。 しかも、ただ踊るだけではなく、歩行に必要な体幹を鍛える体操をさりげなく取り入れていて、楽しんでいたらリハビリもできたという仕組みにしています。
さらに季節感も大切にしていて、例えば『もみじ』なら手で紅葉が舞い落ちるような動きを入れるなど、曲の世界観と季節のワクワク感を一緒に味わってもらえるよう工夫しています。
今井: では、公開されている約1000本の動画の中から、先生のおすすめ体操動画を2本教えてください!
スギリハ先生: まず1つ目は、多くの方に毎日ご活用いただいている10分間の健康体操シリーズの中から、『椅子に座って出来る全身運動』をご紹介します。
この体操は、全身をしっかり動かせるように設計しつつ、椅子に座ったまま無理なく続けられるので、初めての方にもおすすめです。 猫背予防や脚力・体力の向上、転倒予防など、健康維持に役立つ効果も期待できます。
そして2つ目は、私がおすすめしている、楽器を使った楽しいリズム体操シリーズの中から、なじみ深い童謡を歌いながら取り組める『夏の童謡 村祭り』をご紹介します。
小物を使うと、体操の盛り上がりがぐっと変わります。 特に今井さんの開発された『良くなる子』はとても軽く、麻痺や拘縮のある方でもほんの少し動かすだけで音が鳴るので、「私にも鳴らせた!」という感覚が得られます。 これは本当に大切なことだと感じています。
その他にも鈴やタンバリン、思い出のハンカチなどお好きなものを手に取って、お祭りのイメージに合わせて「歌って、踊って、楽しんで!」まいりましょう。
今井: それでは最後に、活動を通して伝えたいことや、読者のみなさんへのメッセージをお願いします。
スギリハ先生: 体操は、毎日じゃなくても大丈夫です。1日おきでも、週1回でも構いません。 大切なのは続けることです。無理のない運動量で、またやろうと思えるリズムをつくってください。 難易度やジャンルを自分に合わせて選べるのも歌体操の魅力のひとつですので、気になった動画から気軽にクリックしてみてください。
また、ご自宅で介護されている方にとっては、体操中の姿をそっと見守るこの時間が肩の力を抜ける癒しの時間にもなります。 困ったときは、介護の教科書の情報や専門機関を、どうか遠慮なく活用してください。 「一人じゃない」という安心感が、介護を続ける力になります。
いかがでしたか? 実は私も、膝を痛めていた母に先生の動画を勧めてみました。 難しい動きはなく、椅子に座ったまま音楽に合わせて気軽にできるからこそ、「ちょっとだけでもやってみようかな」と思えたようです。
スギリハ先生の動画には、人を思いやる優しさと、無理なく続けられる工夫がたくさん詰まっています。 ご家族の健康を願う小さな一歩として、まずは1本の動画をそっと勧めてみてはいかがでしょうか?
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