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第96回

【薬剤師が解説】頭痛薬を飲んでも治らないのはなぜ?薬剤使用過多による頭痛の可能性を解説!

最終更新日時 2023/03/09
#高齢者の健康 #薬
目 次

頭痛は、はっきりとした原因がない一次性頭痛と、脳梗塞や怪我などの病気や障がいが原因となって起こる二次性頭痛に分けられます。

一般的に頭痛といった場合、一次性頭痛のことを指し、その多くは「締めつけられるような…」「重りを乗せられたような…」と表現される緊張型頭痛です。

40歳を超えると、頭痛の発生頻度は低下する傾向にありますが、それでも頭痛に悩む高齢者は多いといわれています。

市販でも購入できる鎮痛薬(痛み止め)は、頭痛の緩和に効果的な薬です。しかし、鎮痛薬を使用する回数が増えると、痛みを緩和するどころか、ひどくなってしまうことがあります。

今回は、薬剤の使用過多による頭痛について解説し、鎮痛薬の副作用や注意すべき点や鎮痛薬の安全な使用法をご紹介いたします。

薬剤の使用過多による頭痛とは?

頭痛の緩和を目的に鎮痛薬を過剰に使用すると、頭痛を生じる回数が増えてしまい、やがて毎日のように頭痛に悩まされる状態になってしまうことがあります。このような状態を「薬剤の使用過多による頭痛」と呼びます。

薬剤の使用過多による頭痛は、病院から処方される鎮痛薬だけでなく、市販で購入できる鎮痛薬でも生じることがあります。具体的には、以下の状態を満たす場合、薬剤の使用過多による頭痛に該当する可能性があります。

  • 頭痛の症状が以前からあり、1ヵ月に15日以上の頭痛を感じる
  • 1種類、もしくはそれ以上の鎮痛薬を、頭痛の治療薬として3ヵ月以上定期的に使用している
  • ほかに頭痛の原因となる病気がない

鎮痛薬の「定期的な使用」とは、鎮痛成分が複数配合されている薬であれば月に10日以上、1種類の鎮痛成分が配合されている薬であれば月に15日以上を指します。

市販の鎮痛薬では、複数の鎮痛成分が配合されている製品も多く、3ヵ月以上にわたって定期的に使用している場合は、薬剤の使用過多による頭痛に注意が必要です。

98人を対象とした研究報告によれば、薬剤の使用過多による頭痛を発症するまでの期間は、一般的な鎮痛薬で4.8年と報告されています。5年以上にわたり、頭痛の治療で鎮痛薬を常用している人は、薬剤の使用過多による頭痛の可能性を考える必要があるかもしれません。

薬剤の使用過多による頭痛は医療機関の受診を

薬剤の使用過多による頭痛は、適切な治療によって約7割の人が過剰な使用を中止できるとされています。

一方、頭痛薬の使用を中止できても、3割の人が半年以内、4割の人が1年以内に再発するともいわれており、自己判断で対処するには限界があります。そのため、頭痛外来など適切な医療機関の受診がすすめられます。

薬剤の使用過多による頭痛は、原因となっている鎮痛薬を中止することが治療の基本です。そのうえで、頭痛を予防するための薬を服用しながら、頭痛の症状がひどい場合にのみ、原因となった鎮痛薬以外の薬で症状を抑える治療が行われます。

また、原因となった鎮痛薬を中止した後も、継続的に薬の使用状態を確認し、薬剤の使用過多による頭痛について、医師や薬剤師などの専門家から適切なアドバイスを受けることで、頭痛の再発を減らすことができます。

頭痛薬を頻繁に飲んでいると逆に頭痛の原因になる

高齢者における鎮痛薬の副作用

高齢者に対して鎮痛薬が処方される機会は多く、海外で行われた研究では、診療所を受診した65歳以上の96.4%が鎮痛薬を使用していたと報告されています。

鎮痛薬は優れた鎮痛効果と炎症を抑える作用を期待できますが、高齢者には副作用が出やすいことが知られています。鎮痛薬の主な副作用は以下の通りです。

鎮痛薬による主な副作用
発生部位 症状や病状
消化器 胃もたれ、胸やけ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃や腸の粘膜からの出血(消化管出血)
循環器 高血圧、心臓病(心筋梗塞など)、心不全
腎臓 むくみ(浮腫)、腎臓病、ミネラルバランスの崩れ

痛みを引き起こす原因に、プロスタグランジンと呼ばれる体内物質があります。一般的に、鎮痛薬はプロスタグランジンの働きを弱めることで鎮痛作用を発揮します。

プロスタグランジンは痛みだけでなく、さまざまな働きが知られており、胃の中では粘膜の表面を保護する役割も担っています。そのため、鎮痛薬を服用すると胃の粘膜にあるプロスタグランジンの働きも弱まり、胃が傷つきやすくなってしまいます。

鎮痛薬を長く服用していると、胃痛や胸やけなどの症状だけでなく、場合によっては胃の粘膜が炎症を起こしてしまったり、高齢者では胃の粘膜がただれてしまう胃潰瘍を発症したり、胃の粘膜から出血を起こしてしまうことも多いのです。

また、鎮痛薬は心筋梗塞や心不全など、心臓病の発生リスクを高めたり、血圧を高める作用が知られています。そのため、高血圧の治療中は、鎮痛薬の使い過ぎによって、血圧の値が高くなってしまうこともあり得ます。

実際、鎮痛薬を使用している人では、鎮痛薬を使用していない人に比べて、高血圧の薬を処方される可能性が高いことを報告した研究論文もあります。また、鎮痛薬は収縮期血圧(上の血圧)を2~5mmHgほど高める可能性も報告されています。

ほかにも、鎮痛薬は腎臓に負担をかけることが知られており、腎臓病の発症リスクを高めたり、腎臓の働きが弱まることでむくみ(浮腫)が出やすくなります。

特に高齢者では、もともと腎臓の働きが弱っていることも多く、鎮痛薬の使い過ぎには細心の注意が必要です。

胃や腎臓、血圧に悪影響を及ぼすことも

市販の鎮痛薬は思わぬ副作用を起こす可能性もある

医療機関で治療中の病気がある高齢者の場合、市販の鎮痛薬を使うことは避けた避けた方が良いように思います。鎮痛薬は、病院から処方される薬と飲み合わせが悪いことも多いからです。

また、胃薬などを服用中の方では、鎮痛薬を使用することで、胃腸の症状が悪化することもあります。高血圧を治療中の方も同様に、鎮痛薬が血圧を高めてしまい、病状の悪化が心配されます。

糖尿病を治療中の方では、腎臓の働きが弱まっていることも多く、鎮痛薬の副作用が出やすいといえるでしょう。

市販薬の使用状況について、海外で行われた研究によれば、持病(慢性疾患)のある高齢者の8割以上が何らかの市販薬を使用していました。しかし、このうち約6割の人で市販薬を安全に使用していなかったと報告されています。

近年では、さまざまな種類の鎮痛薬がドラックストアでも気軽に購入できるようになりました。しかし、たびたび繰り返す頭痛に対して、長らく鎮痛薬を使用していると、薬剤の使用過多による頭痛だけでなく、高齢者では思わぬ副作用の原因にもなります。

持病をお持ちの方は、市販の鎮痛薬を購入する前に、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。また、かかりつけの医療機関がない場合では、薬剤師や登録販売者に相談すると良いでしょう。

【参考文献】
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中川 恵子
医療・介護・健康専門ライター
2018/07/13

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