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第73回

老眼治療効果が期待できる目薬とは?米国で新たなに承認された薬の有効性と注意点

最終更新日時 2022/05/18
#薬
視力の低下をもたらす目の病気は、75歳を超えると劇的に増加するといわれています。中でも老眼は根本的な治療の方法は手術しかありませんでした。しかし、アメリカで新たに点眼タイプの治療薬が承認されました。今後、日本でも使用される可能性の高い新薬をいち早く紹介します。

年齢とともに視力の衰えを感じる方は多いと思います。実際、視力の低下をもたらす目の病気は、75歳を超えると劇的に増加するといわれています。視力の低下は、目のピント調節という観点から近視、遠視、老眼に分けることができます。

一般的に「目が悪い」といった場合、若い方では近視を指すことがほとんどです。近視は、近くのものは見やすいのですが、遠くのものがぼやけてしまいます。一方、遠視は遠くのものは見やすいのですが、近くのものがぼやけてしまいます。

老眼は遠視と同じように、近くのものがぼやけて見えますが、その原因が異なります。遠視は目の中を通る光の道筋に異常があるのに対して、老眼はピント調節機能そのものの異常です。

2021年10月、老眼に効果があるとされる目薬が米国で承認されました。今回は、新しい老眼の目薬について解説します。

老眼が生じるメカニズム

目の中にはカメラと同じようにレンズがあります。水晶体(すいしょうたい)と呼ばれるこのレンズは、その厚みを柔軟に変化させることで、遠くのものから近くのものまではっきり見えるようにピントを調節しています。

しかし、年齢を重ねると水晶体の弾力性(柔らかさ)が失われ、近くのものにピントを合わせることが難しくなってしまうのです。これが老眼と呼ばれる状態です。

水晶体が弾力を失うことは老化現象の一つであるため、老眼を患う人は年齢とともに増加します。人によって見え具合に差はありますが、40歳を超えると3割以上の方が老眼を発症すると報告した研究もあります。

全世界で約18億人が患っており、2030年には21億人にまで増加すると予測されているなど、高齢化が進む現代社会において、老眼はとても身近な健康問題といえるでしょう。

老眼治療で注目される成分「ピロカルピン」

これまでの老眼治療

老眼鏡やコンタクトレンズなどを除けば、老眼を根本的に改善させる方法は、これまで手術を行うしかありませんでした。手術の方法もさまざまですが、一般的には人工レンズを目の中に入れる方法が用いられています。

このような手術を行うことにより、衰えた視力が回復し、生活の質も大きく改善することが、複数の研究で報告されています。

しかし、手術を受けた患者さんの中には、時間の経過とともに老眼の症状が再発する人もいらっしゃいます。また、老眼の手術は一般的に安全性が高いといわれていますが、外科的な手術に変わりありませんので、術後の感染症なども心配されます。

さらに、老眼の手術は基本的に自由診療のため、健康保険が使えないなど、経済的な負担も小さくありません。そのため、手術以外の治療法に対する関心が高まっていました。その候補として研究されていた有効成分がピロカルピンです。

現状では老眼を治療する方法は手術しかない

ピロカルピンとは

米国の製薬企業、アッヴィ社が開発し、新たに承認された老眼治療の目薬に「VUITY」という商品があります。

「VUITY」には有効成分としてピロカルピンが1.25%の濃度で配合されています。ピロカルピン自体は決して新しい成分ではなく、日本でも古くから緑内障の治療薬として用いられてきました。

しかし、点眼した後の刺激感や目の霞(かすみ)、あるいは下痢や頭痛などの副作用を起こしやすく、その後に開発された目薬の方が有効性や安全性に優れていたことから、ピロカルピンの目薬が用いられることは少なくなりました。

老眼に対する効果

老眼に対するピロカルピンの効果については、「GEMINI1」「GEMINI2」と名づけられた2つの臨床試験(人を対象に薬や医療機器などの効果を検証する研究)によって、その有効性や安全性が検討されています。

「GEMINI1」は、40~55歳で老眼を患っている323人(平均年齢49.6歳、女性235人)を対象に行われました。

被験者は、ピロカルピン1.25%を有効成分として含む目薬を点眼するグループ(163人)と、有効成分を含まないプラセボ(偽薬)の目薬を点眼するグループ(160人)にランダムに振り分けられました。

それぞれのグループで、30日間にわたり、1日1回両眼に点眼を行い、近距離視力(薄明りの下で測定した、近いものに対する視力の度合い)が比較されています。

解析すると、近距離視力の改善がみられた人の割合はピロカルピンを点眼していたグループの方が22.6%多いという結果になり、統計学的にも意味のある水準で改善を認めていました。

    近距離視力の改善がみられた人の割合
  • プロカルピンを含む目薬 30.7%
  • ブラセボ(偽薬)の目薬 8.1%

一方、副作用として最も多かったのは頭痛で、ピロカルピンを点眼していたグループの14%で発生していました。ただ、このうちの87%の頭痛は軽症だったと報告さています。

論文報告が待たれる「GEMINI2」

「GEMINI2」については、2022年4月13日現在で、論文として公表されていません。ただ、臨床試験が登録されているデータベースで「GEMINI2」の情報を確認すると、「GEMINI1」とほぼ同じ方法で研究が行われているようです。

「VUITY」を開発した米国の製薬企業、アッヴィ社のウェブサイトには、「GEMINI1」「GEMINI2」いずれの研究においても、ピロカルピンを点眼していたグループで近距離視力が改善していたと記載されています。

また、点眼後15分で効果が発現し、その有効性は最大で6時間ほど持続するようです。なお、副作用で最も多かったのは頭痛と目の充血でした。

米国の研究でその有効性が証明されている

老眼治療でピロカルピンの目薬を使う際の注意点

アッヴィ社のウェブサイトには、「VUITY」に関する使用上の注意情報も掲載されていました。この目薬は日本ではまだ承認されていないため、医療機関で処方を受けたり、薬局で購入することはできませんが、参考までに主な注意事項を紹介します。

ピロカルピンにアレルギーがある人は使用しない
どんな薬にもアレルギー反応は起こり得ますが、ピロカルピンの目薬も例外ではありません。ピロカルピンを配合した目薬でアレルギーを経験したことのある方は使用することができません。
点眼後、夜間の自動車運転や暗い場所での作業を行う必要がある場合には十分注意する
ピロカルピンは、目に入る光の量を調節している瞳孔(どうこう)を収縮させる働きがあるため、点眼後に一時的に視界が暗くなってしまうこと(暗黒感)があります。点眼する場合は、暗い場所での危険を伴う機械作業をできる限り避けることが推奨されています。
視界がはっきりしない場合は、自動車運転や危険を伴う機械作業をしない
ピロカルピンを点眼すると、一時的に目のピントが合いにくくなることがあります。このような場合では、危険を伴う機械作業を避けるよう注意がなされています。また、突然の視力低下が起こった場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。
コンタクトレンズを使用したまま、点眼しない
コンタクトレンズを使用している場合は、目薬を使用する前にはずし、点眼後10分してからコンタクトレンズを装着します。また、「VUITY」以外の目薬を同時に使う場合には、少なくとも5分以上間隔をあけて点眼することが推奨されています。

日本での承認の可能性

これまで、老眼は手術でしか根本的な治療を望めませんでした。しかし、ピロカルピンの目薬「VUITY」が登場したことによって、今後の老眼治療は大きく変わっていくように思います。

また、1日1回の点眼で済むことや、即効性も期待できることから、日本でも承認される可能性が高いといえるでしょう。

ただ、ピロカルピンには頭痛や充血、暗黒感といった副作用もあるほか、60歳を超えるようなご高齢の方に対する有効性や安全性については、検証されていないのが現状です。

日本で承認されるためには、有効性や安全性に関する研究データの蓄積が必要かもしれません。

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青島 周一
AHEADMAP 共同代表
2023/01/13

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