こんにちは。薬剤師の雜賀匡史です。今回のテーマは「薬の相互作用」についてです。例を挙げながら説明していきます。
薬の中には相性の悪い組み合わせがある
酢豚の中に入っているパイナップルの存在について、誰もが1度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。パイナップルには豚肉を柔らかくして、消化を助けるといったメリットがあります。パイナップルに含まれる酵素「ブロメライン」が豚肉のタンパク質が分解して、肉を柔らかくすることができるのです。
これは食材同士が互いに良い影響をもたらす例ですが、薬にも、パイナップルと豚肉のように相性の良い組み合わせもあれば、悪い組み合わせも存在するのです。注意したい代表的な例を含め、相互作用についてご紹介いたします。
はじめに、薬の相互作用を種類分けして考えたいと思います。
薬の相互作用は大きく分けて3種類
1:作用を互いに打ち消し合ってしまうもの
下剤と下痢止めを同時に服用するようなイメージ。お互いの作用が打ち消されてしまい、効果に影響が及びます。
2:作用が互いに似通ったもの
腰の痛みで整形外科から鎮痛剤を処方されている方が、風邪を引いて解熱鎮痛剤を服用する場合など、作用の同じ薬を重複して飲んでしまうというパターンです。副作用の発現にもつながるので、異なる診療科からの処方がある場合には、必ずかかりつけ薬局で確認してもらいましょう。
3:代謝(薬を体の外に出すこと)スピードを変えてしまうもの
薬は体にとって異物ですので、いつまでも体内に蓄積される状態は望ましくありません。代謝に影響を及ぼす組み合わせだと、望んだ効果が得られなかったり、副作用が出てしまうことがあります。
薬と相性の悪い食べもの
次に、薬と相性の悪い食べものを紹介いたします。
1:牛乳と一部の抗生物質
薬の成分と牛乳のカルシウムが結合してしまい、効果が弱まる可能性があります。牛乳を飲みたいときは、胃の中で牛乳と薬が一緒にならないように、薬の服薬と2時間以上間隔を空けるなどの工夫が必要です。
2:納豆とワルファリン
血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)の治療で使われるワルファリンは、ビタミンKを多く含む食品と一緒に摂取すると効果が弱まってしまいます。命にもかかわる薬なので服用中の方は食事に十分注意してください。
もし納豆が大好物でやめられないという人は、ほかにも併用できる薬があるので、医師や薬剤師に相談されると良いと思います。また、納豆以外にもクロレラや青汁といったビタミンKを豊富に含む食べものは避けるようにしましょう。
3:グレープフルーツジュースと一部の降圧薬
降圧薬(こうあつやく)の中に「カルシウム拮抗薬」と呼ばれる種類の薬があります。この薬はグレープフルーツに含まれる成分によって代謝が妨害されてしまうのです。通常時よりも効果が強く出てしまう可能性があり危険ですので注意が必要です。
ほかにもハッサクやブンタン、いよかんなども相性が悪く、一方で温州みかんや、レモン、カボスなどは影響を与えません。
4:お酒とアルコール
アルコールは多くの薬と相性が悪いので、基本的にアルコールと薬は同時に飲んではいけないと覚えておきましょう。吸収や代謝に影響を及ぼすことが知られています。
5:サプリメントと薬
サプリメントや健康食品の中には、薬との相性が悪いものが存在します。例えば、ハーブの一種であるセントジョーンズワート(和名:セイヨウオトギリソウ)は、多くの薬で効果を弱めることが知られています。また、カルシウムや鉄のサプリメントとも相性の悪い薬が存在します。
ドラッグストアなどでサプリメントを購入されるときには、普段使用している薬を伝え、飲み併せを必ず確認するようにしましょう。
日頃からお薬手帳を持ち歩こう
今回ご紹介した相互作用はほんの一部です。また、まだ知られていない相互作用も数多く存在します。
普段からお薬手帳を持ち歩き、わからないことがあればすぐに薬剤師に相談できるようにしておくことが大事 ですね。