こんにちは。薬剤師の雜賀匡史です。
皆さんは処方箋に期限があることをご存知ですか。
多くの人は受診日に薬局へ処方箋を持参するので、あまり気にしたことがないかもしれません。
しかし、中には処方箋の期限が切れてしまう方がいます。
今回は、意外と知られていない「処方箋の有効期限」について解説したいと思います。
医師が作成した処方箋をもとに薬剤師が調剤する
患者には、治療に必要な薬を受け取る権利がある
医師法では、「医師が薬物治療の必要があると判断した場合、患者に処方箋を交付しなければならない」と定められています。
また、薬剤師法でも「薬剤師は調剤の求めがあった場合に、正当な理由がなければこれを拒んではならない」と決められています。
医師と薬剤師は、国民の健康的な生活を維持するために、必要な薬を処方箋を通じて提供する義務があるのです。
そして、患者には治療に必要な薬を受け取る権利が認められています。
「処方」と「調剤」の流れ
医師は診察を通して、患者の状況に合った薬を処方します。
薬剤師は、医師が作成した処方箋の内容が「患者にとって安全かつ有効であるか」を再確認し、「調剤」の一連の業務を行い、薬を渡します。
薬剤師は医師が作成した処方箋を基に「調剤」を行います。
「調剤」の一連の業務
- 処方箋の受け取り
- 処方箋監査・薬歴管理
- 医薬品の調整
- 調剤薬の監査
- 薬を渡す
処方箋の有効期間は、発行日を含めた4日間
長年同じ薬を服用している方から、「いつもと同じ薬をもらえればいい」といった声を耳にすることがあります。
しかし、自分で気づけなくても、体調は少しずつ変化しています。そのため、医師に診察してもらうことが必要です。
以前、私の勤める薬局を訪れた女性が「最近筋肉痛がひどくてね。歳のせいだね」と筋肉痛を私に訴えました。
今までと同じ生活を送っているのにもかかわらず、突然筋肉痛が生じる状態は異常だと考えて、私はある薬の副作用を疑いました。
この女性は、発現頻度は非常に稀ですが、骨格筋細胞の壊死や融解により筋細胞内の成分が血液中に流出し、筋肉痛や脱力感といった症状をもつ横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)と呼ばれる副作用発現が報告されている薬を服用していました。
薬剤師が副作用の可能性を疑い医師に問い合わせをした後、その症状が副作用によるものだと医師が判断した場合、服薬の中止や薬剤変更等が検討されます。
今回のケースでは処方を変更したところ、女性の筋肉痛は収まり、処方の変更後、大きな健康被害を防いで、脂質異常症の治療を継続することができました。
医師や薬剤師は、薬の有効性や副作用の有無を総合的に判断したうえで、状況に応じて薬物治療継続の可否を客観的に判断しています。
処方箋に記載されている薬は、基本的に現時点で使用されることを想定しています。
この基本原則を患者に守ってもらうため、処方箋には有効期間が設けられています。
処方箋の有効期間は、発行日を含めた4日間です。
例えば3月7日に処方箋を受け取った場合、有効な期間は7日から10日までが有効な期間となります。
休日や祝日も有効期限に含まれるため、期間内に処方箋を薬局に提出できるようにしましょう。
なお、長期の旅行などの特殊な事情がある場合には、医師に別途使用期間を記載してもらい、有効期限を延ばしてもらうことが可能です。
有効期間を超過した処方箋では、薬をお渡しできません。
再度受診し、新たに処方箋を発行してもらう必要があるので、注意しましょう。
また、処方箋は薬局内で3年間保管する決まりがあります。
そのため、メモ帳のように気軽に扱える書類ではありませんので、処方内容をご自身で変更したり、むやみに破いたり傷つけたりすることなく扱いましょう。
オンライン診療で処方箋の発行が可能
最後に、新型コロナ感染拡大を防止する観点から発表された、厚生労働省の臨時的な対応をご紹介いたします。
慢性疾患などを有する定期受診患者などにより、継続的な医薬・投薬が必要なケースがあります。
感染源と接する機会を少なくするため、そういった方たちが処方箋のために通院した場合、新型コロナの感染を予防することは容易ではありません。そのため、厚労省は、電話などを用いた診療で院外処方箋を発行し、薬局にこの処方箋情報に基づいて調剤することを許可しました。
また、病院やクリニックによっても対応方法が異なるので、この制度を利用される方は、かかりつけの医療機関に問い合わせをしてください。
まだまだ新型コロナとの戦いは続きます。自分の健康を守れるように、感染予防を徹底しましょう。
今回は処方箋の有効期限についてご紹介しました。
既にご存じの方も、今回はじめて知ったという方もいらっしゃると思います。
皆さんの健康管理にかかわる大事なことですので、ぜひ周りの方にも教えてあげてください。