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第17回

利尿剤の副作用に注意!高齢者は特に脱水症状や電解質のバランス異常が起こるリスクも…

最終更新日時 2018/11/07
#高齢者の健康 #薬
では、なぜ薬を使ってまで尿を出す必要があるのでしょうか?例として、高血圧の治療で用いる場合をご紹介します。人の身体は約6割が体液、つまり水で構成されています。体液の一部は血液中にも存在します。

こんにちは。メディスンショップ蘇我薬局・管理薬剤師・訪問薬剤師をしている雜賀匡史です。

季節は秋に変わり、辺りはだんだん金色に染まってきました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか?私は月に数回、薬局勤務後に千葉市の夜間応急診療の仕事に従事しているのですが、猛暑が続いた今年は、夜間応急診療にも多くの熱中症患者が運ばれてきました。

夏季の熱中症による脱水症状はよく知られていますが、じつは冬にも脱水症状を引き起こしてしまうことがあります。

そこで今回のテーマは「利尿薬」です。利尿薬は、心不全や高血圧、浮腫などの治療薬として用いられる、有用性の高い治療薬。そして、熱中症や脱水症状との関連性も指摘されている薬です。

さらに今回は、ときどきニュースを騒がしている利尿薬の意外な用いられ方について、もご説明します。

体に熱がこもることで熱中症になる

高齢者や子どもは体温調節機能が不完全

夏の暑い日などは、体に熱がこもることで体温が上昇します。体内の水分量が十分にあれば、発汗によって体温を下げることができます。

ところが、体内の水分や塩分が不足している状態だと、体温を下げるための十分な汗をかくことができません。体内に熱がこもってしまい、やがて熱中症になってしまうことがあります。

とくに、高齢者や子どもは体温調節機能が不完全なので注意が必要です。

また、冬場は乾燥しているため、皮膚、粘膜、呼気から知らないうちに水分が放出されています。ウイルス性胃腸炎などにかかると、下痢や嘔吐などで多くの水分を失い、脱水症状になってしまうこともあります。

さらに、今回のテーマである「利尿薬」を服用している人も注意が必要です。

利尿薬には、尿を出しやすくするための薬です。尿と汗は相互に関係しており、冬場は汗をあまりかかないかわりに、尿が出やすい傾向に。

一方、夏場は汗をたくさんかくために、尿量が減少する傾向にあります。

前述のように、熱中症にならないためには、発汗によって体温を下げなくてはいけません。もし、利尿薬の服用によって汗に回るべき水分が、すでに尿から排出されていたらどうでしょう?

水分不足で汗をかくことができないので十分に体温を下げられず、熱中症から脱水症状を引き起こす危険性が高まってしまうのです。

秋から冬にかけては、熱中症による脱水症状は減少しますが、乾燥やウイルス性胃腸炎などによる脱水症状が増えてくる時期なのです。

このように、利尿薬を服用している人は、普段から熱中症や脱水症状のリスクが高いということを意識しておきましょう。

利尿薬は「飲み薬」以外に注射による投与もあります

血圧の減少は、血液の水分を尿として排出

在宅介護で日常的にトイレ(排泄介助)をしている方は、利尿薬の作用で排尿回数が増すと、トイレ誘導の頻度も増え、転倒リスクも常にあるのでさぞ苦労されていることと思います。

では、なぜ薬を使ってまで尿を出す必要があるのでしょうか?高血圧の治療で用いる場合をご紹介します。

人の身体は約6割が体液、つまり水で構成されています。体液の一部は血液中にも存在します。

通常、体重1kgにつき約80mLの血液が存在しており、60kgの体重があれば約5Lが血液になります。血液は赤血球や白血球などの細胞成分と、水分を主とした血漿成分で構成されており、もしも血液中の水分が増えてしまった場合、血管を流れる血液の全体の量が増えます。

これによって血圧が上昇。血圧を下げるには血液中の水分を取り除き、尿から排泄する必要があり、この作用を助ける薬が利尿薬です。

これ以外にも、利尿薬は心不全や浮腫など、循環器疾患を中心としたさまざまな疾患で用いられている大切な薬なのです。

利尿薬は、その作用の仕方によっていくつかの種類が存在します。飲み薬だけでなく、注射によって投与する薬もあります。

一つひとつご紹介していくとこの誌面では書ききれませんので割愛しますが、医師は作用時間や電解質の検査データなどを参考にして、利尿薬を単体で用いたり、異なる種類の利尿薬を組み合わせて用いたりしています。

利尿薬の副作用…ナトリウムやカリウムなどの電解質のバランス異常を引き起こす

利用役の副作用は”脱水”

利尿薬の使用時に注意したい副作用としては、過度の水分除去による脱水があります。これによって立ち眩みや低血圧などの症状が引き起こされる可能性があります。

また利尿薬は、ナトリウムやカリウムなどの電解質のバランス異常を引き起こす副作用が知られています。

電解質は体の筋肉や神経の働きに関わる大事な物質ですので、利尿薬使用時には増減に注意が必要です。過度のナトリウムの喪失は熱中症のリスクを高めることにもつながっています。

利尿薬の使用に関しては血液データなどを元にして個々に成分や用量を設定しています。

そのため、薬の飲み忘れや飲み間違いが多い人では、薬の効果判定を正確に行うことが難しく、予測しない副作用を引き起こしてしまう可能性もあります。必ず医師・薬剤師の指示通りに正しく服用するようにしましょう。

8月初旬に、日本プロ野球選手からドーピング禁止薬物が検出されたことがTVなどのメディアで大きく取り上げられました。この選手から検出された禁止薬物が利尿薬だったのです。

実は、利尿薬は昔からドーピング目的での使用が多数報告されていました。

ボクシングやレスリングのように体重別に階級が分かれている競技の場合、減量目的で利尿薬が悪用されることがあります。

今回の野球選手の使用は、おそらく減量目的ではありません。もしこの選手が故意に利尿薬を使用したとすれば、それは禁止薬物の隠ぺい目的でしょう。他に摂取している禁止薬物が検査で検出されることを防ぐために、利尿薬を使用して尿から禁止薬物を素早く排出する目的で利用されることがあります。

利尿薬には、さまざまな効能効果がある一方で、副作用などのリスクも一定数存在することをご紹介しました。わからないことなどは、薬を処方してもらった薬局に問い合わせ、正しい知識をもって安全に使用していきましょう。

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