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第58回

口腔ケアをしないとどうなる?高齢者に起こる深刻なリスクと予防法を解説!

最終更新日時 2025/10/28
#嚥下
高齢者の口腔ケアをしないことで、誤嚥性肺炎や低栄養、持病悪化など命に関わるリスクが高まります。1日何回のケアが必要か、寝たきりの方に特有の注意点は何か、といった口腔ケアをしないことで高まるリスクと予防法を解説します。
目 次

口腔ケアをしないと起こる、命にかかわる3つのリスク

口腔ケアを怠ると、単なる口内の不快感が生まれるだけでなく、命を脅かす重大な疾患につながる可能性があります。ここでは、特に注意すべき3つのリスクについて詳しく解説します。

誤嚥性肺炎の発症率が高まる

高齢者の口腔ケアを怠ると、最も深刻なリスクとして「誤嚥性肺炎」の発症率が大幅に高まります。口内には常に細菌が存在しており、適切なケアを行わないと細菌が繁殖し続けるのです。こうして増えた細菌は、唾液や食べ物と一緒に誤って気道へ入り込み、肺に達することで炎症を引き起こします。

特に注意が必要なのは夜間です。特に高齢者や服薬の影響を受ける方では、就寝中に唾液の分泌量が減少するため、口内の細菌が増えやすい環境になります。そのため、寝る前に口内をしっかり清潔にしておかないと、細菌の温床となった口内から気道へ菌が侵入するリスクが高まってしまいます。

日々の口腔ケアは、こうした肺炎の原因菌となる歯垢や食べかすを減らし、命にかかわる疾患を予防する重要な役割を担っています。

栄養不足と口腔機能低下の原因になりうる

口腔ケアが不十分だと、虫歯や歯周病が進行し、最終的には歯を失うことにつながります。歯が減少することで、かむ力が低下し、食べ物を十分に咀嚼できなくなる可能性が高まります。硬いものだけでなく、普通の食事もうまく食べられない状況に陥り、結果として必要な栄養を摂取できなくなってしまう可能性もあります。

このような状態が続くと、高齢者は低栄養に陥りやすくなります。低栄養状態になると筋力や免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなるだけでなく、身体機能全体が衰えていき、最終的には寝たきりになるリスクも高まります。こうした口腔トラブルが全身の健康状態を脅かす連鎖反応を引き起こすこともあるのです。

こうした悪循環を防ぐには、毎日の丁寧な口腔ケアで口内を健康に保つことが不可欠です。しっかり噛んで食事ができる状態を維持することが、栄養状態を良好に保ち、ひいては高齢者の自立した生活を支えることにつながります。

持病が悪化する可能性がある

高齢者に多い糖尿病や心疾患といった持病も、口腔ケア不足による慢性的な口腔内炎症があると悪化する恐れがあります。

研究では、口腔状態の悪化は、誤嚥性肺炎だけでなく、心内膜炎、敗血症、脳血管疾患の発症や重症化にも関連すると報告されています。

特に注目すべきは歯周病と糖尿病の関係です。歯周病菌が産生する炎症物質は、歯ぐきの血管を通じて全身に広がります。

この炎症物質が血糖値のコントロールを妨げ、糖尿病の症状を悪化させることがわかっています。糖尿病を持つ方では歯周病が悪化しやすく、逆に歯周病は糖尿病の血糖コントロールを困難にするという相互関係も報告されています。

歯科などで歯周病をきちんと治療すると血糖値が改善するケースも報告されています。これは口腔ケアが持病管理においても重要な役割を果たすことを示す証拠といえるでしょう。

毎日のケアと定期的な歯科受診で口内の炎症を抑えることが、持病の悪化リスクを減らし、高齢者の健康維持につながるのです。

口腔ケアが十分にできているか確認する方法

次は実際のケアが適切に行われているかを確認しましょう。毎日のケアが本当に効果を上げているのか、見落としている問題はないかをチェックする方法をご紹介します。

口腔ケアのセルフチェック項目10選

在宅で介護をされているご家族は、高齢者の口の状態を定期的にチェックすることが大切です。口腔ケアが適切に行われているかどうかは、以下のような項目を確認することで判断することができます。

  • 歯みがき時に歯ぐきから出血していないか
  • かなり強い口臭がないか
  • 口内がネバネバしていないか
  • 口内が乾燥していないか
  • 食べ物が歯に詰まったまま残っていないか
  • 硬いものを噛みにくそうにしていないか
  • パサパサした食品を食べにくそうにしていないか
  • 食事中にむせることが増えていないか
  • 食べ物をこぼすことが多くなっていないか
  • 食後に声がかすれることがないか

これらの項目で複数の問題がみられる場合、口腔ケアが不十分な可能性があります。特に歯ぐきからの出血や強い口臭は、歯周病などの口腔トラブルのサインの可能性もあります。また、口内の乾燥やネバネバ感は唾液の分泌が減少している可能性もあり、細菌が繁殖しやすい環境です。

食事に関する項目も重要な判断材料です。硬いものやパサついた食品が食べにくくなっている場合、かむ力や飲み込む力が低下している可能性があります。むせやすくなったり食べこぼしが増えたりする症状は、口腔機能の衰えを示すサインであることもあり、注意が必要です。

日頃から介護者が口の様子を観察し、これらの異常に気づいたら早めに対処することが重要です。ケア方法を見直したり、歯科医に相談したりして、小さな変化を見逃さないように心がけましょう。

早期発見・早期対応が、深刻な口腔トラブルや全身疾患への進行を防ぐ鍵となります。

寝たきり高齢者の口腔ケアで特に注意すべき症状

寝たきりの高齢者では、自力で口を清潔に保つことが難しく、いくつか特有の症状に注意が必要です。

まず最も大きな問題は、口内の極度な乾燥です。長時間寝た姿勢が続くことで唾液の分泌が減少し、口内が乾きやすくなります。年齢を重ねると、さまざまな病気や服用している薬の影響、かむ力の低下などが原因で唾液の分泌量が減り、口内はさらに乾燥しがちになります。

唾液には重要な役割があります。口内の汚れを洗い流す自浄作用や、消化酵素による消化・吸収の促進作用があり、抗菌・免疫作用など体を守る力も備えています。

そのため、唾液が減少すると細菌の増殖を防ぐ働きが弱まり、さまざまなトラブルが発生しやすくなるのです。

また、嚥下機能が低下している場合には、誤嚥のサインにも注意を払う必要があります。食事や唾液でむせる、ゴロゴロと喉に痰が絡む、食後に声がかすれるといった症状が見られたら要注意です。

こうした症状で不安がある場合は、医療機関等に相談してみましょう。

また、寝たきりで飲み込む力が弱い方に対し、水を多く使用して口腔ケアを行うと、汚れごと誤嚥して肺炎を誘発する危険があります。

このようなリスクを避けるために、むせやすい方はジェルやスポンジブラシを用い、必要に応じて吸引併用・側臥位・少量の水での清拭など誤嚥予防策を取ります。寝たきり高齢者の口腔ケアでは、清潔を保つことと安全性の両立が何より大切です。

口腔ケアは1日何回必要?適切な頻度とタイミング

歯みがきを含む口腔ケアの適切な頻度は、一般的に最低1日2回(朝と夜)が推奨されています。回数よりも重要なのは、どのタイミングで行うかという点です。

特に重視されるのが就寝前のケアです。先ほども触れたように、寝ている間は唾液が減って細菌が繁殖しやすい環境になります。そのため、寝る前に丁寧に口内を清潔にすることで、夜間の細菌増殖を抑え、誤嚥性肺炎などのリスクを大幅に下げることができるのです。

朝のケアについては、理想的には朝食後に磨くのが良いとされています。ただし、朝食後すぐの歯みがきが難しい場合は、起床直後にうがいをして口内をリフレッシュし、後で必ず磨くようにしてください。

食後は口内に食べかすが残りやすく、細菌の栄養源となってしまうため、可能であれば毎食後に口腔ケアを行うのが望ましいです。

食後すぐに歯を磨けない場合でも、水でうがいをするなど、口内に食べかすを残さない習慣をつけることが大切です。間食の後も同様に、軽くうがいをすると良いでしょう。

また、舌の清掃も忘れてはいけません。舌ブラシを使った舌の清掃は1日1回程度、朝起きたときに行うと効果的です。舌清掃はやり過ぎると傷つくため軽く行うことが重要です。

こうした適切なタイミング・頻度での口腔ケアを習慣づけることで、虫歯や歯周病を予防し、口の健康を維持することができます。最も大切なのは、毎日継続することです。

口腔リスクを回避する3つのケア方法

ここでは、誤嚥性肺炎や低栄養などの深刻なリスクを回避するための3つのケア方法をご紹介します。

毎日のセルフケアを習慣化する

口腔リスクを回避するための基本は、高齢者本人や介護者による毎日のセルフケアです。口腔ケアは、その目的に応じて主に二つの種類に分けられます。

1つ目は「器質的口腔ケア」です。これは歯みがきやうがいで口内を清潔に保つケアを指します。歯や入れ歯を丁寧に磨き、舌苔や粘膜の汚れも優しく除去することで、細菌の温床を減らすことができます。

歯ぐきや舌、頬の内側など、細菌が繁殖しやすい部分の汚れをしっかり落とすことで、肺炎の原因となる菌を減らし、誤嚥性肺炎のリスクを下げることにつながるのです。

2つ目は「機能的口腔ケア」です。これは口の機能を維持・向上させるためのケアであり、嚥下体操や発声練習などが含まれます。

代表的なものに「パタカラ体操」があり、「パ」「タ」「カ」「ラ」と声に出して発音することで、くちびるや舌を動かし、食事のときに使う筋肉を鍛えます。この体操を続けることで、食べこぼしやむせを防ぎ、会話もしやすくなるでしょう。

介護者は、朝晩の歯みがきの介助に加え、食後のうがいや義歯の手入れ、就寝前の保湿剤の塗布なども習慣化しましょう。特に就寝中は口内が乾燥しやすいため、保湿ジェルなどで潤いを保つことが効果的です。

これらのケアを毎日の生活に取り入れることで、高齢者の口内を常に良好な状態に保てるようサポートできます。

定期的にプロフェッショナルケアを受ける

日々のセルフケアに加え、歯科医院での定期的な専門的ケアも非常に重要です。家庭で行うケアだけでは限界があり、どうしても磨き残しや見落としが発生してしまいます。

歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアでは、家庭では難しい専門的な処置が行われます。歯石の除去や歯周ポケットの清掃、むし歯の早期発見など、専門的な技術と器具を使ったケアが受けられます。

特に歯石は一度付着すると歯ブラシでは簡単に取り除けないため、定期的な除去が必要になります。

高齢になると、自覚症状がないまま進行する口腔トラブルが増えてきます。痛みや違和感を感じたときには、すでにかなり進行しているケースも少なくありません。そのため、少なくとも半年に1回は定期検診を受けることをおすすめします。

歯ぐきや舌、頬の内側など、細菌が繁殖しやすい部分を専門的に清掃することで、誤嚥性肺炎の予防効果も期待できるでしょう。

また、嚥下機能に不安がある場合は、歯科で嚥下評価を受けることも可能です。必要に応じて言語聴覚士によるリハビリなど、多職種のサポートを受けることで、より包括的な口腔ケアが実現します。

通院が困難な要介護者には、地域の歯科医院による訪問歯科診療を利用する選択肢もあります。自宅にいながら専門的なケアを受けられるため、寝たきりの方や移動が難しい方でも安心です。

これらの専門ケアを活用し、家庭では行き届かない部分を補ってもらうことで、高齢者の口内の健康を長く守ることができます。

困ったときに頼れる相談先を知っておく

口腔ケアで困りごとや異変が生じた際に、すぐに専門家へ相談できるよう、事前に相談先を把握しておくことが大切です。

まず、歯や歯ぐきの痛み、口内炎など口のトラブルがあれば、迷わずかかりつけ歯科医に相談するのが基本です。

歯科では早期に適切な治療を受けることで症状の悪化を防ぎ、結果的に全身の健康維持にもつながります。複数の症状が重なる場合は歯周病などの可能性があるため歯科を受診しましょう。

口内と全身の健康は密接につながっているため、口の小さな異変も早めに相談しましょう。

食事中のむせ込みや飲み込みの問題に気づいた場合は、主治医やかかりつけ歯科医に相談しましょう。必要なら専門の医療機関や言語聴覚士に評価してもらい、適切なリハビリや食事形態の調整を受けることができます。

自治体の地域包括支援センターや保健所には、高齢者の口腔ケアについて相談できる窓口が用意されていることもあります。介護保険サービスの利用相談や、地域の歯科医院などの紹介なども受けられるため、積極的に活用してください。

介護者同士の情報交換の場や、歯科医師会による電話相談なども有益な相談先です。同じ悩みを持つ介護者からの実践的なアドバイスは、日々のケアに役立つヒントが得られるでしょう。

困ったときに頼れる先を事前に把握しておけば、いざという時に迅速に対応でき、高齢者の口と命を守ることにつながります。独りで抱え込まず、専門家や地域のサポートを上手に活用することが、質の高い口腔ケアを継続する秘訣です。

まとめ

高齢者の口腔ケアは、誤嚥性肺炎や低栄養、持病の悪化を防ぐ重要なものです。毎日の丁寧なケアで口の中を清潔に保ち、定期的な歯科受診で専門的なチェックを受けることが欠かせません。

セルフチェックで異変に早く気づき、困ったときはかかりつけ歯科医や地域包括支援センターなどの相談先を活用しましょう。口腔ケアの継続が、高齢者の健康と生活の質を守ることにつながります。

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