高齢者の夏バテの特徴と予防の重要性
夏の暑さが厳しくなると、多くの人が夏バテに悩まされますが、高齢者にとっては特に注意が必要です。高齢者の夏バテは若年層と比べて症状が重篤化しやすく、適切な予防策を講じることが非常に重要です。
高齢者が夏バテしやすい理由
高齢者が夏バテしやすい主な理由は、加齢に伴う身体機能の変化にあります。まず、体温調節機能の低下が挙げられます。若い人に比べて、高齢者は暑さを感じにくく、体温の上昇に気づきにくい傾向があります。
また、のどの渇きを感じにくくなることで、水分摂取量が減少しがちです。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、高齢者の体内水分量は成人と比較して10〜15%少ないとされています。このため、脱水のリスクが高まります。
さらに、加齢による筋肉量の減少は、体力や免疫力の低下につながります。これにより、暑さに対する耐性が弱まり、夏バテの症状が出やすくなるのです。
高齢者の夏バテは熱中症のリスクを高める
高齢者の夏バテは、単なる体調不良にとどまらず、深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
まず、熱中症のリスクが高まります。
消防庁の「令和5年(2023年)の熱中症による救急搬送状況」によると、65歳以上の高齢者は全体の約49.4%を占めており、他の年齢層と比べて圧倒的に多いことがわかります。
また、夏バテによる食欲不振は、栄養不足を引き起こし、フレイル(加齢による心身の機能低下)に陥るリスクを高めます。
さらに、夏バテによる体力低下は、転倒のリスクを高めます。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、高齢者の転倒・骨折は要介護状態になる原因の約12%を占めています。
夏バテしない体づくり
高齢者の夏バテ予防には、以下の3つのポイントが重要です。
- 適切な水分補給:のどの渇きを感じる前に、こまめに水分を摂取することが大切です。1日あたり1.2リットルを目安に、水やお茶、スポーツドリンクなどを飲むようにしましょう。
- バランスの取れた食事:夏バテ予防に効果的な栄養素を意識して摂取することが重要です。特に、タンパク質、ビタミンB1、ミネラルなどを積極的に取り入れましょう。
- 適度な運動と休息:軽い運動を継続することで、体力維持と免疫力向上につながります。ただし、暑い時間帯の無理な運動は避け、適度な休息を取ることも大切です。
これらのポイントを日常生活に取り入れることで、高齢者の夏バテ予防に大きな効果が期待できます。
高齢者の夏バテ予防に効果的な栄養素と食事のポイント
高齢者の夏バテ予防には、適切な栄養摂取が欠かせません。ここでは、夏バテ予防に効果的な栄養素と、それらを効率的に摂取するための食事のポイントについて詳しく解説します。
高齢者の夏バテ予防に必要な栄養素と摂取量
高齢者の夏バテ予防に特に重要な栄養素は以下の通りです。
- 水分:前述の通り、1日あたり1.2リットルを目安に摂取しましょう。水やお茶だけでなく、スイカやキュウリなど水分を多く含む食品からも補給できます。
- タンパク質:筋肉の維持と免疫力向上に欠かせません。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、65歳以上の男性は1日60g、女性は50gが目安となっています。
- ビタミンB1:糖質の代謝を助け、疲労回復に効果があります。1日の推奨摂取量は、65歳以上の男性で1.3mg、女性で1.1mgです。
- ミネラル(特に塩分):発汗による塩分損失を補うため、適度な塩分摂取が重要です。ただし、1日の摂取量は7.5g未満に抑えましょう。
- ビタミンC:疲労回復や免疫力向上に効果があります。1日の推奨摂取量は100mgです。
これらの栄養素を意識的に摂取することで、夏バテ予防効果が高まります。
夏バテ対策に効果的な食材
夏バテ対策に効果的な食材とその調理法をいくつか紹介します。
- 豚肉:ビタミンB1が豊富で、疲労回復に効果があります。冷しゃぶやポークソテーなど、さっぱりとした調理法がおすすめです。
- 鶏肉:良質なタンパク質源です。さっぱりとした味付けの蒸し鶏や、冷やし中華のトッピングとして活用できます。
- 魚(特に青魚):DHA・EPAが豊富で、夏バテによる不調を緩和します。酢を使った南蛮漬けや、レモン風味のカルパッチョなどがおすすめです。
- トマト:ビタミンCやリコピンが豊富です。生で食べるほか、スープやサラダに活用できます。
- 枝豆:良質なタンパク質とビタミンB1を含みます。茹でて塩を振るだけの簡単おつまみとして最適です。
- ヨーグルト:乳酸菌が腸内環境を整え、免疫力向上に役立ちます。フルーツを添えて食べるのがおすすめです。
これらの食材を使用する際は、消化に負担をかけないよう、さっぱりとした味付けを心がけましょう。
高齢者の食欲不振を改善する5つの食事のコツ
高齢者の夏バテによる食欲不振を防ぐためには、いくつかの工夫が効果的です。まず、少量多食の原則を取り入れることをおすすめします。1回の食事量を減らし、その代わりに食事の回数を増やすのです。例えば、従来の3食に加えて、午前と午後におやつを取り入れるといった方法が考えられます。これにより、消化器官への負担を軽減しながら、必要な栄養を摂取することができます。
次に、食事の見た目にも気を配りましょう。彩りを意識し、色とりどりの食材を使用することで、視覚的な食欲を刺激することができます。緑黄色野菜や赤い果物など、鮮やかな色の食材を積極的に取り入れることで、食事がより魅力的になります。
香りの活用も重要です。香りの良い食材や調味料を使用することで、食欲を増進させる効果が期待できます。例えば、柑橘系の果物や、ミョウガやシソなどの香味野菜を料理に取り入れるのがおすすめです。香りは食欲を刺激するだけでなく、気分を高める効果もあります。
また、食事の温度にも注意を払いましょう。暑い季節には冷たい料理が好まれがちですが、常に冷たいものばかりだと胃腸に負担がかかってしまいます。温かい料理と冷たい料理をバランスよく取り入れることで、消化器官への負担を軽減しつつ、季節感も楽しむことができます。
最後に、調理法の工夫も大切です。加齢とともに噛む力が弱くなっている高齢者には、軟らかく調理した料理を提供するのが適しています。煮物や蒸し物、さらにはムース状にした料理など、食べやすさを考慮した調理法を選びましょう。これにより、食事の際のストレスを軽減し、より多くの栄養を摂取することができます。
管理栄養士監修!高齢者の夏バテ予防レシピ5選
ここでは、管理栄養士監修の高齢者向け夏バテ予防レシピを5つ紹介します。どれも簡単で栄養バランスが良く、高齢者の食欲を増進させる工夫が施されています。
さっぱり梅しそ巻き
この料理は、さっぱりとした梅の酸味と青しその香りが食欲を刺激する夏向けの一品です。春巻きの皮で包むことで、食べやすく仕上がります。高齢者でも食べやすい柔らかさで、タンパク質と疲労回復効果のある栄養素を手軽に摂取できます。
材料(2人分)
- 鶏ひき肉 150g
- 玉ねぎ 1/2個
- 春巻きの皮 6枚
- 梅干し 1個
- 青しその葉 4枚
- オリーブオイル 適量
作り方
- 玉ねぎはみじん切り、梅干しと青しその葉は細かく刻む。
- ボウルに鶏ひき肉、みそ小さじ1、鶏ガラスープ小さじ1/2を入れよく混ぜる。
- 春巻きの皮に②を広げ、梅と青しそを散らして巻く。
- フライパンでオリーブオイルを熱し、巻き終わりを下にして焼く。
栄養ポイント
梅のクエン酸は疲労回復に効果があり、青しその香りは食欲を増進させます。鶏肉のタンパク質と相まって、夏バテ予防に最適な一品です。
豚肉と梅のぶっかけそうめん

冷たいそうめんに豚肉と梅の風味豊かなたれをかけた、夏にぴったりの麺料理です。さっぱりとした味わいで食欲がない時でも食べやすく、冷たい麺が体を冷やし、暑さ対策にもなります。
材料(2人分)
- そうめん 100g
- 豚肉(薄切り) 100g
- 梅干し 1個
- きゅうり 1/2本
- めんつゆ(2倍希釈したもの) 100ml
- みそ 大さじ2
- 砂糖 小さじ2
作り方
- そうめんを茹でて冷水で締め、水気を切る。
- 豚肉は食べやすい大きさに切り、梅干しは種を除いて叩く。きゅうりは薄切りにする。
- めんつゆ、みそ、砂糖を混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やしておく。
- 器にそうめんを盛り、豚肉、梅、きゅうりをのせ、③のたれをかける。
栄養ポイント
豚肉のビタミンB1と梅のクエン酸が疲労回復を促進します。冷たいそうめんは食欲を刺激し、高齢者でも食べやすいです。
もずく酢とささみの簡単マリネ
この料理は、さっぱりとしたもずく酢にささみの旨味が加わった、夏にぴったりの冷菜です。調理時間が短く、冷蔵庫で冷やすだけで完成するので、暑い季節でも負担なく作れます。高齢者の食欲増進と栄養補給に適した一品です。
材料(2人分)
- ミニトマト 2個
- きゅうり 1本
- 鶏ささみ 40g
- もずく酢 1パック(70g)
- オリーブオイル 小さじ1
- 塩・こしょう 少々
作り方
- ミニトマトは2等分に切り、きゅうりは1cm大の角切りにする。
- 鶏ささみを電子レンジで加熱し、食べやすい大きさにほぐす。
- ボウルにもずく酢、オリーブオイル、塩、こしょうを入れて混ぜる。
- ボウルに野菜とささみを加えて軽く和え、冷蔵庫で冷やす。
栄養ポイント
もずくに含まれるフコイダンは免疫力向上に効果があり、ささみは良質なタンパク質源です。さっぱりとした味付けで食欲増進にも効果的です。
鶏肉入り旨味たっぷりミネストローネ
ミネストローネは、イタリアの伝統的な野菜スープです。この夏バテ対策版では、鶏肉を加えてタンパク質を強化し、さらに栄養価を高めています。野菜の旨味と鶏肉の香りが食欲を刺激し、暑い夏でも美味しく栄養補給できる一品です。
材料(4人分)
- 鶏もも肉 200g
- 大豆水煮 150g
- にんじん 1/2本
- 玉ねぎ 1個
- カットトマト缶 1缶(240g)
- コンソメ顆粒 大さじ1
- オリーブオイル 大さじ1
- 水 600ml
作り方
- 鶏肉は一口大に切り、野菜は1cm角に切る。
- 鍋にオリーブオイルを熱し、鶏肉と野菜を炒める。
- 鍋に大豆水煮、カットトマト缶、コンソメ、水を加えて煮込む。
- 野菜が柔らかくなるまで煮込んだら完成。
栄養ポイント
鶏肉のタンパク質と大豆のイソフラボンが筋力維持に役立ちます。トマトのリコピンは抗酸化作用があり、夏バテ予防に効果的です。
ツナと枝豆の炊き込みご飯
この料理は、夏に旬を迎える枝豆とツナを使った栄養バランスの良い炊き込みご飯です。枝豆の鮮やかな緑色が食欲をそそり、ツナの旨味が全体に広がります。簡単に作れる上に、冷めても美味しいので、食欲が落ちる夏場にぴったりの一品です。
材料(4人分)
- 米 2合
- ツナ缶 1缶
- 枝豆(冷凍・さや付き) 150g
- 人参 40g
- バター 20g
- めんつゆ(2倍濃縮) 大さじ2
作り方
- 枝豆は解凍し、さやから出します。人参はみじん切りにします。
- 炊飯器に洗った米、めんつゆ、水を入れます。
- 炊飯器に枝豆、人参、ツナ缶(汁ごと)を加えて炊きます。
- 炊き上がったらバターを加えて混ぜます。
栄養ポイント
ツナのタンパク質と枝豆のビタミンB1が夏バテ予防に効果的です。炊き込みご飯なので、食欲がない時でも食べやすい一品です。
高齢者の夏バテは単なる体調不良ではなく、深刻な健康問題につながる可能性があります。予防には、適切な水分補給とバランスの取れた食事が重要です。本記事で紹介した7つのレシピは、高齢者の夏バテ対策に効果的な栄養素を含み、調理も簡単です。これらを取り入れることで、食欲不振を改善し、必要な栄養を摂取しやすくなります。
必要な栄養素をおいしく摂って、夏を元気に乗り切りましょう。