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第200回

介護食イベントが開催中止に。高齢者への情報発信の手段を考える

最終更新日時 2021/01/22
こんにちは、終活カウンセラー協会認定講師でジャーナリストの小川朗です。今回は、新型コロナの影響でなくなってしまった介護イベントの裏側について、お話ししていきたいと思います。

こんにちは、終活カウンセラー協会認定講師でジャーナリストの小川朗です。

今回は、新型コロナの影響で開催が中止となった介護イベントの裏側について、お話ししていきたいと思います。

新型コロナの影響で開催3回目の「ケアの駅」が中止に

新型コロナの感染拡大は、ふたたび多くのイベントを開催中止に追い込んでいます。実はこの連載でも何度か取り上げてきた「ケアの駅」。第3弾となるイベントも、大会当日にして中止の憂き目に遭ってしまいました。開催が予定されていたのは12月18日。今回のテーマは「おいしく、食べやすく、高栄養!介護食のコツを体験しよう」というものでした。

嚥下(えんげ)調整食の新製品の紹介や、「むせないスイーツ」である新作ケーキの試食も準備され、介護食を実際に試食しながら味や手間を体験できるという、地域密着型の画期的な試みとなるはずだったのです。介護職に興味のある方ならどなたでも参加できるイベントが予定されていました。

参加費は1,500円で、当日はマスク着用が義務づけられており、準備は万端。SNSに掲載されたイベントの紹介記事も、以下のように玄人はだしのキャッチ―なものとなっていました。

「とろみの粉を混ぜるだけが嚥下調整食ではないのですよ…。ましてや『〇ンシェア飲ませておけば栄養バッチリ』で終わりでは味気ない…。‶食べられる口″をつくる歯科の先生と‶おいしい嚥下調整食″のために開発努力をされている企業と、たとえむせても吐き出せる体力づくり、排痰支援でお役に立ちたい訪問看護師が、企画して実現しました。」

もちろん、感染対策もバッチリでした。20人は十分に入れられるスペースを確保し、一度の入場者を8人に限定。いろいろと注意事項も重ねて、開催日まで漕ぎつけました。しかし、そこにきて新型コロナの感染がさらに拡大。12月18日の前日に東京都の新規感染者数が前々日の678人を144人上回り、2日連続で過去最多を更新して822人に達しました。東京都は4段階で示す医療提供体制における警戒度を、最高レベルの「ひっ迫している」にはじめて引き上げました。

感染対策を行うも、感染者数急増で中止に

協力業者へ活動停止命令が発令、イベントの実施が困難に

そのタイミングで、運営内では一体何が起こっていたのでしょうか。実は、協力してくれるはずの業者から、活動停止命令が続々と出されたのです。イベントの中核を担う存在を欠いたことで、「ケアの駅」を主宰するアイルビー訪問看護ステーションの代表である山田富恵さんは難しい決断を迫られます。山田さんは、以下のように語りました。

「残念です。新型コロナの陽性者の急増で、業者に活動停止命令が次々に下ったそうで。それでも営業担当は弊社の意を汲んできてくださる話になっていましたが、最終的には私の一存で中止を判断しました」

このように無念の思いを語ってくれました。飲食をターゲットに活動自粛が叫ばれている今、試食もできるイベントのハードルが上がってしまったのは間違いないようです。それは、山田さんにとってもショックな結果であったに違いありません。山田さんは、自分のSNSにケアの駅をつくった動機と理由を、このように公表しています。

「今から15年位前?隣の区でわたしが訪問看護を始めて1・2年目の頃の話。だんだん痩せてきたという利用者様に『痩せちゃったから入れ歯が合わないのよ』と言われました。当時、あまり考えずに『消化の良いものを無理しないで召し上がってください』などと返したと思うのです。その人は、堰を切ったように話始めました。

『入れ歯の上下を噛み合わせても、少しの隙間が空くために物を噛み切れない。なので海苔が一番食べにくい。おにぎりや海苔巻きが食べられない。毎日、自分が何を食べられるかとずっと考えている。はんぺんくらいしか食べられるものがない。何を食べたらいいの?』 と。

ジブリ映画の『火垂るの墓』ご存じですか?主人公の清太のセリフでいまだにこの方のことを思い出すんです。

清太『滋養いうても・・・滋養なんてどこにあるんですかっ!!』

ずっと探して悩み抜いている人に対して、私はあまりにも不用意に言葉を発したなと。『何を食べたらいいの?』とまっすぐ見つめられた時、何も返せなかった自分。時が経ち、その方に返すことはできないけれど。

"WEBで検索が容易にできないかたに【情報】を、通信販売で頼めば一発かもしれないけど味を試せる【機会】を、できれば、企業さんに、医療主導でオーダーされている食べ物を供している側に、食べる側が困っている情報を集約して伝える【役割】を、そんな場所を身近な地域の中につくりたい"」

山田さんのSNSから引用

何を食べたら良いのかわからない方も…

「できない」ではなく「どうしたらできるか」

シニアの方々の中には、ネットの最新情報を自ら取得できない方が少なくありません。そうした方々に情報を伝える場にしたい。さらに通信販売ではなく、まずはさまざまな嚥下調整食などを試せる場にもしたい。さらにさらに、訪問看護の現場で起きている「食べる側の生の声」を企業に伝える場にもしたい。それが山田さんのケアの駅を開催した動機です。

シニアの方はネットで情報を得るのが大変

今回山田さんが企画したイベントは、まさにそうした思いを形にするチャンスでした。メーカー側と訪問看護や介護に携わるスタッフ、実際に介護をしている地域住民が一堂に会する場を提供するイベントとなったはず。中止となった一方で、介護の現場で生まれている深刻な問題もリアルタイムで進行中です。

今回の問題を考えると、「ウィズ(with)・コロナ」から「ビヨンド(beyond)・コロナ」。すなわち、新型コロナを乗り越えていく姿勢がいかに大事かを教えてくれている気がします。「できない」ではなく、「どうしたらできるか」。第3弾の実現のカギを握るのは、かかわる人の姿勢だと感じます。

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小川 朗
株式会社 清流舎 代表取締役
2020/05/12

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