より良い介護サービスの方向性を決めるために、ケアマネジャーとの関係は良好でありたいものです。
しかし、さまざまな原因によってトラブルが発生することもあります。
この記事では、ケアマネとのよくあるトラブルやその原因、解決策などを紹介していきます。
ケアマネのことが信頼できない不安
ケアマネとの関係に悩む要介護者や家族はときどきいます。
私が過去関わった要介護者の家族の事例を紹介していきます。
【事例】Uさん(50代・女性)
Uさんは、実母90歳と2人暮らしをしています。
最近、母の認知症が進んできたことや歩行がおぼつかなくなったことを理由に要介護認定を申請しました。
要介護1と判定を受け、介護サービスを受けるためにケアマネと連絡を取り合うようになりました。
デイサービスに通い始めた母でしたが、物がなくなったり、利用し始めて数週間で転倒し怪我をしてしまったりと困ったことが続きました。今後の利用継続を検討する上でもケアマネに電話してみるのですが、連絡がなかなかつかないのです。
その後も、連絡が遅かったり、ときどき自宅に顔を出してもこちらの様子を伺うこともなくすぐに帰ってしまったりと、ケアマネを頼るどころか不信感は募るばかり…。
どうしたものかと悩むUさんなのでした。
ケアマネと要介護者・家族の間に発生するトラブルは、コミュニケーション不足であることが多いです。
しかし、コミュニケーションが理由とは言っても、その一言で表現しきれないほど、さまざまな要因が複雑に絡まっていることも…。
そこで、ここからはよくあるトラブルやその原因について紹介していきます。
ケアマネとのよくあるトラブルとは
ケアマネと要介護者・家族の間でよくあるのは、以下のようなトラブルです。
困りごとに対して対応してくれない
日常生活上で困ったことに対して、適切な介護サービスを提案するのがケアマネの仕事です。
しかし、困っていることを伝えても、それに対して的確な介護サービスを提案してくれないと、要介護者・家族にとっては「ケアマネが何もしてくれない」と感じてしまいます。
また、日常生活上の困りごとがケアプランに反映されていない場合も同様。
的外れな対応ばかりされると、真剣に要介護者・家族と向き合っていない感じがして不信感を抱いてしまうのです。
困りごとに対応してくれない場合に多いのは、ケアマネが家族の困りごとをしっかりと理解できていないケースです。
また、ケアマネの経験不足も理由として考えられるでしょう。
そうした場合は、ケアマネに察してもらおうとはせず、要介護者・家族側が先回りし、細かく情報や希望を伝えてあげるようにすると良いでしょう。
連絡が遅い・連絡ミスが多い
- ケアマネに電話しているのになかなか連絡がつかない
- 連絡がいつも遅い
- 連絡ミスが続く
上記のようなケアマネに不満を募らせる家族は多いです。
連絡は、信用に大きく関わるものです。
それを疎かにしてしまうケアマネに対し、信用できなくってしまうこともあるでしょう。
連絡ミスや連絡が遅いことで迷惑をかけられる場合は、ケアマネに直接注意するのもありですが、気が引けてしまうという方もいると思います。
そういった場合には、なにか約束ごとがある度に、期限をあいまいにせず「それはいつまでに連絡頂けますか?」とこちらから確認しておくのも有効です。
こちらから期限を決めると、ケアマネ自身もそれを忘れにくいためです。
それでも、何度も連絡ミスや連絡遅れが続くようなら、事業所に相談し、指導してもらうようにしましょう。
不必要と感じる福祉用具の購入を提案してくる
要介護者や家族がいらないと思う福祉用具の購入を何度も提案してくるケアマネがいて困るという話もよく聞きます。
ケアマネや訪問看護師など、介護のプロから見ると必要な道具でも、そこで暮らす要介護者や家族にとっては必要性が分からないこともあり、そうした意見の違いがトラブルに発展してしまうのです。
介護保険で自己負担額が軽減しても、商品自体が高額であれば、要介護者・家族の負担額も高額になってしまいます。
また、レンタルであったとしても要介護者・家族が納得できないものを自宅に置かなければならないことに対してもストレスに感じてしまうものです。
何度もいらない福祉用具を勧められストレスを感じた場合は、事業所に相談してみたり、事業所自体を変えてしまったりするのも一つの方法です。
コミュニケーションが上手くいかない原因
ケアマネとのコミュニケーションが上手くいかない場合に考えられる原因は、以下のようなケースです。
➀ケアマネ自身が板挟みになっている
明らかに高額な福祉用具の購入を勧められるなど、ケアマネの言動に違和感を持つとき、意外とありがちなのが、訪問看護師などがケアマネに強く意見を言っているケースです。
中には、より良い環境で医療ケアを提供するために利用者の経済状況を考えず高額な福祉用具やベッドなどの購入を勧める訪問看護師もいます。
このときにケアマネが上手く間に入り、要介護者・家族の経済状況や意思を訪問看護師に伝えてくれれば問題ありません。ただ、ケアマネによっては医療的な知見がある看護師に強く言えず、板挟みのまま家族に購入を勧めるしかなくなってしまうこともあるのです。
その結果、利用者や家族が「必要ない」と伝えているにも関わらず、何度も購入を勧められ、要介護者・家族が意見を押し付けられるように感じてしまうのです。
➁コミュニケーション不足
ケアマネは、本来高いコミュニケーション能力が求められるものです。
しかし、なかには相手の意見を汲み取れず、利用者・家族と上手くコミュニケーションが取れないケアマネもいます。
また、臨機応変に対応できず、利用者や家族が本当に望む介護サービスを提案できないケアマネも…。
その結果、要介護者・家族が以下のような不満を感じてしまうのです。
- こちらの意見を聞いてくれない
- 状況を本当に理解しているのかと思うようなケアプランで納得がいかない
- 意見が言いにくい
- 相談すると嫌な顔をされる気がする
- 充分な説明がないから「なぜこれをするのか」「なぜこれがダメなのか」がよくわからない
- 雑な感じがする
こうした不満は、コミュニケーション不足である場合が多いです。
➂多忙のために一人ひとりと向き合えていない
居宅ケアマネは最大で35件ほど、施設ケアマネは最大で100件ほどの案件を抱えています。
更にケアマネの仕事は、ケアプラン作成だけでなく、各種手続きの代行や相談業務、介護事業所とのやり取りなど、さまざまです。
また、他の要介護者や家族が無理難題をケアマネに押し付け、その対応ばかりに時間を取られている可能性もあります。
さまざまな原因が重なり、一人ひとりの要介護者・家族と適切に向き合うことができず、結果連絡ミスが続いたり、連絡が遅くなったりしてしまうのです。
この場合は、ケアマネが仕事の優先順位を上手く付けられていないパターンと、そうでなく居宅介護支援事業所の方針や仕事の割り振り方が原因であるパターンが考えられます。
ケアマネと上手くコミュニケーションが取れない理由が多忙によるものであれば、居宅介護支援事業所自体を変えてしまう方が良いかもしれません。
➃利用者側が正しく伝えられていない
ケアマネのコミュニケーション能力の問題だけでなく、利用者や家族が困っていることを上手く伝えられていないケースもあります。
この場合は、ケアマネが困っていたり、誤解していたりすることが多いです。
要介護者・家族の意向がわかりづらいために、適切な介護サービスが提案できないのです。
➃が原因でコミュニケーションが上手くいかない場合には、要介護者・家族の工夫次第で状況が改善される可能性もあります。
そこで、円滑なコミュニケーションを取るための方法を次の項目で紹介していきます。
円滑な意思疎通を図るうえでの家族側の工夫
コミュニケーションが上手くいかない場合、その原因によっては要介護者・家族側が工夫することで状況が改善する可能性があります。
以下では、介護サービスを受けるためにケアマネの円滑なコミュニケーションを取る方法を紹介していきます。
感情的にならず、冷静な視点も大切
ケアマネとのコミュニケーションで上手くいかないと不安になったり、時にはイライラしてしまったりすることがあると思います。
しかし、ケアマネとのやり取りに囚われ、感情的になり、本来の目的を見失ってしまっては本末転倒です。
まずは冷静になり、以下のことを今一度、振り返り考えてみましょう。
- なぜケアマネに上手く思いが伝わらないのか
- 自分にできる対応策はあるのか
- 本来の目的である望む介護サービスを受けるためにはどうするべきなのか
他の家族とも話し合い意見をまとめておこう
介護サービスが開始してから、ありがちなのが家族間で意見の違いが出てくることです。
家族での話し合いが済まないまま、介護サービスの利用を始めてしまうと意見に食い違いが出てくることも。
意見が変わるたびにケアマネに伝えてしまうと、ケアマネ自身も混乱してしまい、要介護者・家族にとってより良い介護サービスを提案しづらくなってしまいます。
可能であれば、介護サービス開始前に、家族で一度集まるなどして意見をまとめておきましょう。
自分からも提案できるよう介護サービスを調べてみよう
要介護者・家族側からも介護サービスの提案ができると、ケアマネも望んでいることがわかりやすいです。
求めるサービスを考え、近隣の介護事業所や施設などを自ら調べてみることも大切です。
ネットなどで調べてもよくわからない場合は、近所で介護サービスを利用している人に話を聞き、良さそうな施設・事業所を探してみるのも良いでしょう。
ケアマネにわかりやすく状況・望みを伝えよう
求める介護サービスについて、自分や家族の意見をまとめた後は、それをケアマネにわかりやすく伝える工夫をしましょう。
直接伝えるのが難しければ、紙に箇条書きに書いておくのもおすすめです。
ケアマネが要介護者・家族の意向をくみ取りやすいように意見を用意するなど、家族からも歩み寄る姿勢が大切です。
どうしてもケアマネと合わない場合の対処法
なかには、ケアマネや事業所の方針によっては、利用者・家族側の対策ではどうにも改善されない場合があります。
そうした時には、事業所や区役所に働きかけるのも一つの手です。
ここからは、ケアマネを変えたい場合や改善してほしい場合の対処法を具体的に解説していきます。
居宅介護支援事業所に連絡し指導してもらう
事業所に連絡し、ケアマネに指導してもらうのも一つの手です。
内容や伝え方、相手の捉え方によってはクレーム扱いされてしまう可能性が高いため、今後のケアマネとの関係に影響してしまうことも多少覚悟しなければなりません。
しかし、要介護者や家族が一方的に我慢している状況であれば、事業所に相談してみるのも良いでしょう。
ケアマネ・事業所を変えてもらう
あまりにもケアマネと合わない場合は、同じ事業所内でケアマネを変えてもらうこともできます。
その場合は、契約の変更手続きなども特に必要ありませんが、新しいケアマネを指名することなどはできません。
担当を変更したとしても、要介護者・家族にとって合うかはわからないということも予め心得ておきましょう。
ケアマネだけでなく、事業所自体を変更してしまうのも一つの手です。
ただし、また新しい契約などの手続きが発生するため、手間がかかるのがデメリットです。事業所を変える場合は、周囲の意見を聞き、評判の良い事業所を探すようにしてみてください。
何が最善か考えることも大切
ケアマネとの連携は、要介護者・家族にとって、介護サービスを利用する際の大きな課題であるともいえます。
コミュニケーションが上手くいかない場合の原因はさまざまです。
考えられる原因を想像し、それに沿った解決策を試してみることがおすすめです。
「ケアマネが苦手!」と嘆くだけではなく、自分達にできることを試してみると解決の糸口にたどり着くかもしれません。